ナスダック100は7日続伸で50日線を突破、8月PMIとジャクソンホール会議でのパウエル講演に注目
先週の主要な米株価指数の上昇率は、23年10月30日〜11月3日の週以来の大きさとなった。主力の半導体株やハイテク株の買いを受けナスダック100は7日続伸。上昇率は5.38%と、主要指数のなかで最も上昇した。今週は8月のPMI速報値やジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演が米国株の変動要因となろう。ナスダック100の見通しは?
記事のポイント
・主力の半導体株やハイテク株の買戻しでナスダック100が7日続伸した
・50日線を完全に突破すれば、さらなる上昇期待が高まろう
・今週の注目指標は8月のPMI速報値となろう
・ジャクソンホール会議でのパウエル講演も材料視される可能性がある
騰勢強めるナスダック100
先週のアメリカ株式市場でダウ平均(DJI)は2.94%上昇した(上げ幅は1,162ドル)。多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500種株価指数(SPX、以下ではS&P500)の上昇率は3.93%(上げ幅は210ポイント)だった。いずれも上昇率は、2023年10月30日〜11月3日の週以来の大きさだった。
上記指数のパフォーマンスを上回ったのが、ナスダックだった。総合指数と100指数は先週7連騰となった。特にナスダック100(NDX)の上昇率は5.38%と、主要指数の中で最も高かった(上げ幅は995ポイント)。こちらも2023年10月30日〜11月3日(6.48%高)以来の大きさとなった。
アメリカ株価指数のパフォーマンス:8月12~16日の週
主力株の買い、景気懸念の後退
ナスダック指数の上昇をけん引したのが、主力の半導体株とハイテク株の買いである。S&P500(SPX)のセクター別パフォーマンスを確認すると、先週はすべてのセクターが上昇した。なかでも半導体株が属する情報技術セクターが前週比末で7.51%上昇し、株高をけん引した。
また、一般消費財セクターや金融セクターなど、景気に敏感なセクターも大きく上昇した。この動きは、アメリカ経済の先行きに対する過度の懸念が後退していることを示唆している。
S&P500 セクター別のパフォーマンス:8月12~16日の週
今週の注目材料
8月の購買担当者景気指数(PMI)速報値
現在の米国株は、経済指標にらみの状況にある。これは見方を変えれば、「景気の動向」が新たなテーマとして浮上しつつあることを示唆している。ゆえに、今後発表される経済指標がその懸念を想起させる場合は、今の上昇トレンドに冷や水を浴びせることになるだろう。
その経済指標で今週注目したいのが、22日の8月購買担当者景気指数(PMI)速報値である。8月の景気懸念を高めた要因も、それが後退した要因も7月のISM製造業・非製造業景気指数だった。この事実を考えるならば、近年企業の活動や景況感を考えるうえで重要度が増しているPMI速報値も、米国株の変動要因となる可能性があろう。
アメリカ労働者の約8割はサービス業に従事している。ゆえに、8月のPMI速報値でもサービス業の動向により注目したい。8月の市場予想は54.0と、前月の55.0から低下する見通しにある。サービス業とトレンドが一致している総合PMIも53.3と、前月の54.3から低下することが予想されている。
8月のPMI速報値が予想以上に低下する場合は、急速に進行してきた株高の調整要因(株安要因)として警戒したい。
一方、サービス業や総合のPMI速報値が予想以上の強さを見せる場合は、景気懸念をさらに後退させるだろう。このケースでは、米長期金利の上昇が予想される。長期金利の上昇は株安の要因になり得る。
しかし現在は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降パウエルFRBの金融政策が緩和サイクルへ転じる可能性が意識されている。また8月6日以降、米長期金利の上昇局面でも米国株は強気地合いを維持した。これらの動向を考えるならば、強いPMIは株高の要因になると予想する。
米国 購買担当者景気指数(PMI):23年8月以降
新規失業保険申請件数にも注目
8月のPMI速報値以外では、週間の新規失業保険申請件数も米国株の変動要因となる可能性がある。4週移動平均は再び低下基調へ転じ、労働市場の堅調さを示唆している。この状況が続く場合は、景気懸念のさらなる後退と米株高を想定しておきたい。
一方、労働市場の軟化が示される場合は、急速に進行した株高の調整(反落)要因となる展開を警戒しておきたい。
米国 新規失業保険申請件数:23年8月以降
ジャクソンホール会議でのパウエル講演
今週22日から24日にかけて、ワイオミング州ジャクソンホールで年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催される。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、23日に経済見通しについて講演する。
パウエルFRB議長はすでに9月利下げの可能性について言及している。短期金融市場では、9月FOMCでの0.25ポイント利下げを完全に織り込む状況にある。
利下げが有力視されているとなれば、9月FOMCの焦点は利下げの幅にある。上で述べた8月のPMI速報値や新規失業保険申請件数の内容次第ではあるが、パウエルFRB議長が大幅(0.5ポイント)利下げに否定的な見解を示す場合は、調整の株安要因となる可能性がある。
一方、パウエルFRB議長がインフレの抑制に自信を示すだけでなく、労働市場の冷え込みが今後進行することで景気後退に備える必要性に言及する場合は、0.5ポイント利下げに対する期待が再び高まる可能性がある。
大幅利下げの期待は米株のサポート要因である。しかし、景気の動向がテーマとして浮上していることを考えるならば、”ハト派のパウエル会見”が株高の要因となるかどうかは、上で述べた経済指標の内容次第となろう。
なお、CMEのFedWatch ツールによれば、現時点での0.5ポイント利下げの確率は20%台まで低下している。しかしこの思惑は、パウエルFRB議長をはじめとした高官たちの発言と今後発表される経済指標で変動するだろう。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率
ナスダック100の見通しとチャート分析
50日線の攻防とさらなる上値のトライ
ナスダック100(NDX)はテクニカルの面で、さらなる上値のトライを意識する状況にある。日足チャートで直近のトレンドを確認すると、5日線にサポートされ上値の抵抗線を完全に突破ている(下のチャート、緑ラインを参照)。
そして15日以降、50日線をローソク足の実体ベースでトライする状況にある(下のチャート、青矢印を参照)。RSIとMACDもナスダック100の強気モメンタムに勢いが出ていることを示唆している(下のチャート、緑矢印を参照)。
ナスダック100のオプション価格で算出されるボラティリティ指数「VXN」が19ポイント台へ急低下している状況も考えるならば、今週のナスダック100は50日線と16日の高値19,561を突破し、フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準19,741を視野に上昇幅の拡大を意識したい。
ナスダック100が後者の19,741レベルをも突破する場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準19,956の攻防を想定しておきたい。このテクニカルラインは、7月23日に相場の反発を止めた経緯がある。この時の高値19,904の突破は、19,956レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
ナスダック100:日足 今年4月以降
出所:TradingView
反落の局面では19,000の維持が焦点に
1時間足のストキャスティクスとRSIは、買われ過ぎの水準でデッドクロスへ転じている(下の1時間足チャート、赤矢印を参照)。ストキャスティクスに続きRSIでもサポートラインを下方ブレイクする場合は、短期の調整売りを想定しておきたい。
ナスダック100(NDX)の調整相場(反落)が続く場合は、19,000ポイントを下限にフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。
23.6%の水準19,363と38.2%の水準19,241は相場をサポートした経緯がある。半値戻しの水準19,142はサポートラインへ転換する可能性がある。また、すぐ下の水準19,110台には10日線が上昇している(下のチャート、緑ラインを参照)。
ナスダック100が10日線を下方ブレイクする場合は、19,000レベルのトライを想定しておきたい。テクニカルの面でこの水準は、リトレースメント61.8%の水準(19,043)にあたる。
ナスダック100:1時間足 今年4月以降
出所:TradingView
ナスダック100のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・19,956:リトレースメント76.4%
・19,904:7月23日高値
・19,741:エクステンション61.8%
・19,561:8月16日高値
下値の水準(サポート)
・19,363:リトレースメント23.6%、
・19,241:リトレースメント38.2%
・19,142:半値戻し
・19,113:5日線(8/16時点)
・19,000~43:サポート水準、リトレースメント61.8%
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。