【外為市場:今週の展望】FOMCとECB理事会、それぞれの焦点
現在の外為市場は、主要中銀の政策転換に関する市場参加者の思惑で揺れ動いている。今週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。最新の経済予想と中銀トップの言動で米ドル相場とユーロ相場は上下に振れる展開が予想される。経済指標では、11月の米消費者物価指数(CPI)に注目が集まるだろう。今週の外為市場の展望は?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・11月の米雇用統計では、労働市場の堅調さが示された
・現在の外為市場では、米欧の政策転換に注目が集まっている
・FOMCとECB理事会、それぞれの注目ポイントについて
・経済指標では、11月の米消費者物価指数(CPI)が変動要因となろう
労働市場の堅調さを示した11月の米雇用統計
米労働省が8日に発表した11月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月から19万9,000人増加し、市場予想の18万5,000人を上回った。自動車大手などのストライキが収束した影響により、11月は前月比で4万人程度上乗せとなったとの見方がある。
失業率は、前月の3.9%から3.7%へ低下した。
一方、平均時給は前月比で0.4%増と、前月の0.2%増から増加しかつ市場予想の0.3%増を上回った。前年同月比では4.0%増で市場予想と一致し、前月から横ばいとなった。
11月の雇用統計は、アメリカの労働市場が未だに堅調さを維持する状況にあることを示した。
米国の雇用統計 各項目の動向:月次 22年11月以降
各市場の反応
11月雇用統計の結果を受け、米債市場では利回りが上昇で反応した。米ドル相場のトレンドに大きな影響を与える10年債利回りは、4.14%台から4.26%台へ反発する局面が見られた。
米長期金利の上昇を受け、外為市場では米ドル買い優勢の展開となった。
一方、米国の株式市場では主要な株価指数が上昇して引けた。これまでは、強い経済指標が金融引き締めの長期化懸念を高め、株安の要因となる局面が見られた。しかし8日の市場では、強い雇用統計でも株高のトレンドを維持した。
同日に発表されたミシガン大学調査の12月期待インフレ率が低下したことは連邦準備制度理事会(FRB)にとって朗報である。しかし、強い雇用統計で米国株が上昇トレンドを維持した事実は、金融引き締めのリスクから景気の先行き不安へ市場のメインテーマがシフトしつつあることを示唆している。
より注目すべきは、短期金融市場が織り込む来年の利下げ観測である。労働市場の堅調さを示した11月の雇用統計を受け、50%台まで上昇していた3月の利下げ予想が後退した。
しかし、12月8日時点での利上げ確率は40%台で推移している。今週もいつくかの重要経済指標が発表される。なかでも11月の消費者物価指数(CPI)でインフレの鈍化傾向があらためて確認される場合は、再び3月利下げの観測が高まる可能性があろう。
米国 政策金利の予想推移
今週の注目材料は米欧の中銀イベント
今週は、12~13日に米連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。
そして14日には、欧州中央銀行(ECB)の理事会、英中銀(BOE)の金融政策委員会(MPC)そしてスイス国立銀行(中央銀行)の政策会合が開催される。
市場参加者の関心が高いのが、FOMCとECB理事会である。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の焦点
今年最後の連邦公開市場委員会(FOMC)では、2つの点に注目したい。
一つは、FOMCの参加者が予想する24年の経済成長率、PCEコアインフレ率そして政策金利(FFレート)の最新予想である。
9月時点の予想では、経済成長率が1.5%と6月予想の1.1%から上方修正された。PCEコアインフレ率の予想は2.6%と横ばいだった。
そして米債市場と米ドル相場の変動要因となり得るのがFFレートの最新予想だが、9月時点では5.1%と、6月時点の4.6%から上方修正された。25年のそれも3.9%と、6月予想の3.4%から上方修正された。
来年は、これまで急ピッチで進められてきた利上げ政策の影響を受け、米景気の減速が予想される。FOMC参加者がこの点についてどの程度、最新の予想に反映させるのか?この点が、米金利と米ドル相場のトレンドを左右する要因になると思われる。
総じて9月時点の予想から下方修正される場合、特にFFレートが下方修正される場合は、米金利の低下と米ドル安の要因となろう。
FOMC参加者の予想:9月時点
もうひとつの焦点は、来年の政策動向について市場参加者が急速に織り込んでいる早期の利下げ期待をパウエルFRB議長が強い姿勢でいさめるか?にある。
11月の雇用統計で労働市場の堅調さが確認されことを考えるならば、パウエルFRB議長はこれまでどおり、データ重視の姿勢を維持すると思われる。
米債市場や短期金融市場へ与えるパウエル発言のインパクトは、今週12日に発表される11月の消費者物価指数(以下ではCPI)の内容に左右される可能性があろう。
上で述べたとおり、11月の雇用統計では労働市場の底堅さが示され、短期金融市場の参加者が抱く3月の利下げ観測が後退している。
11月CPIでインフレ圧力の根強さまでが確認される場合、パウエルFRB議長はインフレ抑制重視の姿勢を維持した上で、はやる市場参加者の利下げ期待を強くいさめる可能性があろう。
この場合は、早期の利下げ期待がさらに後退し米債市場では利回りの反発が予想される。米金利の反発は、米ドル相場の下支え要因となろう。
米国 消費者物価指数の動向:月次 22年11月以降
ECB理事会の焦点
欧州中央銀行(ECB)理事会の焦点も、最新の経済予想とラガルド総裁の言動にある。
経済予想では、26年までのインフレ見通しが加わる。この点について9月時点では24年が3.2%、25年が2.1%と予想されている。26年を加えてインフレ見通しが下方修正される場合は、ユーロ売りの要因になり得る。
しかし、よりユーロ相場の変動要因となり得るのがラガルド総裁の言動となろう。ラガルド総裁は先月、政策金利を少なくとも数四半期、現行水準で維持すればインフレ率を2%に戻すことが可能と発言しており、はやる市場の利下げ期待をいさめる可能性がある。
短期金融市場では現在、50%台の確率で3月の利下げを織り込む状況にある。この予測が正しく、かつ今後の米経済指標でFRBによる3月利下げの観測がさらに後退する場合、ECBは主要中銀のなかで最初に利下げに踏み切る可能性が出てくる。
今後、この状況(ECBの早期利下げ)が外為市場で意識される場合は、ユーロ売りの圧力が高まる展開が予想される。
欧州中央銀行 政策金利の予想推移
ECBのチーフエコノミストを務めるレーン専務理事は10月16日付のオランダ紙「Het Financieele Dagblad」のインタビュー記事で、インフレ率が目標の2%に戻りつつあると確信するには一定の時間が必要であると語り、市場参加者が抱く早期の利下げについては否定的な見解をとった。
ECBのシュナーベル専務理事はロイターとの単独インタビューで、追加利上げの可能性は低いとしつつも今後の経済データに注目し、拙速にインフレ退治の勝利宣言をすることには慎重になるだろうと述べた(今月5日のロイター報道)。
また、ECB理事会メンバーのカジミール・スロバキア中銀総裁は今月6日、追加利上げの可能性はないが、来年の第1四半期に利下げに踏み切るという市場の見方は非現実的だと述べた。
キーマン達の言動から、ECBはすでに利上げサイクルの終了を想定しつつ、インフレリスクを警戒する姿勢を維持していることが分かる。
ラガルド総裁が待ちの政策姿勢にあることも考えるならば、利下げの時期とその幅に関する観測は、今後の経済指標や国際政治の情勢を受け日々変化すると考えておくべきだろう。
域内のインフレが鈍化の傾向にあることはECBにとって朗報である。しかし早急な利下げ政策への転換は、インフレのリスクが再燃する要因になり得る。ゆえにラガルド総裁はデータ重視の姿勢を貫くことで、理事会後の記者会見では、市場の利下げ期待をいさめることが予想される。
ラガルド総裁の言動で早期の利下げ期待が後退する場合、12月のECBイベントは短期的なユーロの買戻し要因となる可能性があろう。
ユーロ圏 消費者物価指数の動向:月次 22年11月以降
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