【ドル円の週間見通し 前編】 米雇用統計に冷静な市場、注目のアメリカ大統領選挙、トリプルレッドなら米ドル高加速
10月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場の予想を大きく下回った。しかし各市場の反応は冷静だった。今週5日、今年最大のビッグイベントであるアメリカの大統領選挙が行われる。「トリプルレッド」が実現すれば、外為市場で米ドル高が最も進行すると思われる。ドル円が強気相場を維持する場合、注目しておきたいレジスタンスポイントは?
記事のポイント
・10月非農業部門雇用者数の内容に各市場は冷静な反応を示した
・アメリカ大統領選挙、「トリプルレッド」が実現するか?
・トリプルレッドなら、米ドル高が最も進行する展開が予想される
・アメリカ大統領選挙が米ドル高の要因となれば、ドル円は155円の突破が焦点となろう
10月の雇用統計と市場の冷静な反応
アメリカ労働省が1日に発表した10月の雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比1万2,000人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想の10万人を大きく下回った。
発表直後こそ、外為市場は米ドル売りで反応した。しかし、大幅に雇用が減少した要因が航空機大手ボーイングのストライキや大型ハリケーン「ミルトン」の被害などがかく乱要因になったとの見方が強まり、米ドルはすぐに買い戻される展開となった。
ヒステリックな米ドル売りが進行しなかった理由は、米債市場の動きにあった。雇用統計が発表された直後こそ、10年債利回りは4.31%付近から4.22%へ急低下した。しかし、その後はソフトランディング期待と米大統領選挙でのトランプ候補の勝利を意識した流れ(米金利の上昇)に戻り、4.38%まで上昇する局面が見られた。
米国株も非農業部門雇用者数の内容に大きく下落することなく、主要な株価指数は上昇して終えた。いずれの市場も冷静な反応を示したと言える。
ドル指数と米長期金利のチャート:5分足 10月米雇用統計発表後の動き
出所:TradingView / 米長期金利:10年債利回り
次の焦点はアメリカ大統領選挙
各市場の焦点は、今週5日のアメリカ大統領選挙に集中している。大統領選挙に関連したIGレポート「為替市場への影響 迫る大統領選挙、米ドルへの影響とドル円の展望」で述べたとおり、1973年に外為市場が現在の変動相場制に移行した後、大統領選挙の年の米ドル相場は上昇する傾向が見られる。
10月の雇用統計では、9月の非農業部門雇用者数が25.4万人から22.3万人に下方修正された。また、8月と9月分の増加数は合計で11万2,000人下方に改定された。それでも1日の米債市場では長期金利が上昇した。外為市場では米ドル高優勢の状況が続いている。これらの動きは、各市場の参加者が抱くアメリカ経済のソフトランディング期待の根強さを示唆している。
米ドル高が最も進行するシナリオは「トリプルレッド」
では、大統領選挙の後に米ドル高が最も進行するシナリオとは何か?
それは、大統領選挙でトランプ候補が勝利し、かつ同時に行われる連邦議会の選挙で上下両院ともに共和党が制する「トリプルレッド」が実現する場合である。
RealClearPoliticsがまとめたアメリカ大統領選挙の世論調査では、レポート掲載時点で共和党のドナルド・トランプ候補が48.5%、民主党のカマラ・ハリス候補が48.3%で接戦となっている。
一方、筆者が注目しているもう一つの「指標」が、選挙からスポーツまで様々なイベントの賭けが行える予測プラットフォームのPolymarket(ブロックチェーン技術を基盤にした予測市場のプラットフォーム)である。
本レポート掲載時点でのPolymarketの予想確率をみると、トランプ候補勝利の55.3%に対してハリス候補勝利が44.8%と、トランプ候補が優勢の状況にある。
アメリカの大統領選挙の世論調査と各候補者の勝利予想確率
出所:RealClearPolitics / Polymarket / 日本時間 4日午前8時時点のデータ
上院では、共和党が過半数を獲得するとの報道が目立つようになってきた。一方、共和党が多数派を占める下院では接戦との報道が見られる。
共和党が上院を制すると想定する場合、焦点は下院の情勢となろう。ここでも共和党が接戦を制する場合は、「トリプルレッド」が実現し、外為市場では米ドル高が最も進行する展開を想定しておきたい。
ドル円の週間見通し:大統領選挙が米ドル高の要因となるケース
根強い円安
日銀の植田和男総裁は、先月31日に開かれた金融政策決定会合後の記者会見に臨んだ。7月の会見とは対照的にタカ派寄りの姿勢を示したと、外為市場の参加者は捉えた。事実、この日の外為市場は円買いで反応した。しかし、11月1日の外為市場では一部の新興国通貨を除き、一転して円安へ振れた。
12月19日に今年最後の日銀会合が開かれるが、短期金融市場が織り込む追加利上げの確率はレポート掲載時点で35%前後にある。植田総裁がタカ派の姿勢を示すだけでは、今の円安の流れを止めることができないことを1日の円相場が示唆した。
円相場の動向:10月31日と11月1日
ブルームバーグの為替データで筆者が作成
焦点は155円のブレイクアウト
一方、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加の利下げが意識されているにも関わらず、外為市場では米ドル高優勢の状況にある。このタイミングでアメリカ大統領選挙が米ドル高の要因となれば、今週のドル円(USD/JPY)の焦点は、新たな上値水準の見極めとなろう。
その候補として注目したいのが、155.00レベルである。IG為替レポートで注目しているフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準153.30レベルの突破は、ドル円が154円を目指すシグナルとなろう(下のチャート、黒矢印を参照)。このテクニカルラインのサポート転換、そして154円台への上昇はいずれも、ドル円が155.00レベルをトライするサインと捉えたい。
ドル円が155.00の水準を完全に突破した後、反落の局面で155円台を維持する局面が見られる場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。このケースでは、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準156.52レベルを視野に上昇幅が拡大する展開を想定しておきたい。
ドル円が156円台へ上昇するきっかけとなり得るのが、上で述べた「トリプルレッド」となろう。
ドル円のチャート:日足 2024年6月以降
出所:TradingView
だが、日足のMACDはデッドクロスへ転じるムードにある(上のチャート、赤矢印を参照)。一方、RSIは買われ過ぎの水準付近ですでにデッドクロスの状況にある。MACDが明確にデッドクロスへ転じる場合は、10月雇用統計の時を同じく不意打ちのようなドル円の下落を警戒したい。このケースでは10日線のみならず、21日線をも下方ブレイクする展開を想定しておきたい。
今週、ドル円が下落するきっかけに得るのが、後編で述べる米議会の「ねじれ」と米連邦公開市場委員会(FOMC)である。
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