金価格が再上昇で最高値　ドル安見通しが追い風　中東情勢不安も要因か

金の先物価格の上昇が改めて勢いづいている。20日のニューヨーク市場の終値は1オンス＝2438.50ドルで、2024年に入って23回目の最高値更新。アメリカの物価上昇に対する懸念が後退する中、ドル安が進行するとの見通しが材料視されているようだ。またイランのイブラヒム・ライシ大統領がヘリコプター墜落事故で死亡したことが、地政学リスクの高まりを意識させ、安全資産としての金の人気を高めた可能性もある。金価格はイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した10月上旬を境に上昇基調がはっきりとしており、今後の中東情勢の見通しは金価格の動向にも影響を及ぼしそうだ。

金価格は20日に改めて最高値を更新　ドル安が追い風

LSEGによると、ニューヨーク商品取引所（COMEX）の金先物価格（中心限月）の20日の終値は前週末比0.87％高。2営業日連続で最高値を更新した。金価格は4月19日に当時の最高値（2413.80ドル）を付けた後、30日には2302.90ドルまで約4.6％下落していたが、改めて勢いを取り戻したといえる。金のスポット価格（スポット金）も同様の値動きで、日本時間の21日は2410ドル台で取引された。

金価格再浮上はドル安の進行がきっかけとなった。ドルの他通貨に対する強さを示すドルインデックス指数（ドルインデックス指数）はこのところ104.5程度で推移。4月29日につけた106.22から1.6％程度のドル安が進んでいる。5月に入って、米国の労働市場の過熱感の和らぎや、物価上昇の減速を示す経済指標が相次いで発表され、長期金利（10年物米国債利回り）の低下が進んだことが要因だ。ドルが安くなれば、海外の投資家にとってはドル建てで取引される金価格が割安になることから、金が買われやすくなるとされる。

イラン大統領の死去も中東情勢の不確定要素に

また、20日の金価格上昇の背景には地政学リスクに対する不安もありそうだ。20日に死亡が確認されたライシ氏はイランの大統領であると同時に、イランの最高指導者であるアヤトラ・アリ・ハメネイ師の後継者候補としても目されてきた。イランはイスラエルと戦闘を続けているハマスや、イエメンを拠点として紅海を通過する民間船舶の攻撃を行ってきた武装組織フーシを支援。イラン自身も4月13日、イスラエルに対してドローンと弾道ミサイルによる攻撃を行った。

金価格は10月7日のハマスによるイスラエル攻撃前は1オンス＝1845ドル程度で取引されており、足元までの上昇率は32％に達している。ライシ氏の死去が中東情勢に与える影響は不透明だが、ライシ氏の後任を決める大統領選挙は新たな不確定要素といえそうだ。

FOMC議事要旨で9月利下げ見通しは維持されるか

金価格の今後の見通しをめぐっては、引き続きドル安と中東情勢の先行きが注目される。ドル安に関しては、22日午後2時（日本時間23日午前3時）に公表される5月1日までの連邦公開市場員会（FOMC）の議事要旨で、連邦準備制度理事会（FRB）が9月にも利下げに踏み切るとの見通しが裏付けられるかが焦点となりそうだ。

また中東情勢では、ハマスが拠点を置くパレスチナのガザ地区への攻撃を続けるイスラエルへの批判も強く、国際刑事裁判所（ICC）は20日にイスラエルのベジャミン・ネタニヤフ首相らの逮捕状を請求すると発表した。ただ、こうしたICCの動きに対し、イスラエルやアメリカは強く反発しており、国際社会を仲介役として模索されているイスラエルとハマスの休戦協議がいっそう難しくなる可能性もありそうだ。