米中対立リスクと投資家心理
にわかに米中対立リスクが意識されています。しかし、投資家の心理をみる上で重要な指標を確認すると、落ち着いた状況であることがわかります。その指標とは?そして今週のドル円は?詳細はマーケットレポートをご覧ください。
投資家の心理に乱れは見られない
新型コロナウイルスの感染拡大、それに伴う景気後退、そしてトランプ米大統領の支持率低下に「国家安全法」に反対する香港での抗議活動の拡大と、米中対立の火種が再びくすぶり出している。このリスクは、投資家の心理を悪化させる要因となり得る。だが、各指標の動向を確認すると、米中対立リスクが再び意識されても、3月のようなリスク回避相場が再来する可能性は低いと予想する。
投資家心理の動向を測る指標はいくつかある。外為市場では米ドルの調達コストがそれにあたる。この点をカレンシーベイシススワップ市場で確認すると、日本円やユーロを保有する金融機関が米ドルに換える際の調達コストは、4月中旬以降、上昇する局面が見られた。しかし、3月時点と比較すれば依然として安い水準にある。コロナショックの状況下で米ドルの調達コストが低下基調にあるということは、投資家心理は未だ落ち着いていると言えるだろう。
米ドルの調達コスト
また、ハイイールド社債の動向も投資家の心理状況を知る上で重要な指標となろう。この点をiShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF(ハイイールド社債のETF)で確認すると、3月23日にFEDが無制限緩和の導入を決定した後、ETFの価格が急上昇した。4月中旬以降は78米ドルから81米ドルのレンジ内で落ち着いた動きが続いている。景気の先行きリスクが意識され上値を追う展開ではないが、FEDの資産購入対象に低格付けの社債も含まれていることで、そのリスクをカバーしている状況がうかがえる。直近の上昇基調も考えるならば、投資家心理が悪化する兆しは見られない。
ハイイールド債ETFの動向
そして米国株式市場である。米ドルの調達コストの低下とハイイールド債価格の安定的な動きを反映し、多くの機関投資家がベンチマークとするS&P500 指数は2,955の水準を維持している。予想EPS(加重平均)は、コロナショックによる企業業績の急速な落ち込みを予測し、現在は140米ドルまで低下している。これは2017年10月以来の水準だが、この時のS&P500は2,500台で推移していた。現在の水準と比較すると、その差は約400ポイントである。この差はFEDの無制限緩和がもたらしたインパクトを表した数値と言える。そのインパクトは割高の懸念を覆い隠している。事実、実勢相場のボラティリティ(20日間の標準偏差を年率換算した値)は24%台まで低下し、なおも低下基調を辿っている。また、30ポイント台で上下に振れていたVIX指数も28ポイント台まで低下している。投資家の心理は未だ強気にある。
これらの状況を考えるならば、今週のドル円もレンジ相場で売り買いが交錯する展開を予想する。上値の焦点は5月22日のレポート「ドル円と米株 目先の焦点」で指摘した108.00-30レベルで変わらず。108.00、108.10および108.00にはオファーが観測されている。一方、下値の焦点は107円台の維持となろう。107.00にはビッドの観測あり。
S&P500の動向
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