金融政策に対する市場参加者の意識とユーロ円/ ユーロドルの短期展望
ユーロ相場はECBの金融政策に対する市場参加者の思惑でトレンドが左右されている。短期的にユーロ円は上値トライ、ユーロドルは下値トライを想定しておきたい。目先注目しておきたい上下のチャートポイントは?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
金融政策スタンスの差とユーロ円の短期展望
【サマリー】
・日欧金融政策スタンスの差とユーロ円の短期的な展望
・ユーロ円は3つのテクニカルポイントの攻防が焦点に
・ユーロドル ECBの利上げが反転の材料とはならず
・ユーロドルは1.01レベルと0.99レベルの攻防が焦点に
・日欧の金融政策スタンスの差とユーロ円の短期的な展望
29日の外為市場は、ユーロ買い優勢の展開となった。
主要通貨(G10通貨)のパフォーマンスを確認すると、デンマーク・クローネ以外の通貨でユーロが上昇した。
注目すべきは、対円でのユーロ高進行である。この動きは、欧州中央銀行(ECB)による大幅利上げ(75bps利上げ)の可能性が浮上してきたことで、日欧の金融政策スタンスの差が為替市場で強く意識されていることを示唆している。
昨日は日米の株式市場が下落した。それでもユーロ円(EURJPY)を含めたクロス円が上昇した事実は、国内外の金融政策スタンスの差が為替市場に与えるインパクトの大きさを示唆している。
ECBによる大幅利上げの観測に加えて、今はドル円(USDJPY)が7月高値の139.39レベルを視野に上昇基調を維持している。これらの状況を考えるならば、ユーロ円(EURJPY)は短期的に上値トライを想定しておきたい。
ユーロ相場のパフォーマンス(%)
・ユーロ円 注目すべき3つのチャートポイント
ユーロ円(EURJPY)は現在、3つのテクニカルの面で分岐点の水準に差しかかっている。
ひとつめのテクニカルは、50日線(MA)である。2つめのテクニカルは、6月高値と8月安値の半値戻し138.84レベルである。昨日は、これら2つのテクニカルポイントで上昇が止められた。しかし、上で述べたとおり日欧金融政策スタンスの差が意識されユーロ買いの圧力が高まっている状況と、ドル円の上昇基調を考えるならば、50日線と半値戻しの突破を想定しておきたい。
そして最後のテクニカルは、短期レジスタンスラインである。
今年の6月にユーロ円は三度144円台への上昇をトライした。しかしいずれも失敗した。短期レジスタンスラインの基点となっているのは、最後のトライとなった6月28日の高値144.28レベルであり、そのラインは今日現在139.17レベルで推移している。昨日の高値138.97レベルの突破は、短期レジスタンスラインをトライするシグナルと想定しておきたい。
ユーロ円が短期レジスタンスラインの上方ブレイクに成功する場合は、140円台への再上昇が焦点として浮上しよう。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準140.12の攻防となるか?この点に注目したい。
一方、ユーロドル(EURUSD)の下落幅拡大やドル円の反落などでユーロ円が下落する局面では、138.00レベルがレジスタンスからサポートへ転換するかどうか?この点を確認したい。ユーロ円が138円台を維持する場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
ユーロ円のチャート
ユーロドルの焦点とチャートポイント
・ユーロドルの焦点は下値トライで変わらず
金融政策スタンスの差が意識され、ユーロ円(EURJPY)は上値トライのムードが高まっている。
一方、ユーロドル(EURUSD)は反発の局面が見られるが、パリティ水準(1.0)の完全突破に失敗する状況が続いている(日足ローソク足の実体ベース)。
上のパフォーマンスチャートを確認すると、ユーロ円と比べてユーロドルの上昇幅は限定的だった。直近のユーロドルの動きは、ECBによる大幅利上げの可能性が、対米ドルでは材料視されていないことを示唆している。
この背景には、ECBの利上げ政策に対する市場参加者の思惑が関係していると筆者は考えている。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週26日のジャクソンホール講演で、1970年代から80年代を引き合い出してインフレ抑制重視のスタンスをあらためて表明した。一方、今の欧州経済は、ロシアーウクライナ紛争の長期化とそれに伴う高インフレの影響を受け、米国よりも景気の後退リスクが高まっている。それゆえ、FRBと同じペースでECBが持続的な利上げ政策を実行できるかどうか?この点について市場参加者から疑問符が投げかけられている。
ECBが置かれている現状に対する思惑が、対米ドルでの反発を限定的にしている要因であるならば、目先のユーロドルの焦点は、やはり下値トライである。
・1.01と0.99の攻防
ユーロドル(EURUSD)が下値をトライし続けるシグナルとして注目しておきたいのが、1.01レベルの攻防である。
先週26日の市場ではこの水準の手前で長い上ヒゲが示現し、相場が急反落した(高値1.009)。今年7月の相場では、この水準(1.01レベル)がサポートとして意識される局面が散見された。ゆえに1.01レベルの「レジスタンス転換」は、ユーロドルの地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
ユーロドルが下値をトライする局面での焦点は、0.99レベルの下方ブレイクである。先週23日以降、この水準を意識する状況が続いており、サポートポイントとしてこの水準(0.99レベル)の重要性が増している。それだけに下方ブレイクすれば、ユーロドルの下落幅が拡大する展開を想定しておきたい。
ユーロドルが0.99レベルを下方ブレイクする場合、次のサポートポイントをフィボナッチ・プロジェクションで探ると、76.4%の水準0.9862レベル、および100.0%の水準0.9706レベルが浮上する。
ユーロドルのチャート
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