原油先物価格が続伸、供給リスクを高める中東情勢とリビアの政情不安、NY原油先物（WTI）の見通し

記事のポイント

・不穏な中東情勢とリビアの政情不安で原油の供給リスクが意識されている
・目先は、様子見姿勢の投機筋が買いに動くかどうか？に注目したい
・NY原油先物価格は、上値抵抗線と50日線が視野に入る
・一方、反落の局面では21日線の攻防に注目したい

供給懸念で原油先物価格が上昇

再び緊迫化する中東情勢

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは25日、340発のロケット弾と数十機の無人機（ドローン）でイスラエル軍を攻撃した。イスラエル軍は約100機の戦闘機でレバノンの標的を攻撃したと発表し、10カ月以上にわたる戦闘のなかでも最大規模の衝突となった。

一方、イスラム組織ハマスは同日、パレスチナ自治区ガザの停戦協議で仲介国が提示した調停案を拒否すると表明した。

リビアの政情不安も供給リスクを高める要因に

再び緊迫化する中東情勢は原油の供給リスクの懸念を高めている。そして昨日は、リビアの政情不安がその懸念をさらに高めた。

リビア東部政府は26日、すべての石油生産と輸出を停止すると発表した。中央銀行の総裁人事を巡る西部政府との対立が原因という。

2011年に42年間の独裁体制を続けてきたカダフィ政権が崩壊して以降、リビアは東西勢力に分裂して内戦が勃発。2020年の停戦合意後も東部政府と西部政府の対立が続いる。国際エネルギー機関（IEA）によれば、2023年の石油生産量は日量116万バレルだった。リビアの油田の大部分は東部地域にある。このため東部油田の生産が止まれば、リビアで稼働する油田は南西部のエルフィール油田（生産能力日量13万バレル）だけになるという。

中東情勢が再び緊迫化するなかで、ナイジェリアと並産油国のリビアで政情不安が高まる状況は、需給のひっ迫を市場参加者に意識させよう。

投機筋の動きに注目

原油先物価格の動向を見極めるうえで、投機筋の動向に注目したい。米国商品先物取引委員会（CFTC）のデータによれば、投機筋の買いポジションは減少の傾向にある。ショートポジションは横ばいのため、ネットロング（買い越し）は緩やかに減少している。

投機筋の動きは、原油先物価格のトレンドに影響を与える。上で述べた中東情勢の緊迫化とリビアの政情不安を受けて投機筋が買いを仕掛けてくる場合は、原油先物価格の押し上げ要因となろう。

しかし、今は世界最大の石油輸入国である中国の景気懸念が意識されている。そして今後は、米連邦準備制度理事会（FRB）が利下げ政策へ転じた後のアメリカ景気の減速も意識される可能性がある。

ゆえに、今の供給懸念を材料に投機筋が買いを仕掛けても、短期で終息する展開を想定しておきたい。

投機筋の動向：年初来

NY原油先物価格の見通し

上値抵抗線と50日線が視野に

NY原油先物価格（以下ではWTI）は昨日、大陽線で21日線を突破し、今月15日以来となる77ドル台へ上昇した。日足のMACDとRSIがゴールデンクロスへ転じていることも考えるならば、WTIは強気の地合いにある。

今日以降も原油の供給懸念が相場の下支え要因となる場合は、2つのテクニカルラインのトライを想定しておきたい。

ひとつは、7月5日の高値を起点とした短期の上値抵抗線である。もうひとつのラインは、50日線である。これらテクニカルラインは今日現在、78ドル後半で推移している。半値戻しの水準77.99（78.00）ドルの突破は、これらテクニカルラインをトライするシグナルと想定しておきたい。

NY原油先物価格：日足 24年6月以降

出所：TradingView

反落の局面では21日線の攻防が焦点に

一方、株安などの理由でNY原油先物価格（WTI）が反落する場合は、21日線の「サポート転換」を確認したい。この移動平均線は今日現在、75.70レベルで推移している（上の日足チャート、緑ラインを参照）。

WTIが21日線を下方ブレイクする場合は、下の2時間足チャートにプロットしたフィボナッチ・エクステンションの攻防に注目したい。

半値戻しの水準74.49の攻防では、21日線と同じく「サポート転換」を意識したい。76.4％戻しの71.52レベルは、8月に入り二度相場の下落を止めた経緯がある。目先の下限と想定しておきたい。

NY原油先物価格：2時間足 7月16日以降

出所：TradingView

NY原油先物価格のチャート水準

上値の水準（レジスタンス）

・78.69：50日線
・78.55：上値抵抗線
・77.99：半値戻し

下値の水準（サポート）

・75.70：21日線
・74.49：半値戻し
・73.16：エクステンション61.8％
・71.52：エクステンション76.4％