NY金3%の急反落、中東懸念の後退と「ベッセントラリー」の株高が重石に、金価格は変動幅の拡大を警戒
NY金の先物価格は25日、前週末比で3%超の大幅反落となった。スポット価格も上昇相場から一転し、2,600ドルを視野に急落した。売りと買いの要因が交錯する金相場。変動幅(ボラティリティ)の拡大を警戒する局面へ転じている。
NY金3%超の急反落、中東懸念の後退と「ベッセントラリー」の株高で
25日の国際商品市況でNY金価格が急反落した。金(ゴールド)売りの要因となったのが、中東懸念の後退と「ベッセントラリー」の米株高だった。以下に要点をまとめた。
・25日、イスラエルとイランが支援するレバノンの武装組織「ヒズボラ」の停戦を巡る合意が間近となったと複数の欧米メディアが伝えた。イスラエル政府は26日の治安閣議で停戦を採決するという。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も、「協議は建設的で極めて前向きに進んでいる」とし、全てが確定したわけではないが合意に近づいているとの認識を示した(ロイター)
・トランプ次期米大統領は、新たな財務長官にヘッジファンド経営者のスコット・ベッセント氏を示した。同氏は、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%に抑制すること、規制緩和でGDP3%の成長を実現すること、そしてアメリカの原油生産量を日量300万バレル増加する「3-3-3政策」を提唱している
・米債市場ではベッセント氏が財政赤字の削減を提唱していることが材料視され、長期金利(10年債利回り)が4.2%台へ急低下した。長期金利の低下は米株高を促し、ダウ平均は前週末に続き最高値を更新した。他の主要指数も総じて上昇した。
・中東懸念の後退と米株高のリスク選好相場がゴールドの調整売りを促し、先物価格は前週末比93.7ドル(3.5%)安2,618.5ドルと急反落した。最高値を視野に2,700ドル台まで急反発したスポット価格も、今年の6月7日以来となる3.3%安の急落となった
スポット価格の日次騰落率:24年6月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 11月25日までの動向
金価格はボラティリティの拡大を警戒する局面へ突入
NY金のスポット価格(以下では金価格)は現在、上昇の要因と下落の要因が交錯する状況にある。ゆえに目先の金価格は、ボラティリティ(変動幅)の拡大を警戒する局面へ突入したと想定しておく必要があろう。要点を以下にまとめた。
上昇の要因
・昨日は、中東の地政学リスクの後退が金(ゴールド)売りの一因となった。しかし欧州の地政学リスク、ロシアーウクライナ情勢は緊迫の度合いが増している。フランスのバロ外相は23日、英国の公共放送BBCのインタビューで、フランスがウクライナに供与している射程250キロメートルの巡航ミサイル「スカルプ」によるロシアへの攻撃を容認することを初めて公言した。アメリカに続くミサイル攻撃の容認は、欧州の地政学リスクを一段と高めると同時に、金価格の下支え要因となろう
・アメリカの新たな財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏は、財政赤字の削減を提唱している。米債市場では長期金利の上昇が抑制され、外為市場では米ドル高を調整する動きが見られる。これら市場の動きは金価格の下支え要因である
下落の要因
・中東懸念の後退とベッセント氏の指名による米長期金利の低下は、米株高を促す要因でもある。事実、25日のアメリカ株式市場ではダウ平均が4日続伸し、前週末比440ドル06セント(0.99%)高の4万4736ドル57セントと、前週末に続いて連日の最高値更新となった。S&P500も取引時間中に高値6020.75ポイントまで上昇し、今月11日の最高値6001.35ポイント(終値)を突破する局面が見られた。リスク選好の加速は、ゴールドの売り要因となろう
・ベッセント氏の指名で米金利に低下の圧力が高まっている。しかし短期金融市場では、12月の利下げ確率に大きな変動は見られず、未だ五分五分の状況にある。明日の10月PCE価格指数など、今後発表される重要指標でアメリカ経済の強さとインフレの粘着性が確認される場合は、米FRBの利下げパスに対する不透明感が高まろう。この不透明感は短期的に米金利の高まり、米ドル買い、ゴールド売りを促す要因となろう
金価格の見通し、注目のテクニカルライン
25日の金(ゴールド)売りよる日足の大陰線は、上昇ムードを一気に後退させるインパクトがある。一度相場が崩れると、それがしばらく続くことがよくある。先物のカーブ分析では、先週末と比べて弱気のムードへ傾いている(下のラインチャートを参照)。今日のゴールドは、以下で取り上げるサポートラインの攻防を意識したい。
金価格の見通し
ブルームバーグのデータで筆者が作成
サポートライン
・2,620ドル:サポート転換した水準(4時間足)
すでにサポートラインへ転換した水準。昨日の下落を止めたことも考えるならば、重要なサポート水準と想定しておきたい
・2,600ドル:61.8%戻し(4時間足)
2,620ドルの下方ブレイクは、2,600ドルをトライするサインと捉えたい。この水準は、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準でもある(2,607ドル)。本日午前にこのレベルをトライする局面が見られた。2,620ドルと同じく相場をサポートした(4時間足を参照)
・2,580ドル:76.4%戻し(4時間足)
2,600ドルの下方ブレイクは、再び弱気相場へ転じるサインの一つと捉えたい。4時間足のMACDとRSIではその兆候が見られる。金価格が2,580ドルをトライする場合は、直近の高値2,720ドルから5%下落することになる。この状況では、RSIが売られ過ぎの水準へ到達していることが予想される。2,600ドル割れの局面では、ひとまず調整の反落が収束する展開を想定しておきたい
・2,565ドル:100日線(日足)
金価格の下落局面で最も注目したいのが、「トランプトレード」のゴールド売りを止めた100日線の維持である。この移動平均線は今日現在、2,565ドル付近で推移している。上で取り上げたサポートラインをことごとく下方ブレイクしても、100日線が再びサポートラインとなる場合は、2,700ドル台へ反発する可能性が残るだろう
上で述べたとおり、現在はゴールドの売りと買いの要因が交錯する状況にある。上昇の局面でもボラティリティの拡大を想定しておきたい。今日以降は、以下で取り上げるレジスタンスラインの攻防に注目したい。
レジスタンスライン
・2,660ドル(4時間足)
レジスタンスラインへ転換する可能性あり。反発の局面でこの水準すら突破できない場合は、明日以降も上で述べたサポートラインの攻防を意識したい
・2,665ドル:50日線と21日線(日足)
金価格が2,660ドル台へ反発する場合、最大の焦点が50日線と21日線の突破となろう。これら移動平均線がレジスタンスラインとなれば、反発地合いの後退を市場参加者に印象付けよう
・2,720ドル:レジスタンス転換した水準(日足)
昨日の大陰線で2,720ドルのレジスタンスラインへの転換が確認された。再び最高値をトライする場合は、最大の関門(抵抗水準)として注目したい
金価格:日足 24年7月以降
出所:TradingView
金価格:4時間足 10月22日以降
出所:TradingView
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