金価格、連日の下落で調整ムードが高まる、押し目買いを意識する局面に
金価格は連日の陰線引けとなり、2,400ドルだけでなく重要なテクニカルラインをも下方ブレイクする状況にある。陰線の大きさ、そして短期間で上昇幅が拡大した状況も考えるならば、今は調整の反落相場を意識したい。しかし、中央銀行の買い需要は金相場を中長期で下支えする要因となろう。金価格の下落局面では、押し目買いを狙いたい。
サマリー
・連日の陰線引けで調整ムードが漂うNY金
・しかし中銀の買い需要の強さを考えるならば、反落の局面では押し目買いを狙いたい
・目先の焦点は、50日線と2,275レベルの維持となろう
一転して調整ムードの金価格
スポットのNY金(XAU、以下金価格)は連日の陰線引けとなった。比較的大きな陰線で2,400ドルのみならず、21日線や短期サポートラインを下方ブレイクしている状況も考えるならば、今は調整の反落相場を意識する状況に転じている。
金価格のチャート:日足 今年2月以降
下落の局面では押し目を買い考えたい、注目のサポート水準は?
金価格(XAU)がさらに下値を目指す場合、最初の焦点は50日線のトライとなろう(上のチャート、青ラインを参照)。この移動平均線は今日現在、2,310レベルで推移している。この水準は、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(2,314レベル)にあたる(下の4時間足チャートを参照)。
金価格が2,300ドルの水準を下抜ける場合は、4月の上旬から約1か月にわたって相場を下支えした2,275レベルのトライが焦点として浮上しよう(上の日足チャートを参照)。すぐ上の水準2,280レベルは、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる。また、5月上旬に相場を下支えした経緯もある。ゆえに、テクニカルの面でも2,275前後はサポートの水準として意識される可能性がある。
時間足のストキャスティクスとRSIを軸に相場の過熱感を確認し、これらオシレーター指標が売られ過ぎの水準まで低下し、かつゴールデンクロスの状況が確認される局面で、上で取り上げたサポート水準の攻防にある場合は、反発を意識したい。
金価格のチャート:4時間足 3月18日以降
金相場を支える中銀の買い
今後も金価格(XAU)が強気相場を維持すると考える理由のひとつが、買い需要の強さにある。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、金の総需要は昨年過去最高を記録した。そして24年は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待でさらに需要が拡大するとの見通しも示された。
注目すべきは、中央銀行の持続的な買いである。特に中国の中央銀行である中国人民銀行は金の保有量を積み増している。今年4月末まで18カ月連続で金を備蓄し続けていることが、今月7日の外貨準備の内訳(4月末時点)で判明した。
下のチャートをみると、外貨準備高の伸びは抑制されている。その一方で、金の保有額は増加の一途を辿っている。外貨準備に占める金の割合も上昇の一途にある。
中国 外貨準備高と金保有額の状況:2016年以降
中国が金の備蓄を増加させている理由の一つに、米ドルの一極集中(米ドルの通貨覇権)からの脱却が挙げられる。ゆえに、今後も持続的に金を買い続けることが予想される。
また、ウクライナへ侵攻した制裁として米国がロシア中銀の資産を凍結したことも、中国だけでなく他国の中銀の金買い需要を高める要因となろう。
特に米国と良好な関係を築けていない国の中銀は、国際政治の場で米国から経済的な圧力をかけられた際の保険として、安全資産である金を今後も増やし続けることが予想される。
これら中銀の買いは、中長期的に金価格を下支えする要因となろう。
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