トレーダーなら知っておくべき6つのボラティリティ指標
市場は目まぐるしく変化します。そうした市場の変化に対応するために考案されたのが、ボラティリティ指標です。ここでは、代表的な6つのボラティリティ指標とそれぞれの特徴について解説します。
ボラティリティ指標とは
ボラティリティとは、価格が変動する度合い(変動率)を意味します。ボラティリティ指標は、市場の変動率を測るために開発されたテクニカル指標の一種です。この指標を使えば、一定の期間における市場や銘柄の変動率の動向を把握することができます。
具体的には、ボラティリティ指標が上昇している場合は、価格の変動率が拡大していることを意味します。逆にボラティリティ指標が低下している場合は、価格の変動率が縮小していることを意味します。
ボラティリティの動向を重視するトレーダーは、ボラティリティ指標を見ながら、価格の変動リスクを客観的に把握しようとします。
ボラティリティを計算する方法
ボラティリティはどのような方法で計算されるのでしょうか?
金融市場では、一般的に「標準偏差」を使ってボラティリティを測定します。標準偏差とは、価格がある一定期間の平均からどの程度かい離しているのか?を具体的な数値で測る指標のことです。
標準偏差の計算式は以下となります。
ボラティリティの判別方法は、2つあります。
- 低ボラティリティ - 価格の変動が小さく、市場が安定した状況にある
- 高ボラティリティ - 価格の変動が大きく、市場が不安定な状況にある
ボラティリティの状況が違えば、取るべき戦略も違ってきます。例えば、ボラティリティが拡大する状況では、ブレイクアウト戦略やスキャルピングが効果的な取引戦略となります。
政治や経済情勢、または要人の発言や経済指標など色々な要因が絡み合って、市場は上下に変動します。このため、ボラティリティも色々な要因で拡大したり縮小したりします。以下で解説する代表的な6つのテクニカル指標は、いずれも多くのトレーダーがボラティリティを測る際に使う代表的なテクニカル指標です。
知っておくべき6つのボラティリティ指標
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは、ボラティリティ指標の中でも多くのトレーダーが好んで使う指標です。単純移動平均線(Simple Moving Average:SMA)を中心とし、アッパーバンド(上限)とローワーバンド(下限)が描かれます。各バンドは市場のSMAからの2標準偏差(2Σ)を表しています。ローワーバンドとアッパーバンドはそれぞれサポートとレジスタンスの水準と考えます。
IG証券のチャートを使えば、簡単にボリンジャーバンドを使うことができます。
ボリンジャーバンドのメリットとデメリット
メリット
・視覚的にわかりやすい
・パラメーターを簡単に設定できる
・ボラティリティの動向を簡単に把握できる
・相場の過熱感を見る時に使われるオシレーター系指標(MACDやRSI)と組み合わせると、より売買のタイミングや水準を絞り込むことができる
デメリット
・ボリンジャーバンドは遅行指標なので、将来の正確な動きを予測することができない
・ボリンジャーバンドのみでは相場の状況を正確に判断できない
・考案者のジョン・ボリンジャー氏は、ボリンジャーバンドは他のテクニカル分析ツールと併用する必要があると述べている。
ATR(アベレージトゥルーレンジ)
アベレージトゥルーレンジ(Average True Range:ATR)指標は、一定期間におけるボラティリティ(変動率)を測る再に使われるテクニカル指標です。資産の価格変動の明確さに応じて上昇または下落します。ATRが上昇する場合は、市場のボラティリティが拡大していることを意味します。一方、ATR低下する場合は、市場のボラティリティが縮小していることを意味します。
ATRの計算方法
ATRで重要なのは、「トゥルー・レンジ(真の値幅)」です。以下3つの計算式のうちで最大の値幅となるのが、トゥルーレンジとなります。
• 当日の高値ー当日の安値
• 当日の高値ー前日の終値
• 当日の安値ー前日の終値
ATRのメリットとデメリット
メリット
ATRは、一定期間における市場や銘柄の平均的なボラティリティの動向を視覚的に簡単に把握できます。
デメリット
ATRのみでボラティリティの動向を正確に把握することは困難です。ボリンジャーバンドやケルトナー・チャネルなど他のボラティリティ指標と併用してより詳しく分析する必要があります。
VIX(ボラティリティ指数)
VIX指数(ボラティリティ指数)はVolatility Indexの略で、シカゴオプション取引所がS&P500種株価指数のオプション取引の値動きをもとに算出・公表しています。
VIX指数は、市場が今後30日の間にどのような変動を織り込んでいるのかを数値で示しています。一般的に、VIX指数の値が高いほど、投資家の不安心理が高まっていると考えます。一方、VIX指数の値が低いほど、投資家の心理が安定していると考えます。
米国の株価指数(インデックス)を取引する時は、VIX指数の動きや水準がひとつの参考指標となります。また、IG証券では「ボラティリティ指数」という銘柄名でVIX指数のお取引ができます。
- VIXの買い取引
政治や経済、または金融市場で何らかのリスクイベントが発生する場合、投資家の不安心理が高まります。これらの状況が織り込まれるとVIX指数は上昇する傾向にあります。このようなケースでは、VIX指数の買いポジション(ロングポジション)を取ることで利益獲得のチャンスを狙います。
リスクイベントを受けて予想どおりにVIX指数が上昇する場合は、買いポジションの利益を確定する売り決済を考えます。VIX指数の動きは早いので、短期売買の方が利益を獲得する可能性が高まります。
- VIXの売り取引
市場の変動幅を拡大させるリスクイベントがない間は株式市場が上昇する傾向にあります。また、投資家の心理も安定します。この状況が織り込まれるとVIX指数は低下する傾向にあります。このケースでは、VIX指数の売りポジション(ショートポジション)を取ることで利益獲得のチャンスを狙います。
株式市場が上昇の局面にある時にVIX指数が低下する場合は、売りポジションの利益を確定する買い決済を考えます。VIX指数の動きは早いので、短期売買の方が利益を獲得する可能性が高まります。
ケルトナーチャネル
ケルトナーチャネルは、チェスター・W・ケルトナー(Chester W. Keltner)氏が開発した市場のボラティリティ(変動率)を測るためのテクニカル指標です。
ケルトナーチャネルは、ボリンジャーバンドのように3本のラインで構成されています。
ケルトナーチャネルの見方は簡単です。株価や為替レートが上限のラインを上抜ける場合は、上昇トレンドが続くシグナルと判断します。このケースでは中間線をサポートラインと想定し、上昇トレンドに追随する取引(順張りの取引)を狙います。
逆に、株価や為替レートが下限のラインを下抜ける場合は、下落トレンドが続くシグナルと判断します。このケースでは中間線をレジスタンスラインと想定し、下落トレンドに追随する取引(順張りの取引)を狙います。
なお、サポートラインとは相場を下支えするラインのことです。一方、レジスタンスラインとは、相場の上昇を止めるラインのことです。
IG証券の取引システムでは、ケルトナーチャネルを提供しています。クリックするだけで自動的にケルトナーチャネルがチャート上に描画されます。
ドンチャンチャネル
ドンチャンチャネルは、市場のボラティリティを測定するために用いられるテクニカル指標のひとつです。ドンチャンチャネルは、ボリンジャーバンドと同じく上限(アッパーバンド)、下限(アッパーバンド)、中心線(ミドルライン)で構成されています。
ドンチャンチャネルの見方は簡単です。ボラティリティが高い時(変動率が大きい時)はバンドの幅が広がります。一方、ボラティリティが低い時(変動率が小さいかまたは安定している時)は、バンドの幅が狭くなります。価格が上下いずれかのバンドに到達または突破する場合は、相場が買われ過ぎまたは売られ過ぎの状態と考えます。
下の画像は、ローソク足にドンチャンチャネルをプロットしたチャートです。上限(アッパーバンド)と下限(ローワーバンド)は、一定期間の最高値と最安値を表します。中心線(ミドルライン)は、上限と下限の平均を表します。
IG証券の取引システムでは、クリックするだけで簡単にドンチャンチャネルをチャート上に描画することができます。
チャイキンボラティリティ
チャイキンボラティリティは、一定期間の価格の高値と安値によってボラティリティを測定するテクニカル指標です。価格の高低差が広がるほど、チャイキンボラティリティは高くなります。一方、価格の高低差が狭まる場合は、チャイキンボラティリティは低くなります。
チャイキンボラティリティの見方は簡単です。チャイキンボラティリティが短期間で上昇する場合は、相場の底打ちとその後の上昇を想定します。一方、チャイキンボラティリティが長期にわたって下降する場合は相場が天井を打ち、その後下落トレンドへ転じることを予想します。
チャイキンボラティリティは移動平均線やエンベロープといったテクニカル分析指標と組み合わせて使うと、より正確に市場の動向を把握することができます。
なお、チャイキンボラティリティの計算方法は以下となります。
チャイキンボラティリティの計算方法
高低平均=(高値ー安値)のEMA
ボラティリティ=(高低平均ーn期間前の高低平均)/n期間前の高低平均×100
ボラティリティ指標ベスト6のまとめ
• トレーダーやアナリストは、ボラティリティ指標で市場のボラティリティ(変動率)を把握します
• 標準偏差はボラティリティを測るための標準的な指標です
• 市場でリスクイベントが発生している時は、ボラティリティが拡大する傾向にあります
• 一方、市場が安定している時または株式などのリスク資産価格が上昇している時は、ボラティリティが低下する傾向にあります
• IG証券ではCFDを使ってボラティリティ指数(VIX指数)を取引いただくことができます
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