米物価上昇が大幅減速 FRB利上げ見送り濃厚 急成長維持は困難?
アメリカ経済にソフトランディングの兆しが出た。一方、経済成長の先行きには不安もあり、金融市場をめぐる不確定要素は多い。
物価上昇に苦しんできたアメリカ経済に改善の兆しが出てきた。米商務省が26日に発表した2023年7-9月期GDP統計は、経済の急成長とともに物価上昇率の大幅な低下を示す内容。米連邦準備制度理事会(FRB)にとっては、物価抑制と景気後退回避を両立させる軟着陸(ソフトランディング)の可能性を感じさせる結果で、11月1日までの連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送りが濃厚になってきた。さらに12月のFOMCでも利上げが見送られるとの観測が強まっている。ただ、米国経済は10-12月期は成長ペースが落ちるとみられ、金融市場は引き続き不安定な状況が続きそうだ。
アメリカの2023年7-9月期の実質成長率は4.9%
米国の7-9月期の実質成長率は前期比年率4.9%。4-6月期の2.1%から大きく加速するとともに、事前予想の4.3%も超えた。最大の要因は4.0%伸びた個人消費で、成長率を約2.7%ポイント押し上げている。成長率の上昇には、在庫の積み増しや政府支出も大きく寄与した。
一方、FRBにとって最大の課題である物価上昇は沈静化した。7-9月期の個人消費支出(PCE)物価指数の総合指数の伸び率は前期比年率2.9%。食品とエネルギーを除いたコア指数では2.4%となった。コア指数の伸び率は1-3月期が5.0%、4-6月期が3.7%だったことを踏まえれば、FRBが目標とする2%に着実に近づいているといえる。
個人消費の強さと物価上昇率の低下が同時に示される中、金融市場ではFRBが10月31日から11月1日にかけて開かれるFOMCで利上げを見送ることが確実視されている。また、CMEグループのデータによると、12月12、13日のFOMCでの利上げ見送りについても、投資家の動向から算出される確率は約80%まで上がっている。FRB幹部からはこのところ、長期金利(10年物米国債利回り)上昇の結果として、FRBが利上げを行う必要性が薄れているとの発言が相次いでいた。
貯蓄率の低下は消費者の購買力の弱まりの表れか
ただ、米経済の急成長の持続性には疑問符もつく。7-9月期に個人が得た可処分所得のうち貯蓄に回された割合(貯蓄率)は3.8%で、4-6月期の5.2%から低下。消費者の購買力の弱まりを感じさせている。FRBの政策金利は5.25-5.50%という高水準にあり、住宅ローン金利や自動車ローン金利の上昇を通じて、今後の消費をさらに下押ししていく可能性は拭えない。米国経済が大幅に減速していけば、今後はFRBの利下げへの方向転換も現実味を帯びる。
こうした経済の先行き不透明感が強まる中で、26日のニューヨーク債券市場の長期金利は4.845%で取引を終え、前日から0.108%ポイント低下した。S&P500種株価指数(SPX)は長期金利が16年3か月ぶりの高さに留まっていることを悪材料視して下落。また、25日に1ドル=150円を大きく超えたドル円相場(USD/JPY)は、日本時間の26日午後に150.77ドルをつけたが、その後は米長期金利の低下がドル買いの勢いをそいだ。
FRBの金融政策の方向性が利上げから利下げへと移っていけば、相場の動きめぐる思惑も大きく変わる。さらに中東ではイスラム組織ハマスが拠点を置くパレスチナのガザ地区に対してイスラエルが大規模な攻撃を始め、米下院では25日にドナルド・トランプ前大統領と関係が深いマイク・ジョンソン氏が下院議長が選ばれるなど、世界情勢の不確定要素は山積している。米国経済に軟着陸の兆しが出ているとはいえ、金融市場の先行きはますます見通しにくくなっているといえそうだ。
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