米FRB、視界不良で利上げ停止 銀行融資の動向不透明 物価予想は上振れ
米FRBが1年5か月ぶりに利上げを見送った。銀行の融資の動向などが不透明なためだが、物価上昇への警戒は緩めていない。
米連邦準備制度理事会(FRB)は14日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送った。政策金利を維持するのは2022年1月以来1年5か月ぶり。利上げのペースを落とし、過去10回で5%幅に達した利上げが物価上昇に与える影響を見極める。また3月以降の銀行システムの混乱が経済活動を冷やす効果も見通せないことも利上げ見送りの要因となった。一方、FOMC後に示された経済見通しでは物価上昇率の予想が引き上げられ、年内に2度の利上げが行われる可能性が示唆されている。
米FRBの利上げ停止に3つの要因
パウエル議長はFOMC後の記者会見で利上げ停止の理由として、これまでの利上げ幅が大きくなっていること、金融政策が経済活動に影響与えるまでかかる時間が不透明なこと、金融機関の貸し出し消極化が経済活動の逆風になる可能性があることを挙げた。
FRBは2022年3月に政策金利を0.00-0.25%から、0.25-0.50%に引き上げた。その後も最大0.75%幅の利上げを続け、前回FOMCで政策金利は5.00 -5.25%に達した。ただ、金利が上がった後も実際に個人や企業の経済活動が衰えて、物価上昇率が下がるまでにはタイムラグがある。このためFRBは利上げを停止し、現在の政策金利の効果がどのように出ていくかを見極めたい考えだ。
また、金融機関の貸し出し消極化の動向は、FRBにとってさらに深い悩みだ。シリコンバレーバンク(SVB)などの経営破綻の背景にはFRBの利上げで銀行が保有する債券の価値が目減りしたことがあった。その結果、預金流出などに見舞われた銀行が貸し出しを絞り込み、結果としてFRBが意図している以上に経済活動が冷え込んでしまう可能性がある。パウエル氏は記者会見で「銀行システムの混乱がもたらす完全な影響は分かっていない」と述べた。
実際、3月下旬には商業銀行の融資残高が2週連続で前週から減少したことが金融市場で注目された。融資残高はその後、前週比でのプラスを続けてきたが、5月半ばにも2週連続マイナスを記録している。SVBの経営に対する不安は1-3月期の決算期末が近づく中で一気に深刻化しただけに、6月末に向けて銀行経営が変調をきたすという不安もちらつく。
パウエル氏は「(銀行システムの混乱によって)通常想定されるよりも大きな引き締め効果が出れば、今後の政策金利決定の際に考慮することになる」とも話し、状況を注視する考えを示した。
パウエル議長は物価上昇を引き続き警戒
ただ、FRBの様子見姿勢は長くは続かない可能性がある。5月の消費者物価指数(CPI)では物価上昇の落ち着きが増したものの、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数を食品とエネルギーを除いたコア指数でみると、4月までの半年間、4.7%前後で推移しており、パウエル氏は「ほとんど進展がない」と指摘した。
FOMCの経済見通しでは2023年10-12月期について、PCE物価指数のコア指数の伸び率が前年同期比3.9%になるとされ、3月時点の予想(3.6%)から引き上げられている。さらに成長率予想は引き上げ、失業率予想は引き下げの方向で修正されており、いずれも米国経済の先行きへの強気さが増している形だ。
2023年末の政策金利の見通しは5.50-5.75%
このため、FOMC参加者が示す2023年末の政策金利の見通しの中央値は5.50 -5.75%の範囲となっており、年内に0.25%幅の利上げが2回行われることを示唆している。現状よりも政策金利が下がると見込んでいる参加者は一人もいなかった。CMEグループのデータによると、次回FOMC(7月25、26日)の利上げについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間15日午後1時すぎの段階で約72%となっている。
一方、パウエル氏は7月の利上げについては、今後6週間で明らかになる物価や雇用、銀行貸し出しの状況などを踏まえ、予断を持たずに検討する考えを強調している。14日の金融市場ではS&P500種株価指数が上昇し、ドル円レート(チャート)が円高ドル安に振れたが、いずれも動きは大きくなく、今後も経済指標の内容に応じて相場が左右されることになりそうだ。
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