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ADXインジケーターとは?見方や使い方、DMIの計算方法、注意点を解説

ADXインジケーター(平均方向性指数)は、主に潜在的なトレンドの強さを測定する手段として使用されるテクニカル指標の一つです。 FX取引で重要なことは、トレンドの強さを見極めることです。もちろんその強さを簡単に判断することは難しいでしょう。ADXインジケーターを用いることで、現在のトレンドの強さを視覚的に予測できます。 本記事では、ADXインジケーターの概要や計算方法、見方と使い方、注意点を解説します。

画像: Bloomberg

ADXインジケーターとは

ADXインジケーターとは、トレンドの強さを視覚的に確認できる代表的なモメンタム指標です。「Average Directional Movement Index」の略称で、平均方向性指数と訳されます。一般的にマイナス/プラスのDMI(方向性指数)と組み合わせることで、上昇/下落のトレンドを把握することに用いられます。
ADXインジケーターのパラメーターは、0から100までの数値で表示されます。通常、その値が25〜50の範囲では、トレンドの勢いが強く、かつそれが継続すると判断します。さらに、50〜75、75〜100の範囲に移るにつれて、トレンドの強さが大きくなっていると判断できます。
一方で、ADXインジケーターの値が25以下であるときは、市場は保ち合い相場、つまりトレンドがはっきりしない状態を示しています。価格が大きく動いていないことを意味し、売り手と買い手が均衡状態にあると捉えられます。

ADXインジケーターを利用する目的とは

ADXインジケーターを利用する目的は、トレンドの勢いを判断することです。トレンドフォローを主体とした取引は、現在でも多くのトレーダーの支持を得ています。この取引方法で重要なことは、トレンドの転換を見極めることです。多くのトレーダーはテクニカル指標でこれを見極めようとしますが、すべてのテクニカル的なブレイクアウトが、トレンドの転換を示すわけではありません。

ある調査によれば、実際に明確なトレンドが発生する確率は30%未満であり、それ以外はレンジ相場が続くことが確認されています。レンジ相場は、上昇/下落のトレンドから大きな利益を得ようとするトレーダーにとっては魅力的な相場環境とは言えません。そこで、ADXインジケーターを使ってトレンドの強さを確認し、明確な上昇/下落のトレンドが発生する局面を見極めます。これに成功すれば、利益獲得の機会が増えるはずです。
ADXインジケーターだけでなく、他にも有用な分析ツールを理解することが大切です。詳しくは、IGアカデミーの「テクニカル分析 」を参考にしてください。

ADXインジケーターの見方と使い方とは

ADXインジケーターは、通常14日間の価格レンジをベースとした移動平均に基づきます。期間は、相場の状況に応じて変更することが可能です。なお、ADXインジケーターはトレンドの勢いを確認するためのテクニカル分析手法です。トレンド予測のための指標ではないことを覚えておいてください。
例えば以下のチャートは、2017年末から2018年5月末までのDAX(ドイツ 30種株価指数 ※現在はドイツ 40種株価指数)を示しており、1月と2月は価格が急落しています。一方、ADXインジケーターの数値は上昇しています。これは、下落トレンドが力強いことを示しています。

対照的に3月の上昇局面では、ADXインジケーターの数値が下降しています。これは、上昇トレンドが弱いことを示しています。このように、ADXインジケーターはトレンドを予測するのではなく、「トレンドの強さを測る指標である」という基本を理解することが大切です。

DMIとの併用

ADXインジケーターは、DMIと併用できます。DMIとは「Directional Movement Index」の略称で、方向性指数のことです。DMIは「+DI」、「−DI」のラインを用いて、ある期間における値動きの方向性を数値で表します。

+DIとは上昇トレンドの強さを具体的に示すもので、その数値が大きいほど上昇トレンドが強いと判断できます。また、価格が下落トレンドにあるとき、+DIは20以下で推移する傾向にあります。価格が反発して上昇トレンドに転換すると、+DIもそれに応じて上昇します。

−DIは、下落トレンドの強さを示す指標です。価格が下落するとき、−DIは上昇します。特に、−DIラインが20~30を超えてくるタイミングが重要です。下落トレンドに発展する可能性が高いと判断される水準で、強い売り圧力が市場に存在することを示唆します。

ADXインジケーターとDMIの動きにもとづくと、下表のように売買サインの目安を得られます。

サイン +DI -DI ADXインジケーター
買い 上昇 下落 上昇
売り 下落 上昇 上昇

「+DIが−DIを上回り、その上でADXが上昇している場合」は買い、「−DIが+DIを上回り、その上でADXが上昇している場合」は売りと判断できます。

+DI・−DIの位置によってトレンドを判断する

最初のチャートではADXインジケーターをわかりやすく説明するため、プラス/マイナスで示されるDMIを省きました。一方、以下のチャートではADXインジケーターとDMIが表示されています。

+DIが−DIより上にある場合、市場は上昇基調が強い状況を示し、トレーダーは買いポジションを検討します。逆に、−DIが+DIより上に存在する場合、下落基調が強い状況となり、売りポジションを検討することが多いでしょう。
さらに、+DIと−DIがクロスする動きには注意が必要です。この動きが現れた場合、上昇基調と下降基調の強さが入れ替わっており、トレンド転換の可能性が高まるとされています。

ただし、トレンドの強さを測る際は、ほとんどのトレーダーはADXを重視する傾向があります。上記の例では、トレーダーが重要視するのはADXではなく、実勢相場の価格であることを示しています。いかなるテクニカル指標も、常に相場の状況を正しく反映するわけではありません。トレーダーにとって重要なのは、市場における最重要の条件を考慮して予測することです。

ダイバージェンスで判断する

ダイバージェンス(価格と指標の逆行)で判断することも選択肢の1つです。+DIと−DIが示すトレンドの強弱と、価格の動きに注目してください。

例えば、高値を更新する動きを見せているのにもかかわらず、+DIやADXインジケーターが下落している場合、上昇トレンドの強さが弱まっていることを示しています。つまり、上昇トレンドがピークに達している可能性があると考えることができます。


ADXインジケーターの変化があまり見られないチャート例

以下は、ナスダック100指数(米国テク株100)のチャートです。

ナスダック100指数は、2018年に入り8ヶ月の間に最高値を更新し続けてきました。しかし、ADXの動向を確認すると、8月末に25を上回る程度の上昇にとどまっています。株価の強気相場が続いたほとんどの期間で、ADXは多少上下に変動していたにすぎないことがわかります。

つまり、ADXインジケーターは相場の動向を正しく反映していなかったと言えます。そのため、ADXインジケーターのみでトレンドの強さを測ろうとする場合、トレーダーは相場の動向を見誤る可能性があることに注意が必要です。

市場を予測するためには、チャート分析だけでなくファンダメンタルズ分析にも注目しなければなりません。詳しくは、IGアカデミーの「ファンダメンタルズ分析 」をご覧ください。

ADXインジケーターとDMIの計算方法

ここでは、ADXインジケーターとDMIの計算方法を解説します。
ADXインジケーターの数値を求めるためには、まず+DIと−DIの数値を求めなければなりません。+DMと−DMの計算方法と満たすべき条件は、以下のとおりです。

計算方法 条件
+DM=当日の高値−前日の高値
−DM=前日の安値−当日の安値
+DM<0の場合:+DM=0
−DM<0の場合:−DM=0
+DM>−DMの場合:−DM=0
−DM>+DMの場合:+DM=0

次に、1日の最大の値動きであるTR(トゥルー・レンジ)を計算します。なお、以下3つのうち最大値になるものを採用します。

・当日の高値−前日の終値
・前日の終値−当日の安値
・当日の高値−当日の安値

続いて、+DIと−DIを計算します。

・+DI:(N日間の+DM合計÷N日間のTRの合計)×100

・−DI:(N日間の−DM合計÷N日間のTRの合計)×100

通常、Nの期間は「14」日間にデフォルトとして設定されています。
最後に、以下の計算式でADXの値を求めます。

・DX=「(+DI)−(−DI)」÷「(+DI)+(−DI)」×100

そしてADXインジケーターの値は、DXのN日間平均で算出されます。

ADXインジケーターと他のテクニカル指標を組み合わせた取引方法

ここでは、ADXインジケーターと他のテクニカル指標を組み合わせる戦略を紹介します。

移動平均線

移動平均線とADXインジケーターの組み合わせは、市場のトレンドを判断する上で非常に有効な手法です。ADXインジケーターが25以上を示す場合に、移動平均線がゴールデンクロスやデッドクロスとなれば、トレンドの強いサインを示している可能性があります。


RSI(相対力指数)

RSIとは、市場が買われすぎか売られすぎかを示す指標のことです。RSIが70〜80以上は「買われすぎ」、20〜30以下は「売られすぎ」であるとされており、これらの数値を超えると反転する可能性が高まります。一方、ADXインジケーターはトレンドの強さを測定します。したがって、RSIとADXインジケーターを併用すると、市場が反転するタイミングを予測する精度が向上します。


ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドは、相場のボラティリティにもとづいて価格の上限と下限を描くテクニカル指標です。このツールとADXインジケーターを組み合わせて利用することで、より確実なトレンド把握が可能となります。

まず、価格がボリンジャーバンドの上限バンドに触れ、同時にADXインジケーターが25以上を示している場合を考えてみます。この状況では、強い上昇トレンドが継続していることを示唆しており、買いポジションを維持したり、新たに買い注文を出したりする戦略が有効であると言えます。
一方、価格が下限バンドに触れ、さらにADXインジケーターが25を超えている場合は、強い下降トレンドが形成されつつある可能性が高まります。売りポジションを維持したり、新たに売り注文を出したりする戦略が有効です。

このように、ボリンジャーバンドの上限や下限に価格が接近・触れる動きと、ADXインジケーターの値を同時にチェックすることで、より信頼性の高いトレンドの予測やエントリーポイントの決定が可能となります。


MACD(移動平均収束拡散法)

MACDとADXインジケーターの組み合わせの場合、見極めるべきポイントが2つあります。1つ目は、MACDのラインがシグナルラインを上回った(クロスした)タイミングです。この時点を強気のシグナルと捉えます。反対に、MACDのラインがシグナルラインを下回った(クロスした)タイミングでは弱気のシグナルと判断します。

2つ目のポイントは、ADXインジケーターが25以上を示しているかどうかです。特にMACDのラインとシグナルラインがクロスした直後にADXが25以上を示した場合、トレンドの強さとともに方向性も示されているため、信頼性の高いエントリーポイントを見つけられます。

ADXインジケーターを利用する際の注意点

最後に、ADXインジケーターを利用する際の注意点を紹介します。

ADXインジケーターのみでトレンドを判断しない

トレンドは、トレーダーが考えるよりもはるかに長く続く場合があります。取引でよく見られる失敗は、保有ポジションを早々と清算し、その結果、潜在的な利益を失うことです。「ADXインジケーターの変化があまり見られないチャート例」で紹介したナスダック100指数は、そのよい例です。それまで強気スタンスだったトレーダーがADXインジケーターの下降を重視した場合、実際の相場動向を無視し、ポジションを早々と清算しようとする誘惑に駆られた可能性があります。
ADXインジケーターはトレンドの強さを測る際に役立ちます。しかし、すべてのテクニカル分析と同じく、確実に相場の動向を反映するとは限りません。ADXインジケーターの1つのみでトレンドを判断する場合には、他のテクニカル指標と組み合わせられないか検討することが大切です。

レンジ相場ではトレンドを見極めづらい

価格が一定の範囲内で上下に動くレンジ相場では、+DIラインと−DIラインが頻繁に交差することがあります。上昇基調と下落基調が常に入れ替わることを示しており、一定の方向性を持った強いトレンドが存在しないことを表しています。
このような状況では、各トレンドの発生と終了を正確に捉えることは難しいでしょう。したがって、レンジ相場においてはADXインジケーターのみに頼るのではなく、他のテクニカル指標と組み合わせることで、より正確に市場を分析することが重要となります。
また、FX取引ではリスク管理も重要です。詳しくは、IGアカデミーの「リスクとリターンを理解する 」を参考にしてください。

まとめ

本記事では、ADXインジケーターの見方や使い方、チャート例、他のテクニカル指標との組み合わせ方を解説しました。
ADXインジケーターは、トレンドの強さを視覚的に判断するために有用なツールです。ただし、トレンドを予測するものではないことには注意が必要です。明確なエントリー(新規のポジション保有)とエグジット(ポジション清算)のポイントを予測するためには、RSIやMACDなど他の分析ツールと併用することが選択肢の1つと言えます。


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