新興市場(エマージング): ブラジル経済
この記事では、近年投資家の注目を集めているブラジル経済について説明いたします。
ブラジル経済の概要
ブラジルは国内総生産(GDP)世界第8位1まで急成長している南米最大の経済大国です。しかし、未だ「発展途上国」から「先進国」への成長段階にあります。よって、分類は新興市場(エマージング)になります。ブラジルは、BRICsとして知られる5つの新興市場グループの一国でもあります。BRICsにはロシア、インド、中国、南アフリカが含まれます。
多くのアナリストは、2010年までブラジル経済の成長を評価していました。しかしここ数年のブラジル経済は様々な問題に直面しています。例えば2016年8月、元大統領ディルマ・ルセフに対する有罪判決により国内政治が停滞した影響で現在でも低成長が続いています。また、ブラジルの有力企業複数社に対する制裁措置もブラジル経済にマイナスの影響を及ぼしました。
しかし近年では財政再建政策の実行、インフラ整備の促進そして外国投資の障壁を徐々に撤廃していることから多くの投資家は、長期的にブラジル経済は再び成長軌道に乗ると考えています。実際、同国GDPが2017年に1%増加して3兆3,400億ドルに達し、1人当たりGDPが1万5,600ドルとなり、投資家の期待が再び高まりつつあります。
裾野が広いブラジルの産業
ブラジルには様々な産業があります。以下は、同国の経済成長に貢献している産業です。
サービス産業:雇用者数が最も多く、GDPの約71%を占めています。ホスピタリティ、金融、小売、専門サービスがあります。
製造産業:2番目にブラジルのGDPに貢献している産業です。様々分野(航空機・化学品・食品・衣類等)があります。
農産業:GDPに占める割合はわずか5.6%ですが、ブラジル最大の輸出品目です。ブラジルは大豆、コーヒー、ココア、砂糖で世界有数の生産国です。また、石油の自給自足を行うことができる数少ない国の一つです。
ブラジル経済の歴史
1822年のポルトガルからの独立時には、ブラジルは世界で最も生産性の低い国の一つでした。しかし19世紀末のコーヒーブームによって同国経済は救われました。
1964年から1985年にかけては、社会的な不平等の解消よりも経済成長に注力していた独裁軍事政権に支配されていました。1985年の最初の民主政権の選挙で正しい方向に進んだものの、有効的な経済政策を打てずインフレ率は上昇を続け、1990年には2,950%に達しました。
政府は最終的に国営企業の民営化を行い、対外投資政策での投資の増加をもたらしました。しかし、汚職がはびこり社会的な不満が高まりました。
為替政策については、1994年にブラジルレアルは1レアル=1米ドルの為替レートで固定され、ブラジル中央銀行によりコントロールされました。1999年には、為替レートを変動相場制に移行し、為替レートは2レアル=1米ドルの価値に下落しました。レアルの価値が低下していく一方で、商品需要が高まっていた他のBRICS経済の発展を背景に、ブラジル経済は成長しました。
2008年に発生した世界金融危機の中でも、ブラジルは世界で最も急速に成長した国であり、2000年から2012年にかけて同国のGDP平均成長率は年間5%を記録しました。しかし、この成長サイクルはまもなく失速しました。商品価格が下落したことにより、2014年中頃には不況に陥りました。この不況は2年間続き、その結果150万人以上の雇用が失われ、政府への不満は高まりました。
ブラジル経済の未来
直近のブラジル経済は政治・経済の問題に直面していることで、2018年8月に通貨レアルは1米ドル=4レアルにまで下落しました。
一部のアナリストは、米ドル/レアルの価値がさらに下落することを予測しています。一方、ブラジル中央銀行と財務省は、市場の不安を払拭することに努めています。
国際通貨基金(IMF)が2018年と2019年の世界経済見通しを発表した時、同国の経済成長に対する投資家の信頼が高まりました。IMFは2018年のブラジルGDPが2.3%成長すると予測し、2019年にはさらに2.5%2成長すると指摘してきました。
CFDのような金融派生商品で取引すると、ブラジルの通貨や株式市場に簡単に参入できます。クリックひとつで売り買いのポジションを自在に保有することもできます。
ブラジルレアルの取引
海外の投資家がブラジルの資産に投資する場合、まず通貨レアルの動向に注目します。外国為替はペアで取引されます。ブラジルレアルで最も取引される通貨ペアは米ドル/ブラジルレアル(USD/BRL)となります。これは、1米ドルを購入するためにいくらのBRLが必要かを示しています。
ブラジル経済の将来について楽観的な見方が増え、通貨レアルが米ドルに対して相対的に上昇すると予測される場合、USD/BRLは下落する(米ドル安/レアル高になる)と多くの投資家は考えます。逆にブラジル経済成長に対して不透明感が高まる場合は、USD/BRLは上昇する(米ドル高/レアル安になる)との観測が高まります。
ブラジル株式市場の取引
ブラジルの株式市場「B3」には、約450社が上場されています。時価総額は7,710億8,000万ドルを超えています。その歴史は、サンパウロ証券取引所または略称の「Bovespa」として知られていた1890年にまでさかのぼります。以降、2度の名称変更を行っています。最初は2008年5月にBrazilian Mercantile and Futures Exchangeと合併してBM&FBOVESPAとなりました。そして2017年3月にCETIPと合併してB3になりました。この取引所は上述した「Bovespa」と呼ばれています。
投資家は、ボベスパ指数を通してブラジルの株式に投資します。ボベスパ指数に含まれる企業は、取引所で行われる取引量の約80%、さらにブラジル株式市場の時価総額の約70%を占めています。
また、個別企業の株式を買うことでポジションを持つことができます。Bovespaに上場している大企業には、Santander Brazil社やBanco Bradesco社のような金融会社をはじめ、航空宇宙コングロマリットのEmbraer社や飲料造酒会社のAmbev社などの大手製造企業が含まれます。
ブラジル資産に投資する際に意識すべきことは、政治情勢と社会情勢の変化です。これらに対する不透明感が高まると、通貨レアルや株式には下落圧力が高まる傾向が見られます。もちろん経済動向も重要です。これらの最新情報を常に把握し、リスク管理に最新の注意を払うことができれば、ブラジル投資で大きな利益を獲得するチャンスをつかむことができるでしょう。
1 2018年IMF
2 2018年IMF
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。