下落が続くNY原油先物価格 3つの売り要因に直面 目先の見通し
NY原油先物価格(WTI)の下落が止まらない。19日に50日線を下方ブレイク。そして22日には200日線をも下方ブレイクし76ドル割れが視野に入る。減少の一途にある石油リグの稼働数、中国の景気懸念、そして米共和党が掲げるエネルギー規制の緩和-目先のWTIは下値の水準を探る状況が続こう。
記事のポイント
・NY原油先物価格(WTI)が200日線をブレイク、アルゴ売り発動
・減少傾向のリグ稼働数、トランプ政策、中国の景気懸念も相場の重しに
・WTIは新たな下値の水準を見極める状況に、目先の焦点は76ドルの攻防
・WTIの反発局面では、200日線と50日線のブレイクが焦点に
NY原油先物、注目のチャート水準
レジスタンスの水準
・80.00:レジスタンスの水準
・79.59:50日線
・79.10:7月22日高値
・78.52:200日線
サポートの水準
・77.00:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・76.43:7月23日安値
・76.00:サポート水準
・75.28:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
NY原油先物価格の下落が止まらない
200日線の下方ブレイク、アルゴ売り発動
NY原油先物価格(WTI)の下落が止まらない。先週の19日に大陰線で50日線を難なく下方ブレイクすると、今週22日には200日線をも日足ローソク足の実体ベースで下抜けた。
そして23日の市場では安値76.43レベルまで下落する局面が見られた。重要なテクニカルラインの200日線を下方ブレイクしたことで、アルゴ取引の売りが発動したとの報道がある(ブルームバーグ)。
日足のモメンタムとMACDはともに弱気相場に勢いがあることを示唆している。RSIの低下基調は一服しているが、ゴールデンクロスが確認されていない(いずれも下のチャート、赤矢印を参照)。
これら一連のテクニカルでの攻防や動向を考えるならば、目先のNY原油先物価格は新たな下値の推移を見極めることが焦点となろう。
NY原油先物価格:日足 24年4月以降
出所:TradingView
NY原油、目先の見通しとチャート分析
反発局面では200日線と50日線の攻防が焦点に
NY原油先物価格(WTI)は7月に入り5%下落しており、調整の反発を意識する局面にある。しかし、下で述べる「3つの売り要因」を考えるならば、反発相場は一過性の動きで終わることが予想される。
今日以降、NY原油先物価格が反発する場合、まずは200日線(78.52レベル)の攻防に注目したい。昨日は、この移動平均線で上値が止められた(上の日足チャート、青矢印を参照)。レジスタンスのラインへ転換するシグナルである。
200日線を突破しても、すぐ上には50日線(79.59レベル)が控えている。NY原油先物価格が50日線をトライする場合は、節目の80ドルをトライするかどうか?を見極めるための攻防となろう。
7月22日の高値79.10レベルの上方ブレイクは、50日線をトライするシグナルと想定しておきたい。
目先のサポート水準は?
一方、NY原油先物価格(WTI)が下落トレンドを維持する場合は、6月4日に付けた安値72.43レベルを視野に下落幅の拡大を想定したい。
目先の焦点は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準77.04レベルである。昨日は日足ローソク足の実体ベースで、かろうじてこの水準を維持した。
NY原油先物価格が76ドル台の攻防となる場合は、昨日の安値76.43レベルのトライ&ブレイクが焦点として浮上しよう。この水準をも難なく下方ブレイクする場合は、76.00レベルの攻防に注目したい。76.00前後は「サポート転換」を意識する水準である。
NY原油先物価格が75ドル台の攻防となる場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準75.28レベルの維持が焦点として浮上しよう。
NY原油先物価格:日足 24年5月以降
出所:TradingView
NY原油先物が直面する3つの売り要因
要因1:減少するリグ稼働数
石油需要を考える上で重要な指標の一つがリグ稼働数である。今年の4月以降、石油リグ稼働数は減少の一途にある。直近の稼働数は477基と、2021年12月以来の低水準まで減少している。この動きは、中国をはじめとした景気懸念とそれに伴う将来の石油需要の減少を意識した動きと考えることができる。
今年に入り、リグ稼働数とNY原油先物価格(WTI)のトレンドを比べると、その動きがほぼ一致していることが分かる。
石油リグ稼働数とNY原油先物価格の動向:週次 年初来
要因2:中国の景気懸念
上で述べた将来の石油需要の動向に大きな影響を与えるのが、中国の景気動向である。
国家統計局が15日に発表した4〜6月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4.7%増と、市場予想の同比5.1%を下回り、1〜3月比で0.6ポイント縮小した。また、季節調整済みの前期比では1〜3月の1.5%から4〜6月は0.7%へ鈍化した。
1〜6月の新築住宅の販売面積は21.9%減となり、長引く不動産不況が個人消費にも影響している。事実、6月の小売売上高は前年同月比2.0%の増加と、5月の同比3.7%から急速に鈍化し、市場予想の3.4%も下回った。
中国景気の低迷は石油需要の緩みを意識させる。今後も同国の経済指標で景気の先行き懸念を示唆する内容が続けば、中長期的にNY原油先物価格(WTI)の上値を抑制する要因となろう。
中国の国内総生産(GDP):2021年以降
要因3:トランプ政策と需給のゆるみ
7月8日、2024年の政策綱領が米共和党の全国委員会で承認された。その中では、アメリカを圧倒的な世界のエネルギー生産国にするために、エネルギー産業にかかわる規制緩和で石油・天然ガスの採掘を進めることが盛り込まれた。
11月のアメリカ大統領選挙が近づくにつれて共和党のドナルド・トランプ前大統領有利の報道が多くみられる場合は、「エネルギーの規制緩和→石油需給の緩み」が意識されるだろう。市場参加者が抱く需給の思惑は原油先物価格を大きく動かす要因である。ゆえに、トランプ勝利の可能性が高まる状況は、中長期的にNY原油先物価格(WTI)の上値を抑制する要因となろう。
トランプ氏の銃撃事件が発生して以降、NY原油先物価格の下落幅が拡大している。この状況は、早くも「トランプ・トレード」が原油先物市場にも波及し始めていることを示唆している。
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