NY金 止まらぬ下落、トリプルレッドとパウエルFRBの慎重姿勢が重石、今日の見通し
アメリカの議会選挙で共和党が「トリプルレッド」を達成した。外為市場では、「トランプトレード」の米ドル高が進行している。米債市場では、長期金利が4.4%台で高止まりしている。スポットの金価格は2,500ドルの下方ブレイクが視野に入る。反発しても戻り売りを警戒したい。今日の注目材料と見通しは?
記事のポイント
- トリプルレッドで米ドル高がさらに進行、米長期金利は高止まり
- NY金の下落基調が続く、スポット価格は100日線を一時下方ブレイク
- 今日は10月の米小売売上高が変動要因に、内容次第でNY金は大きく動く可能性あり
- NY金、今日の見通しと注目のテクニカルラインについて
トリプルレッドで米ドル高進行、止まらぬNY金の下落
アメリカの下院選挙で共和党が過半数を獲得した。上下両院を共和党が制する「トリプルレッド」が実現したことで、大型減税や外国製品の関税強化などの主要なトランプ政策が米議会を通過する可能性が各段に高まった。
外為市場では、トランプ政策の影響による景気の拡大とインフレ再燃の可能性が早くも意識され、思惑先行の米ドル高が進行している。米債市場では長期金利が高止まりしている。「トランプトレード」の加速は、金価格を直撃している。
米長期金利、ドル指数、スポット金価格の動向:2024年8月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 米長期金利:10年債利回り
慎重姿勢のパウエルFRB議長、小売売上高次第で金価格はさらなる下落も
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は14日の講演で、今後の利下げについて「The economy is not sending any signals that we need to be in a hurry to lower rates(経済はFRBが利下げを急ぐ必要があるシグナルを送っていない)」と述べ、今後の利下げペースについて慎重に判断する姿勢を示した。
パウエル講演を受け、短期金融市場では12月の利下げ確率が40%台へ低下している。前日の13日までは70%前後で推移していたことを考えるならば、パウエル議長の一言で市場の利下げ期待が急速に後退していることが分かる。
この状況で、今晩の10月小売売上高が個人消費の底堅さを示唆する場合は、12月の利下げ期待がさらに後退しよう。
米債市場では金利の高止まり、または上昇が予想される。外為市場では米ドル高がさらに進行するだろう。強い小売売上高は金価格のさらなる下落要因になり得る。
米政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 /15日 13時時点
金価格、今日の見通しとテクニカル分析
2,530ブレイクなら2,500ドル割れを警戒
「トランプトレード」の直撃を受け、NY金のスポット価格(以下では金価格)は昨日、13日のIGコモディティレポートで取り上げた100日線を一時下方ブレイクする局面が見られた。今晩の米小売売上高が強い内容となれば、下落トレンドの維持が予想される。注目のサポートラインを以下にまとめた。
・10日線と50日線との間でデッドクロスが確認された(下の日足チャート、黒矢印を参照)
・日足のMACDとモメンタムは金価格の弱気地合いを示している。この状況で米小売売上高が予想以上の内容となれば、金価格は再び100日線をトライする展開を想定しておきたい
・金価格が100日線を下方ブレイクする場合は、サポートラインへ転換する可能性のある2,530ドルの維持が焦点となろう
・昨日と同じく2,530ドル台で相場が反発する場合は、重要サポートラインとして2,530ドルの存在感が増すだろう
・一方、金価格が2,530ドルをも難なく下方ブレイクする場合は、2,500ドルのトライと下方ブレイクが焦点に浮上しよう
・金価格が2,530ドル以下の攻防へシフトする場合は、来週以降、サポートラインへの転換が確認された2,480ドルを視野に下落幅が拡大する展開を警戒したい
金価格のチャート:日足 24年7月以降
出所:TradingView
サポートライン
・2,545:100日線
・2,530:サポート転換の可能性がある水準
・2,500:サポートライン
・2,480:サポート転換が確認された水準
反発の局面では2,600ドルのトライが焦点に、戻り売りを警戒
10月の米小売売上高が市場予想を下回る場合は、米ドル高の「調整材料」に使われる可能性がある。また、週末のポジション調整で米ドル高がひとまず一服する展開も予想される。米ドル高が一服するケースでは、金価格の反発を予想する。注目のレジスタンスラインを以下にまとめた。
・本日、金価格の反発局面で最初に注目したいレジスタンスラインが2,577レベルである。この水準は、昨日NY時間に相場の戻りを止めた経緯がある。また、直近高安の半値戻しの水準でもある
・金価格が半値戻しの水準を突破する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準2,587ドルの攻防が焦点に浮上しよう。このテクニカルラインの上方ブレイクは、2,600ドルをトライするサインと捉えたい
・2,600ドルの水準は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる。テクニカルの面で2,600ドルを重要なレジスタンスラインと想定しておきたい
・分足(本レポートでは15分足を採用)のRSIで相場の短期的な過熱感を確認したい。特に金価格が上のレジスタンスラインをトライする局面で、RSIが買われ過ぎの水準へ到達している場合は、デッドクロスを確認したい。MACDでも同じ状況が確認される場合は、相場の下落を意識したい。
・「トリプルレッド」でトランプ政策の実現性が各段に高まった状況を考えるならば、米ドル安は調整の域を出ないだろう。金価格の反発局面では、上で取り上げたレジスタンスラインでの戻り売りを警戒したい。
金価格のチャート:15分足 11月13日以降
出所:TradingView
レジスタンスライン
・2,600:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・2,587:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・2,577:半値戻し
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