株式の空売り方法
空売りとは、下落を予測して最初に売りポジションを保有する取引手法です。利益獲得機会を増やすことができますが、リスクも伴います。この記事では空売りの利点とリスクについて解説します。
空売りとは
空売りとは、株式の下落を予測し、その予測に従って売りポジションを保有する取引手法のことです。
株式投資は、強気の見通しや成長の可能性が見込める株式を買うことが基本です。つまり最初に買いポジションを保有します。一方、空売りは、下落の可能性を考え、最初に売りポジションを保有します。
空売りを利用することで、買いポジションの下落に伴う損失のヘッジ手段となり得ます。また、下落局面を利用することで利益獲得のチャンスが広がります。
空売りの方法と例
空売りは株式市場や金融派生商品で行うことができます。
例えば、Rio Tintoの株式が現在1株あたり40ポンドで取引されているとしましょう。あなたはこの価格が高すぎると考えているとします。そこで株価の下落を予測し、空売りすることにします。思惑通り株価が下落しポジションを清算する場合は利益が発生します。一方、思惑とは逆に株価が上昇する場合は損失が発生します。
従来の空売り
従来の空売り方法は、空売り対象の株式を所有している投資家から株式を借り入れ、現在の株価で売りを仕掛けます。株価が下落する場合、投資家は低い株価で株式を買い戻し、その価格差から利益を得ることができます。
空売りは通常、大手の機関投資家が用いる手法です。しかし、一部の証券会社は個人投資家にも空売りを推奨しています。
もし、あなたが証券会社を通してRio Tintoの株式を100株借り入れ40ポンド(合計4000ポンド)で空売りを仕掛けるとしましょう。株式を借り入れる際に、手数料が発生する点に注意する必要があります。
株式は予想通り1株あたり38ポンドまで下落しました。そこであなたは3800ポンドで100株を買い戻しました。取引後、1株当たり200ポイントの差益を確保するため、借りた株式を証券会社に返還します。一連の取引の結果、200ポンドの利益(仲介手数料および配当金が差し引かれます)が確定しました。
一方、株価が下落するという予測が外れるとしましょう。Rio Tintoの株価が思惑とは逆に200ポイント上昇した場合は、損失の拡大を避けるために売りポジションを決済する必要があります。このケースでは、売却した価格より200ポイント高い価格で株式を購入しなければならず、その結果200ポンドの損失が確定します(借入費用および配当金は含まず)。
金融派生商品取引
金融派生商品は、原市場の価格を基準に価値が決まります。CFDなどの金融派生商品では、証券会社から株式を借りる必要がありません。実際に株式を保有するのではなく、差金決済で利益もしくは損失が確定します。
株式CFDを取引きする際は、手数料が発生します。手数料価格は取引価格と株数によって決まります。
- CFD取引は差金決済取引です。価格が下落すると予測する場合は、「売り」をクリックするだけでポジションを保有することができます。取引の際は、手数料が発生します。売りポジションを決済する場合は、「買い」をクリックします。
- CFD取引でRio Tintoの株式を空売りするとしましょう。現在のRio Tinto株は40ポンドで取引されています。40ポンド(0.10%の手数料を含む)で100株式CFDの売りポジションを保有する場合、4,000ポンドのエクスポージャーを保有することになります。CFDではレバレッジが活用されているので、取引価格の全額を入れる必要はありません。代わりに証拠金(20%の場合は800ポンド)が必要となります。
予測どおり株価が下落する場合は、その時点の価格(例えば35ポンド)で100株を購入します。反対売買をすることで売りのポジションは決済されます。始値と終値の差額を計算し、その差額から利益額が決まります。今回の場合、40ポンド – 35ポンド=5ポンド×100株=500ポンドの利益となります。CFD取引による利益は、エクスポージャー全額を使用して計算され、これにより利益を拡大することができます。
一方、予測に反して株価が45ポンドまで上昇する場合、その時点のプライスで100株を購入する必要があります。計算対象額がエクスポージャー全体に及ぶため、500ポンドの損失が確定します(4000ポンド–4500ポンド=500ポンドの損失)。
オプション
オプション取引でも空売りを行うことができます。具体的には、満期当日までに行使価格で現物株を売却する権利が付与される株式のプットオプションを購入することで空売りを仕掛けます。
Rio Tintoの株価が40ポンドの場合、40ポンドの行使価格で100株のプットオプションを購入することができます。この取引は、株価がどれほど下落しようとも1株あたり40ポンドの価格で100株を売却する権利を有することを意味します。したがって、株式が38ポンドまで下落した場合、100株を3800ポンドで購入し、プットオプションの権利を行使して4000ポンドで売却することができます。
株価が下落しない場合は、満期日当日までならばいつでもポジションを決済することができます。このケースでは、オプションを取得するために支払ったプレミアム料(手数料)が損失として認識されます。
オプションには有効期限が定められています。従来の空売りには、株式を貸出した人が株式のリコールを決断しない限り満期はありません。しかし、プットオプションで取引する場合、期限を意識することが重要です。
空売りのリスク
空売りにはいくつかのリスクが伴います。
- 無制限の損失:現物株の価格が上昇する場合、売りポジションの損失は理論的に無制限に拡大することになります。しかし、CFDで取引する場合は、保有ポジションに対してストップ(損切注文)を設定することができます。
- 「ショート・スクイーズ」:「ショート・スクイーズ」とは、売りポジションの急速な解消のことを言います。マーケットが上昇し始めると、空売り筋は損失を限定するため保有している売りポジションを急いで決済します(買戻します)。売りポジションの急速な解消は価格の高騰を招き、さらに多くの空売り筋がポジションを決済しようとします。
- 空売り規制銘柄:空売りのために借りようとした株式を貸出してくれる人を見つけることさえできないケースがあります。これは空売り規制銘柄として知られています。
投資家にとっての空売りリスクとは別に、株式市場全体に与えるリスクがあります。多くの市場参加者が空売りする場合、対象の株式や株式市場全体に下落圧力が急激に高まる可能性があります。このため、過去に空売りを禁止されたことがあります。例えば、2008年の金融危機時は、特定の銀行や金融機関の株式を空売りすることが禁止されていました。
まとめ
- 空売りとは、株式を借入れて市場で売却し、思惑通り下落した後に株式を買い戻す取引のことです
- 空売りは、ヘッジや投機目的で活用することができます
- 従来の空売り方法では、通常証券会社を介して株式の借入れを行います
- 空売りの方法にはCFD取引、オプション取引が含まれます
空売りには無制限の損失拡大、ショート・スクイーズそして空売り規制銘柄などのリスクが伴います
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