米国株が失速　S&P500大幅安　3月利下げと決算ラリー遠のく

アメリカの株式相場の値上がりに急ブレーキがかかった。31日のS&P500種株価指数の終値は前日比1.61％安で約4か月半ぶりの下落率。米連邦準備制度理事会（FRB）のジェローム・パウエル議長がこの日の記者会見で、市場が期待していた3月の利下げを打ち消す発言をしたことが投資家心理を冷やした。30日までのハイテク企業決算も株価上昇の起爆剤にはなっておらず、失望感につながっている。一方、金融市場ではFRBが5月までに利下げを行うとの期待は続いており、長期金利（10年物米国債利回り）は低下しているが、株価上昇の勢いはそがれている。

アメリカのS&P500は9月21日以来の下落率に

31日のS&P500（SPX）の終値は4845.65。前日比での下落率は2023年9月21日（1.64％安）以来の大きさとなった。S&P500の1月の上昇率は1.59％高で、年明け早々の不振を取り戻したが、月の最後に失速したといえる。

S&P500の下落を招いたのはパウエル氏の会見だ。FRBは30、31日の連邦公開市場委員会（FOMC）で、事前予想通りに4会合連続で政策金利を据え置き。さらにパウエル氏は、3月のFOMCまでに利下げを決断できるだけの自信を持てるかどうかについて、「ありそうにない」と述べた。金融市場では米国の物価上昇率が順調に低下していることを踏まえ、3月に利下げが行われ、株価が値上がりするとの期待があったが、打ち消された格好だ。

アルファベットの株価は7.5％の急落

また、企業決算も株価上昇の加速にはつながっていない。グーグルなどを傘下に持つアルファベットの株価（GOOGL）の31日の終値は前日比7.50％安。前日の取引時間終了後に発表した2023年10-12月期決算で広告事業の収入が市場予想を下回ったことなどが悪材料視された。下落率は7-9月期決算発表翌日の10月25日（9.51％安）以来の大きさだ。また、同じく前日に決算を発表したマイクロソフト（MSFT）の株価も2.69％安となっている。

アルファベットやマイクロソフトなどが名前を連ねる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中では、電気自動車（EV）大手のテスラ（TSLA）も24日の決算発表で2024年について弱気な見通しを示し、翌日の株価が12.13％安となった。1日に予定されているメタ・プラットフォームズ（META）、アップル（AAPL）、アマゾン・コム（AMZN）の決算でも、投資家の視線は厳しくなりそうだ。

FRBの利下げは5月が有力？

ただ、FRBの3月利下げは遠のいたとはいえ、利下げのタイミングが近づいていることは間違いない。パウエル氏は「FOMCのほんどすべての参加者が利下げが適切になるであろうと信じている」とも述べており、今後の経済指標を注意深く検討する考えを示している。CMEグループのデータによると、3月19、20日のFOMC後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間1日午前11時段階で約53％。5月のFOMCまでの利下げについては、約95％の確率が見積もられている。ニューヨーク債券市場での31日の長期金利の終値は3.965％に下がり、12日以来の3％台となった。

パウエル氏は物価上昇率の低下と堅調な経済成長が両立している現状について「良い状態だ」と評価しており、株価の逆風になるような経済状況の悪化がみられるわけではない。ただ、投資家の利下げ期待はFRBの思惑以上に大きかったといえ、株価への下落圧力が強まっているようだ。