アメリカ労働市場に潜むリスク 円高ドル安も 1月雇用統計は堅調予想
アメリカの1月雇用統計は堅調な結果が予想されているが、想定外の弱さが示されるリスクも残る。ドル円相場が円高に動く可能性もある。
アメリカの労働省が2日に発表する1月の雇用統計は労働市場の安定が示されそうだ。就業者数の増加幅は12月から低下すると予想されており、米連邦準備制度理事会(FRB)の期待に沿う内容。予想通りになれば外国為替市場でのドル高要因になることが考えられる。ただし米国の労働市場をめぐっては弱さを示す指標が31日に発表され、円高要因として働いた。雇用統計で労働市場の想定外の悪化が示された場合には、FRBが利下げに突き動かされて円高になるシナリオが意識される可能性がある。
アメリカの1月雇用統計は就業者数が18万人増の予想
米労働省は2日午前8時30分(日本時間2日午後10時30分)に1月雇用統計を発表する。ロイターがまとめたエコノミスト調査によると、非農業部門の就業者数は前月比18万人増の見込み。12月の21.6万人増から雇用拡大のペースが鈍化すると予想されている。失業率は3.8%で、12月(3.7%)から上昇し、平均時給の伸び率は12月と同じ前年同月比4.1%になる見通しだ。
予想される雇用統計の数値はいずれも労働市場に大きな異変が起きていないことを示す内容といえる。平均時給の伸び率は新型コロナウイルス禍前の10年間の平均値(約2.4%)よりも大幅に高く、物価上昇圧力として働く可能性があるが、パウエル氏は31日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「労働市場は正常化に向かっている」と言及。賃金上昇率についても「元に戻るには2年かかるかもしれないが、それは問題ない」と述べた。
こうした労働市場過熱に対する警戒の和らぎは、米国の物価上昇率が順調に低下していることとあわせて、FRBの政策判断の背景になっている。FRBはFOMCで4会合連続で政策金利を据え置き、パウエル氏は3月の利下げについて「ありそうにない」と述べた。31日のFX市場では市場が期待していた3月利下げが遠のいたとの見方から、ドルが買われるきっかけとなった。
ECIでは賃金上昇の鈍化が示され、ドル安要因に
ただしFRBが労働市場から目を離しているわけではない。2023年7月までの利上げで政策金利は5.50-5.25%という2001年以来の高さに達しており、経済活動を冷やしすぎているリスクがあるからだ。FOMCの結果に先立って31日に発表された10-12月期の雇用コスト指数(ECI)は前期比0.9%増で、2021年4-6月期(0.7%)以来の低さ。賃金上昇ペースの鈍化が労働市場の弱まりを予感させている。パウエル氏は31日、ベースシナリオではないと断りながらも、労働市場が想定外に弱くなれば「より早いタイミングでの利下げ」を検討することになるだろうと述べた。
また、金融市場では日銀の金融政策の先行きにも焦点があたる。31日に公表された22、23日の金融政策決定会合での「主な意見」では、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」、能登半島地震の経済への影響を判断できれば「金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い」など、賃上げと物価上昇の好循環の達成に近づいたとみる声が目立った。日銀はこの決定会合でマイナス金利解除を見送りつつ、好循環達成の確度について「引き続き、少しずつ高まっている」との見方を示している。
31日のニューヨーク市場のドル円相場(USD/JPY)の終値は1ドル=146.88円で前日比0.72円の円高ドル安。マイナス金利解除観測と、ECIで示された米労働市場の弱さが円高要因として働き、円安要因となったパウエル氏の発言の効果をしのぐ結果となった。1日のドル円相場も146円台後半で推移している。2日発表の1月雇用統計で労働市場の弱まりが感じられれば、さらなる円高圧力となる可能性もありそうだ。
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