揺れるECBの9月利上げ観測 / ユーロドルの見通しとチャートポイント
欧州中央銀行(ECB)の9月利上げについて、市場の観測が揺れている。短期金融市場が織り込む直近の利上げ確率は、50%台まで上昇している。ECBイベントの内容を受けたユーロドルの見通しは?ECBイベント以外に注目すべき材料は?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※ドル円の見通しについては、こちらのレポートをご覧ください
サマリー
・欧州中央銀行(ECB)の9月利上げが再び意識されている
・ECBイベントがユーロ買いの要因となっても、その持続性は今後の政策スタンス次第
・今日のユーロドルは、米国の8月CPIで上下に振れることが予想される
・目先、注目しておきたいユーロドルのチャートポイントについて
揺れる9月利上げの観測とユーロ相場の展望
欧州中央銀行(ECB)は14日、理事会を開く。ロイターは13日、ECBが来年のユーロ圏物価見通しについて3%を上回ると予想していると報道した。短期金融市場の動向を確認すると、30%台で推移していた利上げ確率が、現時点では50%台まで上昇している。追加の利上げか?据え置きか?について市場の予想が割れているため、ECBが利上げを決定すれば、外為市場はユーロ買いで反応することが予想される。
しかし、ユーロ買いの持続性はラガルドECB総裁の会見に左右されると予想する。
ユーロ圏では景気が減速の傾向にある。この点を購買担当者景気指数(PMI)で確認すると、昨年の後半から回復基調にあったサービス業PMIは今年の4月に低下基調へ転じ、8月に景気判断の分かれ目である「50」を下回った。このトレンドに連動し、総合指数も同じく「50」を下回る状況が続いている。
今後、ラガルドECB総裁がインフレのリスクよりも景気の先行きリスクの方を重視し、利上げの一時休止などに含みを持たせる発言をすれば、9月のECBイベントがユーロ買いの要因となっても、それは一時的な現象で終わることが予想される。
ユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)の動向:月次 22年以降
ユーロドル、目先の見通しとチャートポイント
上昇の局面では1.0766レベルと21日線の攻防が焦点に
欧州中央銀行(ECB)の利上げ期待が再び高まっている。この点は、ユーロドル(EUR/USD)のサポート要因となろう。事実、昨日のユーロドルはサポートポイントの1.07をトライする局面が見られるも1.0705レベルで反発し、長い下ヒゲ付きの “下陰陽線” が示現した(日足ローソク足)。サポートポイントとして意識されている1.07レベルでの下陰陽線は、ユーロドルの短期的な反発の可能性を示唆している。
今日もユーロドルの反発基調が続くと想定する場合、8月25日の安値1.0766レベルの攻防が焦点となろう。昨日の反発はこの水準で止められた。
しかし、ECBの利上げ期待が高まっている状況を考えるならば、1.0766レベルがレジスタンスの水準へ転換する可能性は低下している。
下で述べる米国の8月消費者物価指数(CPI)やECBイベントが米ドル売りやユーロ買いの要因となる場合は、1.0766レベルの上方ブレイクと21日線のトライを想定しておきたい。この移動平均線は今日現在、1.0807レベルで推移している。
ユーロドルが21日線の突破に成功する場合は、現在の下落トレンドの象徴であるトレンドチャネル上限の突破が、次の焦点となろう。
米国の経済指標やECBイベントがユーロドルの上昇要因となり、トレンドチャネルの上限をも突破する場合は、相場の反発を止めた1.0950レベルや1.1050レベルのトライとなるか?これらの点に注目したい。
ユーロドルのチャート:日足 5月下旬以降
米CPIでユーロドルが反落する場合のチャートポイントは?
今日は、米国の8月消費者物価指数(CPI)が発表される。前月比と前年比でともに7月から上昇する見通しとなっている。一方、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、前月比で0.2%と横ばい予想となっている。また、前年比は4.3%と、7月の4.7%から低下する見通しである。
コア指数でインフレの抑制と鈍化の傾向が確認される場合は、ユーロドル(EUR/USD)の上昇要因(米ドル売りの要因)となろう。このケースでのユーロドルは、上で述べたレジスタンスの水準での攻防に注目したい。
米国の消費者物価指数の動向:月次 22年8月以降
一方、8月CPIが米国のインフレ圧力の根強さを示唆する場合は、米ドル買いの展開が予想される。ユーロドル(EUR/USD)は米ドル買いにより、反落することが予想される。このケースでは、1.0766レベルの “レジスタンス転換” を意識することになろう。
ユーロドルの下落幅が拡大する場合は、1.07レベルのトライおよびブレイクアウトが焦点となろう。
ユーロドルが1.07レベルを下方ブレイクする場合は、今月7日の安値1.0686レベルの維持に成功するかどうか?この点に注目したい。この水準は、フィボナッチ・エクステンションの50.0%水準にあたる(1.0690レベル)。過去の推移とテクニカルの面で、1.0686レベルを重要サポートポイントと想定しておきたい。
明日にECBイベントを控えていることを考えるならば、8月米CPIが米ドル買いの要因となっても、ユーロドルが一気に1.0686レベルを下方ブレイクするする可能性は低いと予想する。
しかし、ユーロドルが一つの米経済指標(8月米CPI)の結果を受けて1.0686レベルをも簡単に下方ブレイクする場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
明日のECBイベントがユーロ売りの要因となる場合は、5月31日の安値1.0635レベルの攻防が、次の焦点として浮上しよう。なお、この水準はフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(1.0630レベル)にあたる。1.0686レベルと同じく、この水準も重要サポートポイントとして意識しておきたい。
ユーロドルのチャート:日足 5月以降
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