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米国株に迫る暗雲 FRBが政策金利高止まり示唆 S&P500下落

FRBの経済見通しが金利の高止まり懸念を強め、株価は下落した。FRBは物価上昇との闘いの手を緩める気はないようだ。

出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場に暗雲が迫ってきた。米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ見送りを決定。経済見通しでは、政策金利の将来的な水準を引き上げた。株式市場では金利水準の高止まりが株価を下押しする懸念が拡大し、20日のS&P500種株価指数やナスダック総合指数は大きく下落した。一方、ジェローム・パウエル議長は記者会見で景気への配慮を口にし、今後の利上げの検討は慎重に進めることを強調している。しかし同時に物価上昇との闘いを最優先させる方針を繰り返しており、今後も株式市場の不安は続きそうだ。

2024年末の政策金利の見通しは5.1%へと引き上げ

FRBは今回のFOMCで政策金利を5.25-5.50%に据え置いた。利上げ見送りは6月以来。また経済見通しで示された12月末の政策金利の水準は5.6%で、6月時点の見通しと同じだった。一方、2024年末の水準は5.1%とされ、6月時点の4.6%から引き上げられた。現段階でのFRBによる見立てでは、年内に1度の0.25%利上げを実施したうえで、2024年は2度の利下げを行うとのシナリオが有力視されているようだ。

FOMC参加者が示した政策金利の見通し

FRBの見通し発表を受けて、金融市場でも政策金利高止まりの織り込みが進んでいる。CMEグループのデータによると、12月のFOMC終了後の政策金利が現状よりも高くなっていることについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間21日午前10時の段階で約47%。前日朝の約40%から上昇した。20日のニューヨーク債券市場では、政策金利の動向を反映しやすい2年物米国債の利回りが5.120%まで上がり、2006年7月25日(5.123%)以来の高さを記録。また、長期金利(10年物米国債利回り)は4.347%で取引を終え、2007年11月以来の高水準を維持した。

こうした中、20日の株式市場ではS&P500(SPX)の終値が前日比0.94%安の4402.02まで下落。ハイテク株の多いナスダック総合指数はさらに大きく値下がりし、1.53%安の13469.10となった。これまでの株価上昇を引っ張ってきた大手ハイテク株の下落が目立っており、グーグルを傘下に持つアルファベット(GOOGL)は3.12%安、半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)は2.94%安となった。

パウエル氏「最悪のケースは物価安定の失敗」

株式市場の動きがあわただしくなる中、パウエル議長は記者会見で景気への配慮も示している。物価上昇抑制と景気後退の回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)に関して問われると、「FRBにとっての優先的な目標だ」と述べ、可能性を追求する考えを強調。そのうえで2022年3月以降の利上げ幅が大きくなっていることや、原油高の動向などの不確定要素があることを踏まえ、今後の利上げの検討は経済動向を見極めながら慎重に進めるとしている。

しかしパウエル氏は「絶対的に最悪のケース」としてFRBが物価の安定に失敗することだと言及している。物価上昇率は6月以降に低下傾向が出ており、8月の消費者物価指数(CPI)の伸び率は食品とエネルギーを除いたコア指数で4.3%まで下がっているが、2%という目標までは距離があることも事実だ。パウエル氏は「物価の安定を取り戻すことは、雇用を最大化させ、長期的に安定的な物価を実現するために必要不可欠だ」との立場を繰り返し、政策金利の高止まりも辞さない覚悟を感じさせている。


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