米国株に安堵感 FRBのタカ派度弱まる S&P500は3連騰
FRBのパウエル議長は物価上昇の減速を評価。タカ派度が弱まったとみられた。次は3日の雇用統計発表が焦点となる。
1日のアメリカの株式市場に安堵感が広がった。S&P500種株価指数の終値は前日比1.05%高で3日続伸を記録。株価の重荷となっていた長期金利(10年物米国債利回り)は約2週間ぶりに4.7%台まで低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)がこの日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送り、ジェローム・パウエル議長の会見もタカ派度合いが弱まったと受け止められたもようだ。ただ、パウエル氏は引き続き、経済情勢の展開次第では利上げを再開する可能性を否定しておらず、3日発表の10月の雇用統計など今後の経済指標への注目度は高い。
S&P500は3日間で2.9%上昇
1日のS&P500(SPX)の終値は4237.86で、直近3営業日での上昇率は2.93%となった。S&P500はハイテク大手の業績をめぐる先行き不安などを背景に不振が続き、10月27日までの12営業日のうち10日で下落していたが、週明け30日からはムードが一転している。
株価不振の要因のひとつとされてきた長期金利の上昇も一服感が続いている。金融情報会社リフィニティブのデータによると、1日のニューヨーク債券市場の長期金利は一時、4.734%をつけ、10月17日以来の4.7%台となった。23日に一時、5.021%をつけた後は、5%台からは遠ざかっている。
FRBのパウエル議長が物価上昇減速を評価
長期金利低下の材料となったのは1日午後に開かれたパウエル氏の記者会見だ。パウエル氏は夏の間の物価動向について「極めて好ましいものだった」と評価。物価上昇率が目標とする2%まで下がっていくことに確信を持てる状態ではないとしながらも、「物価上昇は明らかに冷えてきている」との見解を示した。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数の食品とエネルギーを除いたコア指数は、7-9月期の伸び率が前期比年率2.4%となり、4-6月期の3.7%から大きく低下している。
また、FRBはパウエル氏の記者会見に先立って開かれたFOMCで、事前予想通り、9月に続いて利上げを見送り、政策金利を5.25-5.50%に据え置いた。2会合連続の利上げ見送りは、2022年3月から始まった利上げサイクルの中で初めてだ。FRBが利上げペースを落とし、これまでの物価上昇減速を前向きに評価していることは、パウエル氏が強調してきた、利上げで物価上昇と闘う「タカ派」的な姿勢の弱まりと受け止めることができる。
パウエル氏は記者会見で、物価上昇減速の理由のひとつとして、新型コロナウイルス禍後に落ち込んだ生産活動が復活し、供給不足解消されてきたことを挙げた。こうした要因での物価上昇の落ち着きは、経済活動や雇用が弱まって需要が落ち込むことで物価上昇が治まるケースとは異なり、「歓迎すべき動きだ」としている。パウエル氏の視野には、景気後退を伴わない物価上昇抑制への道筋も視野に入ってきたようだ。
3日発表の10月の雇用統計は過熱感が低下の予想
ただ、FRBの金融政策は今後発表される経済指標の結果に左右されることは間違いない。パウエル氏は物価上昇の沈静化を歓迎しながらも、今後の利上げの可能性は否定せず。一方、利下げについては考えていないことを明言しており、政策金利を高止まりさせる方向性に変化は出ていない。
ロイター通信のエコノミスト調査によると、3日発表の10月の雇用統計では、非農業部門の就業者の増加数が前月比18.0万人、平均時給の伸び率は前年同月比4.0%と見込まれている。いずれも雇用の過熱感の和らぎを示唆する水準で、予想通りになればFRBの利上げ観測はさらに後退しそうだ。一方、雇用統計の結果が労働市場の強さを示し、物価上昇圧力の強さを感じさせれば、再び利上げ観測や金利の先高観を呼び込む可能性もある。
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