英中銀の利上げ観測後退　8月CPIが予想下回る　円高ポンド安進行

イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行（BOE）が21日に発表する政策金利をめぐり、利上げ観測が後退している。金融市場では日本時間20日夕方段階で、利上げに関する確率が急落し、利上げ見送りとほぼ同程度まで下がっている。きっかけとなったのは、英統計局が20日に発表した8月の消費者物価指数（CPI）で、物価上昇率が市場予想を下回ったこと。外国為替市場のポンド円相場では、CPI発表後にポンドが急落しており、このところ続いていた円高ポンド安に拍車がかかっている。

イングランド銀行の利上げ確率は55％まで後退

BOEは21日正午（日本時間21日午後8時）に政策金利を発表する。金融情報会社リフィニティブのデータによると、0.25％利上げの確率は日本時間20日午後5時すぎの段階で55％。19日午後には約80％の確率が見積もられていたが、利上げ観測が後退した形だ。これに対して21日に利上げが見送られる確率は45％まで上がっている。

金融市場の予想を揺るがしたのは、20日に発表された8月のCPIだ。英統計局によると、総合指数の伸び率は前年同月比6.7％で、7月の6.8％から物価上昇が減速。また、食品とエネルギー、酒類、タバコを除いたコア指数の伸び率は6.2％で、7月（6.9％）から大きく低下した。コア指数の伸び率は3月（6.2％）以来の低さ。ロイター通信のエコノミスト調査では、伸び率は総合指数で7.0％、コア指数で6.8％と見込まれていただけに、物価上昇が想定以上に落ち着いていることが示された。

BOEは総合指数の伸び率の見通しとして、2023年7-9月期は6.9％との水準を示しており、8月の実績は想定よりも低いといえる内容。さらにコア指数の伸び率も市場予想を大きく下回ったことで、金融市場ではBOEの利上げ見送りもあり得るとの見方が強まったようだ。アンドリュー・ベイリー総裁は6日の議会証言で「利上げサイクルの頂点により近づいてきた」と述べていた。

8月CPI発表後に約1円の円高ポンド安が進行

こうした中、外国為替市場では、ポンド安の流れが強まった。ポンド円相場は8月CPI発表後に1ポンド＝182円台前半を記録。発表直前の約183.20円から1円程度、円高ポンド安方向に動いた。その後はポンドが買い戻されているが、8月半ば以降の緩やかな円高ポンド安の流れが後押しされる形になっている。

BOEの21日の発表では、利上げの有無と同時に、今後の金融政策についてどのような見通しが示されるかも焦点となる。利上げ打ち止めの方向性がこれまで以上にはっきりと示されれば、円高ポンド安がさらに進む可能性もありそうだ。