米ドル安のバロメーターとしての通貨
米利下げ期待により金利には低下圧力が高まっています。米金利の低下と米ドル安の相関関係を考える上で、ユーロと新興国通貨は重要なバロメーターとしての役割を果たすでしょう。今日のレポートではこの点について考えてみました。お時間のある時にご覧ください。
Analysis Highlights
・米ドル安のバロメーターとしての通貨
FEDによる利上げ観測が米中対立リスクの相殺要因となり、米株は再び息を吹き返してきた。各ボラティリティ指数(VIX / VXN)はともに警戒水準の20ポイントを再び下回る展開となっている。その他の主要な株価指数に対する落圧力も後退している。対メキシコ関税が土壇場で回避された状況も考えるならば、今週の米株は底堅い展開が予想される。また米株のサポート要因として、米金利の低下傾向も重要なファクターである。FEDによる利下げ観測は米金利の低下圧力を高めているが、注目すべきは2年債利回りの動向である。2019年以降の低下率の推移を確認すると、6月までは目立ったかい離は見られなかった。しかし、米利下げ観測が急速に高まった6月以降、低下率のかい離が鮮明となっている。金融政策の動向に敏感な2年債利回りに対する低下圧力が高まっていることで、ひとまず逆イールドの問題に絡んだ株安の可能性も低い。
このような状況の中、外為市場で注目すべきはユーロと新興国通貨の動向である。米金利の低下は基本的に米ドル安要因である。そして米金利の動向に最も敏感なこれら通貨は、米ドル安のバロメーターとなる。市場の一部では、米国と他国の金利水準およびファンダメンタルズを比較し、米金利が低下しても米ドル高を予測する分析がある。しかし実際の動向、例えば7日のユーロドルは、これまで強固に上値を抑制し続けてきた1.1300-1.1330のレジスタンスゾーンを大陽線で一気に突破した。一方、新興国通貨はトルコリラとインドルピー以外、対米ドルで総じて上昇した。ファンダメンタルズや金融政策の面で買う材料が見当たらないユーロ、そして米中対立リスクがくすぶる中でもリスク性の高い新興国通貨がそれぞれ対米ドルで上昇した事実は、現状、「米金利の低下→米ドル安」の関係が成り立っていることを示唆している。尚、新興国通貨が買われた理由は米金利の低下に加え、株安圧力が後退している点も重要なポイントである。「株高 / 米金利低下」の局面では、新興国通貨が最も買われやすい通貨になると予想する。
【米金利の動向】
・ドル円とユーロドルの展望
今週のドル円は107.80を下限、21日MA(今日現在109.25)を上限と想定したレンジ相場を予想する。株高局面で米金利への低下圧力が後退する場合は、21日MAを視野に上昇幅が拡大しよう。だが、株高のみの上昇では限界があろう。21日MAでの反落リスクを警戒したい。一方、107.80トライの材料として注視すべきは、米中対立リスクを煽るキーマン達の言動や報道である。現在、107.80にはビッドが観測されている。米株が再び大きく崩れる場合、このレベルのトライもしくはブレイクする展開を予想する。次のターゲットは107.50(1/4安値)を想定している。
今週のユーロドルは、米指標データによりトレンドが左右されよう。上述したとおり、現在は米金利の低下がユーロドルのサポート要因となっている。米金利の低下が続く場合、1.1400トライの展開を予想する。このシグナルとして200日MA(今日現在1.1366)のブレイクを注視したい。一方、「良好な米指標データ→米金利の反発→米ドルの買戻し」の局面では、ビッドが観測されている1.1270、1.1250および1.1200レベルを反転ポイントと想定している。
【ドル円】
【ユーロドル】
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