米国のインフレ鈍化と各市場の反応 / ドル円とユーロドルの焦点
10月米CPIが予想を下回り米債市場で利回りが急低下した。短期金融市場では大幅利上げの観測が急速に後退している。これらの動向を受け外為市場では米ドル売りが進行した。トレンドが変化しつつある中、ドル円とユーロドルの焦点は?上下のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
米国のインフレ鈍化と各市場の反応
【サマリー】
・10月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回り4か月連続で伸びが縮小
・米国のインフレ鈍化を受け米債市場では利回りが急低下する展開に
・米金利の低下は株高を促し、外為市場での米ドル売り圧力を強めた
・ドル円は140.00のブレイクを意識する局面へシフトしている
・ユーロドルは1.02と1.0360レベルの攻防が焦点に
・米消費者物価指数は4か月連続で縮小 米金利は急低下
各市場の参加者が注目した10月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で7.7%と予想を下回り4か月連続で縮小した。コア指数も同比6.3%と前月の6.6%から低下した。
インフレの鈍化傾向を受けて、昨日の米債券市場では利回りが急低下した。10年債利回り(長期金利)は節目の4.0%を難なく割り込むと、3.8%台まで低下した。ドル円(USDJPY)のトレンドに影響を与えている5年債利回りも4%割れの展開に。また、米金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは、4.2%台まで急低下する局面が見られた。
米金利のチャート
一方、12月の連邦公開市場委員会(FOMC、13~14日開催)の利上げ予想を確認すると、50ベーシスポイント(bps)利上げが90%台へ急上昇している。
米金利のチャート
・金利の低下と株高で米ドル安が加速
米金利の低下は、米国株の大幅上昇の要因となった。ハイテク株の急騰にけん引され、ナスダック100指数(NDX)は前日比7.5%高と、2020年3月以来の大幅高となった。ダウ平均(DJI)の上げ幅は1,200ドルに達し、S&P500指数(SPX)は5.5%の上昇。節目の4,000ポイントを視野に上昇トレンドを維持している。
10日のレポートでは、米金利の低下と株高が同時に発生する展開となれば、米ドル安の圧力が最も高まりやすいと指摘した。予想通り昨日の外為市場は、主要通貨に対して米ドル売りが加速する展開となった。
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は、短期サポートラインと100日線をあっさりと下方ブレイクする展開に。短期レジスタンスラインを形成しながらの重要テクニカルラインのブレイクは、米ドル高トレンドが転換する可能性を示唆している。
目先、ドルインデックス(米ドル相場)の注目ポイントは、半値戻しの水準とフィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防である。米CPI後の米ドル安の流れが続き、これらテクニカルポイントをもことごとく下方ブレイクする場合は、米ドル高トレンドの終焉を市場参加者に意識させるだろう。
ドルインデックスのチャート
ドル円とユーロドルの焦点
・ドル円 140.00の攻防が再び焦点に
米金利の急低下を受け、昨日のドル円(USDJPY)はサポートポイントの145.00をあっさりと下方ブレイクした。下落率はマイナス3.7%まで拡大。そして安値140.20まで急落する局面が見られた。
上で述べたとおり12月FOMCの75ベーシスポイント(bps)利上げの可能性が急低下している。そして短期金融市場のターミナルレートの水準も5.0%以下へ低下している。
これらの状況を考えるならば、米債市場では金利の低下がしばらく続く可能性があろう。ゆえに目先のドル円は、下値トライを想定しておきたい。
今日のドル円で注目すべきは、140.00の攻防である。ローソク足の実体ベースで昨日の急落を止めた100日線(MA/140.80)を再び下方ブレイクする場合、10日の安値140.20レベルの攻防が焦点に浮上しよう。
ドル円がこの水準(140.20レベル)をも下抜ける場合は、節目の140.00をトライするシグナルと想定しておきたい。
米金利の低下幅が拡大すれば、ドル円の下落幅も拡大しよう。ドル円が140.00をも難なく下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防が焦点となろう。
ドル円のチャート:焦点は140.00の攻防
・ユーロドルは1.02と1.0360レベルの攻防が焦点に
米ドル安の進行を受け、ユーロドル(EURUSD)は重要チャートポイントをトライする展開となっている。
昨日は、相場の上昇を抑制していた半値戻しと1.01レベルの上方ブレイクに成功し、1.02台の攻防へシフトしている。
フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる1.02レベルをも完全に突破する場合は、1.0360レベルが次の上値ターゲットとして浮上しよう。この水準は、8月10~11日にかけてレジスタンスポイントとして意識された経緯がある。また、テクニカルの面ではリトレースメント76.4%戻しの水準にあたる。過去にレジスタンスポイントとして意識された経緯とフィボナッチ・リトレースメントの水準が重なっていることを考えるならば、米金利の低下が続く間は、1.0360レベルまで上昇するかどうか?この点が焦点となろう。
なお、今日は11月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)が発表される。
アメリカの消費者心理を考える上で重要な指標だが、インフレがテーマである以上、期待インフレ率(1年先)の動向をより重視したい。市場予想は5.1%。前月の5.0%から若干ながら上昇する見通しとなっている。期待インフレ率(1年先)が予想以下ならば、米CPI後のトレンド-「米金利の低下と米株高→米ドル安」のトレンドが加速することが予想される。
逆に期待インフレ率(1年先)が予想以上ならば、米ドル急落後のショートカバー(調整の米ドル買い)の展開が予想される。
ユーロドルのチャート
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