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円高進行、強まる日銀の追加利上げ観測 日米利回り格差は縮小へ ドル円の見通し

日銀の追加利上げ観測が急速に強まり外為市場で円高が進行している。ドル円は下落幅の拡大を警戒する局面にある。今日の見通しについて。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

日銀の植田和男総裁と氷見野良三副総裁は来週に開かれる金融政策会合で追加の利上げを行うかどうかを議論すると述べた。短期金融市場では80%の確率で追加の利上げを織り込む状況にある。国内金利の上昇と米金利の低下で、日米の利回り格差は拡大の抑制から縮小へ転じている。日銀会合前までのドル円は下落幅の拡大を警戒したい。今日の予想レンジは153.75-156.25。


目次


日銀、1月会合で追加利上げか

日銀の氷見野良三副総裁は14日、来週の金融政策決定会合では、「展望レポート」にまとめる経済・物価の見通しを基礎に利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し、判断したいと述べた。そして植田和男総裁も15日、日銀会合で追加の利上げを行うかどうかを議論すると述べた。

日銀のキーマンがそろって追加の利上げの議論に言及したことで、短期金融市場では80%台の確率で追加の利上げを織り込む状況にある。

日銀 1月会合の利上げ確率:日次 2024年12月からの推移

日銀 1月会合の利上げ確率:日次 2024年12月からの推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想確率 / 1月17日 午前8時時点

国内金利の上昇と米金利の低下

国内の債券市場では、日銀の利上げ姿勢が意識され金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが15日と16日に、2008年10月以来となる0.7%へ上昇する局面が見られた。

一方、10年債利回りは2011年4月以来となる1.25%を付ける局面が見られた。

国内金利の動向:週足 2008年以降

国内金利の動向:週足 2008年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

国内金利が上昇基調を維持する一方、米金利は上昇から低下のトレンドへ転じている。きっかけは、2024年12月の消費者物価コア指数(CPI)だった。前月比と前年同月比がともに昨年11月から鈍化。市場予想も下回ったことで、インフレ懸念がひとまず後退した。

米国株と比べて有利な米国債利回りの投資妙味も意識され、一時4.8%まで上昇していた10年債利回り(長期金利)は昨日、4.58%まで急低下した。5%台へ上昇した20年債と30年債の各利回りも昨日の市場でそれぞれ4.9%台、4.8%台へ急低下している。

国内総生産(GDP)の算出に使われるコアの小売売上高(自動車、ガソリン、外食、建設資材を除いた指数)は24年12月に前月比で0.7%増加した。市場予想の0.4%増も上回り、直近3カ月で最大の伸びとなった。しかしウォラーFRB理事のハト派発言の方が材料視され米金利の低下幅が拡大した状況は、これまでの上昇トレンドがひとまず一服する可能性を示唆している。

米長期ゾーン利回りの動向:2024年9月以降

米長期ゾーン利回りの動向:2024年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

日米の利回り格差、拡大の抑制から縮小へ

国内金利の上昇が続く一方で米金利が低下へ転じている状況は、円安の圧力を後退させるだろう。ドル円(USD/JPY)は日米金利差との相関関係が強く、かつ現在のクロス円はそのドル円の動きに連動しているからだ。

ドル円のトレンドを左右する日米金利差の動きを確認すると、昨年12月の中旬以降は米金利の上昇幅が拡大しても抑制の傾向が続いていたことが分かる。そして直近は、2024年12月の米消費者物価コア指数(CPI)の鈍化がきっかけとなり、低下幅が拡大している(下のチャート、赤枠を参照)。米国株と比べて利回りの面で投資妙味が増している米国債の状況も考えるならば、米金利の上昇はひとまず収束する可能性がある。対照的に国内の金利は日銀の追加利上げ観測を意識した高止まり、またはさらに上昇することが予想される。

米金利の上昇一服(低下)と国内金利の上昇基調は、日米利回り格差の縮小を促すだろう。この動きはドル円の下落圧力を強めるだろう。ドル円の下落はクロス円の円高圧力を強めるだろう。ゆえに日銀会合前まで(今後1週間)は、投機的な円高を警戒する必要があろう。

日米利回り格差の動向:日足 2024年9月以降

日米利回り格差の動向:日足 2024年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成


ドル円、今日の見通しと注目のテクニカルライン

サポートライン
今後1週間は、日銀の追加利上げを意識した円高の進行を警戒する必要がある。ゆえにドル円(USD/JPY)の焦点は、新たな下値水準の見極めが焦点となろう。今日の予想レンジは153.75-156.25。日米利回り格差の動向を考えるならば、下値トライを意識したい。注目のサポートラインを以下にまとめた。

・本日以降、ドル円が下値をトライする局面では、2つの移動平均線と2つのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい

・移動平均線では50日線と89日線の攻防に注目したい。今日現在、50日線は154.80レベル、89日線は152.10レベルで推移している。本日ドル円が155.00を下方ブレイクする場合、まずは50日線で下げ止まりかどうか?が重要な焦点となろう

・ドル円が50日線を下方ブレイクする場合は、昨年9月16日の安値を基点としたフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準154.32の攻防に注目したい。このテクニカルラインの下方ブレイクは、154.00をトライするサインと捉えたい。

・米ドル安と円高の進行でドル円が154.00をも下方ブレイクする場合は、昨年12月3日の安値を基点とした半値戻しの水準153.76レベルの攻防が焦点に浮上しよう。このテクニカルラインを今日の予想レンジ下限と想定したい。

サポートラインまとめ
・155.00:5サポートライン
・154.80:50日線(日足)
・154.32:フィボナッチ・リトレースメント23.6%(日足)
・154.00:サポートライン
・153.76:半値戻し、予想レンジの下限(日足)

レジスタンスライン
一方、ドル円の反発局面では、以下で取り上げているレジスタンスラインの攻防に注目したい。今日のレンジの上限は156.25レベルを想定したい。

・ドル円の反発局面では、156.00の攻防が焦点となろう。このラインはレジスタンスへ転換する可能性がある

・ドル円が156.00をトライするサインとして、155.50と155.77レベルの攻防に注目したい。前者はレジスタンスラインへ転換する可能性がある。後者は直近高安の23.6%水準にあたる(レポート掲載時点)

・日足のMACDはデッドクロスへ転じゼロラインを視野に下落している。そしてモメンタムはゼロラインを下回る状況にあり、いずれの指標も弱気相場に勢いが出始めている状況を示唆している(黒矢印を参照)。ゆえに、本日ドル円が反発してもその幅は限定的となることが予想される

・ドル円が156円台へ反発しても、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準156.24レベルで反落する展開を想定したい。156.20台は昨日、相場の戻りを止めたレジスタンスラインでもある。このテクニカルラインを今日の予想レンジ上限と想定したい。

レジスタンスラインまとめ
・156.24:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(45分足)
・156.00:レジスタンスライン(日足、45分足)
・155.77:フィボナッチ・リトレースメント23.6%(45分足)
・155.50:レジスタンスラインへ転換する可能性あり(45分足)


ドル円のチャート

日足:2024年9月以降

日足:2024年9月以降

出所:TradingView

45分足:1月14日以降

45分足:1月14日以降

出所:TradingView


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