【週間展望】相次ぐ米国の重要経済指標、注目の5月米雇用統計、ドル円の見通し
5月の外為市場は、米ドル安優勢の展開となった。この動きがさらに進行するかどうか?6月の焦点はこの点にある。今週、米ドル相場の変動要因として注目したいのが米国の経済指標、特に雇用関連の指標である。7日に5月の雇用統計が発表される。今週のドル円(USD/JPY)の見通しは?注目のチャートポイントは?
サマリー
・5月の外為市場は米ドル安と円安が同時に進行した
・6月の焦点は、米ドル安がさらに進行するかどうか?の見極めにある
・今週は米雇用関連指標が変動要因となろう、なかでも注目は5月雇用統計
・ドル円、今週の展望と注目のチャートポイントについて
外為市場の動向:米ドル安と円安が同時に進行した5月
5月の外為市場市場では、対主要国の通貨で米ドル安優勢の展開となった。
米ドル相場の大まかなトレンドを示すドル指数(ドルインデックス、DXY)は先週、105.15レベルまで反発する局面が見られた。しかし、5月9日の高値105.74レベルをトライすることなく反落。今年の米ドル高トレンドを象徴する短期サポートラインを再びトライする状況にある。
一方、5月の円相場は、クロス円を中心に円安が進行した。「米ドル安vs円安」の戦いとなった5月だったが、対米ドル(USD/JPY)では若干ながら円高優勢となった。政府・日銀による為替介入(総額9兆7,885億円規模の円買い介入)が響いたかたちとなった。
米ドル相場と円相場の動向:5月
今週の焦点と注目の材料
焦点は米ドル安がさらに進行するかどうか?
6月の外為市場の焦点は、米ドル安がさらに進行するかどうか?この点を確認することにある。
ドル指数(ドルインデックス、DXY)のMACDは現在、ゼロラインを下回り地合いの弱さを示唆している(下の日足チャートを参照)。そして短期サポートラインを再び意識する状況にある。
ドル指数が今週、短期サポートラインのみならず、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準104.26レベルをも完全に下方ブレイクする場合は、米ドル高トレンドの転換を市場参加者に意識させよう。
ドル指数のチャート:日足 23年12月以降
市場参加者の注目は5月の米雇用統計に
米ドル相場のトレンドに大きな影響を与える米債市場は現在、経済指標で上下に振れる状況にある。今週もいくつかの重要な米経済指標が発表される。ゆえに、今週の米ドル相場は経済指標にらみの1週間となろう。
市場参加者の関心が最も高いのが、7日に発表される5月の雇用統計である。
現時点での市場予想を確認すると、非農業部門雇用者数変化は19万人と4月の17.5万から増加する見通しである。一方、失業率は3.9%で前月から横ばいの予想となっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ再燃に対する警戒レベルは依然として高い。ゆえに、賃金の動向(平均時給)も材料視される可能性がある。5月は前月比で0.3%増と、4月の0.2%増から小幅に上昇する見通しである。一方、トレンドを示す前年同月比は3.9%と、4月から横ばいの予想となっている(いずれも下のチャート、赤棒グラフとドットを参照)。
4月の雇用統計は、労働市場の軟調さを示す内容となった。5月も同じ内容となれば、米金利は低下で反応することが予想される。
米金利の低下は米ドル安の圧力を高めよう。ドル指数(ドルインデックス、DXY)は、上で述べた短期サポートラインやフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準104.26レベルを下方ブレイクし、半値戻しの水準103.56レベル以下の攻防が焦点として浮上しよう。
一方、5月の雇用統計が労働市場の堅調さを示唆する場合は、「米金利の上昇→米ドル高」の要因となろう。ドル指数は、先週の高値105.15レベルの突破と5月9日の高値105.74レベルのトライが焦点となろう。
米国の雇用統計 各項目の動向:23年5月以降
他の雇用関連指標も変動要因に、ISM雇用指数に注目
5月の米雇用統計は、市場参加者の関心を集めよう。そして、米金利と米ドル相場に与える結果の影響度合いは、他の雇用関連指標の内容によって大きく左右されるだろう。
今週は4月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数や5月の ADP雇用統計の他、5月のISM製造業 / 非製造業の雇用指数も発表される。
注目は、ISM指数の雇用である。製造業と非製造業の雇用指数はともに「50」を下回る状況にある(下のチャートを参照)。特に米国経済のけん引役であるサービス業の雇用が低下の傾向にある。5月も同様の状況が確認される場合は、将来のサービス価格の低下とインフレの鈍化を想起させよう。
ISMの雇用指数に続き、5月の雇用統計でも労働市場の軟化を示唆する内容が確認される場合は、「米金利の低下→米ドル安」のトレンドが進行する展開を想定しておきたい。
米国 ISM雇用指数の動向:23年5月以降
ドル円、今週の展望と注目のチャートポイント
日米の利回り格差は縮小の傾向にあるが
今週のドル円(USD/JPY)の焦点は、引き続き158円のトライとなろう。
植田日銀は金融緩和政策からの完全なる脱却に向けて歩みを進めている。植田日銀の姿勢を受け、国内の債券市場では長期金利(10年債利回り)が1.0%台の水準へしっかりとのせてきた。他の年限の利回りも上昇の傾向にある。対照的に米金利の方は反発の局面が見られるものの、上昇が抑制されている。
これらの動きを受け、日米の利回り格差は縮小の傾向にある(下のチャートを参照)。日米利回り格差の縮小は、基本的にドル円の下落要因である。
日米利回り格差の動向:23年11月以降
156.50のサポート転換と158円のトライ
日米の利回り格差の縮小を受け、ドル円(USD/JPY)は反落する局面が見られた。しかし、156.50レベルで底堅い展開となっている(下の4時間足チャート、黒矢印を参照)。この水準は5月中旬に、レジスタンスとして意識された経緯がある。ゆえに今の状況は、156.50レベルがサポートの水準へ転換する可能性を示唆している。
今週の米経済指標、特に上で述べた雇用関連の経済指標が米ドル買いの要因となれば、ドル円はIG為替レポートで注目しているレジスタンスの水準「158.00」のトライおよび上方ブレイクを想定しておきたい。
ドル円が158円台の攻防へシフトし、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準158.23レベルをも難なく上方ブレイクする場合は、159.00を視野に上昇幅の拡大を予想する。
ドル円のチャート:4時間足 4月24日以降
156.50を下方ブレイクする場合の焦点は?
今週の米雇用関連指標で労働市場の軟化を示唆する内容が続く場合、ドル円(USD/JPY)は156.50レベルを下方ブレイクする可能性がある。
上のケースで注目したいのが、21日線の攻防である(下の日足チャート、緑ラインを参照)。この移動平均線は今日現在、156.15レベルまで上昇している。ゆえに21日線の攻防は、156円の維持を見極めるための攻防となろう。
なお、ドル円が21日線を下方ブレイクしても、短期サポートラインとこのラインに並行して推移している50日線(下の日足チャート、青ラインを参照)を下方ブレイクしない限り、ドル円の「158円トライ」を意識する状況が続くと予想する。
なお、50日線は今日現在、154.62レベルで推移している。
ドル円のチャート:日足 23年12月以降
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