日銀のマイナス金利解除で円安進行 緩和状態の維持想定 日経平均も上昇
日銀の大規模金融緩和終了でも円高は進まず、日経平均は上昇。ただ、FRBの動向が円高や株安につながる可能性は残る。
金融市場が日本銀行の大規模金融緩和策の終了に冷静な反応を示している。日本銀行は19日、マイナス金利政策の解除やイールド・カーブ・コントロール(YCC)の撤廃などを決定。日本の金利水準の高まりが意識される内容だが、発表直後のFX市場では円安が進んだ。これを受けて日経平均株価も値上がりで反応した。日銀は賃上げを伴う物価上昇の継続に自信を示しつつも、金融緩和を継続すると強調しており、市場の安心材料になったようだ。ただしアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が20日に示す金融政策の方向性次第では、今後のFX市場や株式市場の流れが変わる可能性もある。
日銀がマイナス金利政策など大規模金融緩和を終了
日銀は19日、金融政策の枠組みの見直しを決めた。今後の金融政策は、金融機関同士で資金を貸し借りする際の翌日物金利を0-0.1%程度で推移するよう促すことで行うとしている。声明文では、これまでの金融政策の柱だった、銀行が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を課すマイナス金利政策や、長期金利(10年物国債利回り)の上限のめどを1.0%とするYCCなどについて、「その役割を果たした」と言及した。
日銀は見直しの理由として、賃金と物価の好循環が確認され、物価上昇率2%が安定的に達成されることが「見通せる状況に至った」ことを挙げた。植田和男総裁は19日の記者会見で、春闘の第1回回答集計での賃上げ率が5.28%という高い水準だったことに加え、消費者物価指数(CPI)でのサービス価格の緩やかな上昇が続いていることや、2023年10-12月期GDP改定値で企業の設備投資の水準が上方修正されたことなども大規模金融緩和終了を決断した背景になったと説明した。
一方、植田氏は記者会見で「基調的な物価上昇率がまだ、今、2(%)には達していないという風に考えている」とも言及。日銀は声明文の中で、現時点での経済や物価の見通しを前提にすれば、「当面、緩和的な金融環境が継続する」との見方も強調している。
ドル円相場では150円台半ばまで円安ドル高が進行
こうした金融緩和継続のメッセージを受けて、FX市場では円安が進行した。ドル円相場(USD/JPY)では日銀の発表後に円売りが加速し、植田氏の記者会見中には一時、1ドル=150.49円をつけた。見直し発表直前の水準(149.30円程度)から、1.20円程度の円安ドル高が進んだ形だ。ユーロ円(EUR/JPY)相場やポンド円(GBP)相場でも、日銀の発表後に円が安くなっている。
FX市場での円安は株式市場では好材料とみなされたようだ。日経平均(N225)の19日の終値は前日比263.16円高の4万0003.60円。発表前は前日比200円程度安い水準だったが、発表後に大きく値上がりした。終値での4万円台は6日以来約2週間ぶりだ。
FRBが利下げ姿勢を後退させれば日経平均には追い風か
ただ、2013年から続けられてきた日銀による「異次元の」金融緩和が終了し、短期金利の操作を政策手段とする伝統的な金融政策に戻ったことで、今後はこれまでよりも日本の金利が上がりやすくなったことも確かだ。日銀はYCC撤廃後も、「長期金利が急激に上昇する場合」には機動的な国債購入でブレーキをかける方針だが、長期金利の上昇が緩やかであれば容認するとも考えられる。また、企業の賃上げが中小企業にまで広がれば、個人消費の強まりが物価上昇圧力として働き、日銀が今後、さらなる利上げを視野に入れる可能性も拭えない。この場合は、FX市場で円高が進み、株安の引き金になる材料ともいえそうだ。
金融市場の今後の焦点は、FRBが19、20日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)に移る。米国の物価上昇の根強さが感じられる中、FRBが利下げへの姿勢を後退させれば米国の金利の先高観が強まることもありえる。こうした観測は足元の円安の背景になっており、現実になれば日経平均にとっては追い風だ。
一方、FRBからの情報発信が想定の範囲内なら、金利の先高観はさほど高まらないことも考えられる。日銀の大規模金融緩和終了も背景となって、今後、円高圧力が働き、日経平均を下押しする可能性も残っていそうだ。
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