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トランプトレードで騰勢強めるNYダウ、ネットフリックス決算で下落、ナスダックの見通し

今週に入りアメリカの株式市場は、大統領選挙でのトランプ氏勝利を見込んだ「トランプトレード」へシフトするムードにある。割高感のあるグロース株から出遅れ感のあるバリュー株に資金がシフトし、ダウ平均は騰勢を強めている。一方、これまで株高をけん引してきたグロース株は失速。ナスダック100には下落のムードが漂う。今日も弱気相場が続く場合、注目しておきたい下値の水準は?

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この記事のポイント

・アメリカの株式市場は「トランプトレード」のムードが高まる状況に
・グロース株が失速する一方、バリュー株に復活の兆し
・騰勢を強めるダウ平均、下落のムードが漂うナスダック100
・ナスダック100、目先の展望と注目のチャート水準


ナスダック100、注目のチャート水準

レジスタンスの水準

・20,026:21日線
・20,000:レジスタンスの水準
・19,947:7月18日の高値

サポートの水準

・19,575:7月18日の安値
・19,440:半値戻し
・19,347:全戻し
・19,292:50日線


トランプトレードとバリュー株復活の兆し

グロース株が失速し、バリュー株に復活の兆し

7月13日(日本時間14日午前)、アメリカのトランプ前大統領が選挙集会の演説中に銃撃された。

この事件を契機に、アメリカの株式市場のムードが一変しつつある。それは、これまで株高のけん引役だったマグニフィセントセブンや半導体株に代表されるグロース株が売られ、相対的に割安感のあるバリュー株へ資金がシフトしていることである。

この点を示唆しているのが、グロース/バリュー比である(下のチャート、赤ラインを参照)。グロース株の売りとバリュー株の買いが重なり、グロース/バリュー比が急速に低下している(バリュー株優勢となっている)ことが分かる。

S&P500グロース指数とバリュー指数:日足 年初来

S&P500グロース指数とバリュー指数:日足 年初来 ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 上段のラインチャート:2023年末を100として指数化


高まる「トランプトレード」のムード

バリュー株のなかでも、特にエネルギー株と金融株に資金がシフトする状況が見られる。

この点についてS&P500種株価指数(SPX、以下S&P500)のセクター別パフォーマンスで確認すると、15日以降、これら2つのセクターの上昇幅が拡大していることが分かる(下のチャート、緑矢印を参照)。

S&P500セクター別パフォーマンス:7月15日以降

S&P500セクター別パフォーマンス:7月15日以降 ブルームバーグのデータで筆者が作成


トランプ前政権では金融規制の緩和の他、エネルギー産業界(石油やガス)に対して連邦所有地のリースの許可や掘削に関する規制の緩和を実施した。今年11月のアメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利すれば、これらの規制緩和を推進していくことが予想される。今週の金融株とエネルギー株は、早くもこの点を意識した「トランプトレード」と考えることができる。

対照的に、アルファベット(GOOGL)が属するコミュニケーション・サービスとエヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)などが属する情報技術の両セクターでは下落幅が拡大している(上のチャート、赤矢印を参照)。

現在、支持率ではトランプ氏優勢の状況にある。一方、民主党内ではバイデン米大統領の撤退を要求する声が強まり、一枚岩ではない。

ゆえに今のアメリカ株は、トランプトレードが続く展開を意識する局面にある。


NYダウとナスダック、真逆の展開に

騰勢を強めるNYダウ

「トランプトレード」は、アメリカ株価指数のトレンドにも大きな影響を与えている。この点を示唆しているのが、NYダウ(DJI)である。

直近のトレンドを日足チャートで確認すると、7月に入り急速に上昇幅が拡大していることが分かる。特に15日以降、上昇幅が拡大している状況は、上で述べた「トランプトレード」によるバリュー株復活の影響の大きさを物語っている。

18日の市場では利益確定の売りにおされ、533ドル安(1.29%安)の展開となった。しかし、取引時間中に高値4万1,376ドルまで上昇する局面が見られた。

地合いの強さを考えるならば、NYダウは今日以降も上値トライを意識したい。一方、反落の局面では押し目買いを狙いたい。

調整相場のナスダック100

対照的にナスダック100(NDX)には、下落のムードが漂う。心理的節目の20,000ポイントをあっさりと下方ブレイクし、昨日は安値19,575レベルまで下落する局面が見られた。直近2日間の下落は、「トランプトレード」による資金シフト(ローテーション)の影響がいかに大きいのかを物語っている。

テクニカルの面では21日線がレジスタンスとなり、かつ低下のトレンドへ転じる兆しがある。今日以降も「トランプトレード」が続く場合は、50日線のトライが視野に入ろう。詳細な見通しは下で述べる。

ダウ平均とナスダック100:日足 今年6月以降

出所:TradingView


ネットフリックス決算で下落

ネットフリックス(NFLX)の株価動向も、グロース株の売りを加速させる要因になり得る。

ネットフリックスは18日、第2四半期(2Q)の決算を発表した。1株利益(EPS)は4.88ドル、売上高は95億5931万ドルで、それぞれコンセンサス(4.74ドル、95億3000万ドル)を上回り、5四半期連続で増収増益となった。また、広告付きプランも好調で、かつ有料会員の純増数も805万人増と、コンセンサスの490万人増を大きく上回った。

しかしガイダンスでは、第3四半期(3Q)売上高予想が97億3000万ドルと、コンセンサスの98億3000万ドルにとどかなかった。これが材料視され、ネットフリックスの株価は時間外で下落した。

「トランプトレード」でグロース株に売り圧力が強まるなかでのネットフリックス下落は、今日のグロース株の重石となる要因である。

なお、ネットフリックスは現在50日線(18日時点651ドル)を完全に下方ブレイクする状況にある(下のチャート、緑ラインを参照)。日足のMACDはデッドクロスを形成しゼロラインを下回ってきた。RSIも低下のトレンドにある(いずれも下のチャート、赤矢印を参照)。

現在はフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準「638」レベルがサポート水準として意識されている。しかし2Q決算を受け、時間外の取引で一時621レベルまで下落した状況を考えるならば、今日の株式市場では半値戻しの水準「620」のトライ&ブレイク、そしてフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準「602」を視野に下落幅が拡大する展開を警戒したい。

ネットフリックス:日足 5月以降

出所:TradingView


ナスダック100、今日の見通し

ボラティリティ指数が上昇

ハイテク株比率が高いゆえに、ナスダック100(NDX)は「トランプトレード」とは相性が悪い。事実、上で述べたとおり、あっさりと節目の20,000ポイントを下方ブレイクする状況にある。

そして、ナスダック100のボラティリティ指数「VXN」の上昇幅が急速に拡大している。18日は21ポイントまで上昇し、ナスダック100の下落を警戒する動きが見られる(下のチャート、赤矢印を参照)。

なお、S&P500(SPX)のボラティリティ指数「VIX」も上昇幅が拡大している。しかし、こちらは警戒水準の「20」を上回る状況にはない。VIX指数が20を超えてくる場合は、アメリカの株式市場でリスク回避のムードが高まるシグナルとなろう。

ボラティリティ指数(VXN / VIX):日足 年初来

ボラティリティ指数(VXN / VIX):日足 年初来 ブルームバーグのデータで筆者が作成


50日線が視野に

テクニカルの面でも、ナスダック100(NDX)の下落を警戒する局面にある。

日足のMACDはデッドクロスへ転じている。RSIはデッドクロスの後、低下のトレンドにある。そして21日線がレジスタンスのラインへ転換する可能性があり、かつその傾きが低下へ転じつつある(いずれも下のチャート、赤矢印を参照)。今日もナスダック100は下値のトライを警戒したい。

予想どおりナスダック100が続落する場合、焦点は50日線の維持となろう。この移動平均線は18日時点で、19,292レベルで推移している(緑ラインを参照)。

ナスダック100:日足 年初来

ナスダック100:日足 年初来

出所:TradingView

50日線を目指すシグナル

ナスダック100(NDX)が50日線を目指すシグナルとして、2つのチャート水準に注目したい。

ひとつは、6月1日安値を起点とした半値戻しの水準「19,440」である。この水準を下方ブレイクする場合は、すぐ下の水準「19,347」の攻防が次の焦点として浮上しよう。

ナスダック100が後者のチャート水準(19,347)をトライする場合は、6月12日安値のフィボナッチ・リトレースメント全戻しとなる。後者の水準をも下方ブレイクする場合は、50日線のトライを予想する。

時間足のストキャスティクスとRSIはともに売られ過ぎの水準まで低下している。そしてゴールデンクロスへ転じている(下のチャート、緑矢印を参照)。ナスダック100が上のサポート水準をトライする前に、一度反発する展開を想定しておきたい。

しかし、トランプトレードとの相性の悪さ、VXNの上昇幅が拡大している状況、そして日足のテクニカル動向を総合的に考えるならば、節目の20,000ポイントがレジスタンスのラインへ転換する可能性を意識しておきたい。

テクニカルの面では、21日線の「レジスタンス転換」を意識しておきたい(上の日足チャート、青ラインを参照)。節目の水準や21日線が相場の反発を止める場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。

ナスダック100:1時間足 6月以降

ナスダック100:1時間足 6月以降

出所:TradingView


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