円高進行、ドル円は143円台、精彩欠く米経済指標が続けばさらなる円高も
景気懸念が意識され、米金利が低下の基調にある。米金利の低下は日米利回り格差の縮小を促し、ドル円は143円台まで下落している。今日も重要な米経済指標が発表される。精彩を欠く内容が続けば、ドル円の下落幅が拡大する展開を想定しておきたい。
記事のポイント
・景気懸念を受けアメリカの10年債利回りが3.7%台へ低下している
・米金利の低下を受け、日米利回り格差の縮小が進行している
・日米利回り格差の動きに連動し、ドル円は下値を目指す展開に
・精彩を欠く米経済指標が続けば、ドル円の下落幅が拡大しよう
高まる円高の圧力
円相場が再び円高へ振れている。
精彩を欠いた米国の8月ISM製造業景気指数が再び景気懸念に火をつけつつあり、4日のアメリカ株価指数はダウ平均(DJI)を除き下落して終えた。一方、米債市場では10年債利回り(長期金利)が3.7%台まで低下した。
典型的なリスク回避相場を受け、この日の外為市場では円高が進行した。ドル円(USD/JPY)は143台へ下落した。
円相場の動向:9月4日
ブルームバーグの為替データで筆者が作成
日米利回り格差の縮小が続く
米金利の低下は、日米利回り格差の縮小を促している。10年債利回りの格差は再び3%の水準を割り込んできた。
今日もアメリカの経済指標-週間の新規失業保険申請件数と8月のISM非製造業景気指数が発表される。労働市場の冷え込みと企業活動の縮小を示唆する内容となれば、米金利の低下圧力がさらに高まることが予想される。日銀の植田和男総裁は3日の経済財政諮問会議で、物価の見通しが実現していくならば、引き続き政策金利を引き上げる方針を示した。日銀が追加の利上げを模索するなかで米金利の低下が続けば、日米利回り格差の縮小がさらに進行しよう。
日米の利回り格差:2022年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
今日のアメリカ経済指標
新規失業保険申請件数
今日は週間の新規失業保険申請件数が発表される。直近の新規失業保険申請件数は減少の傾向にある。4週移動平均も低下基調にある。市場予想の23.0万件を下回る場合は、景気懸念の後退につながろう。
問題は、新規失業保険申請件数が労働市場の冷え込みを示唆する場合である。失業保険継続受給者数が増加の傾向にあるなかで、新規失業保険申請件数も予想外に増加すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が警戒している労働市場の冷え込みを市場参加者に意識させよう。労働市場に対する懸念の高まりは、米金利の低下と米ドル安の要因となろう。
米国 新規失業保険申請件数:週次 23年8月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ISM非製造業景気指数(8月)
日本時間23時に8月のISM非製造業景気指数が発表される。ブルームバーグがまとめた最新の市場予想は51.4と、昨日までの51.1から上方修正されている。
アメリカでは、労働者の約8割がサービス業に従事している。新規受注や雇用も含めサービス業の活動が堅調であることが示される場合は、景気懸念の後退要因となろう。
一方、製造業景気指数と同じく市場予想を下回る場合は、景気懸念を高める要因となろう。このケースでは、米株安と米金利の低下が同時に発生することが予想される。円相場は昨日と同じく、円高へ振れる展開を想定しておきたい。
米国 ISM非製造業景気指数:月次 23年8月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円、今日の見通しとチャート分析
米経済指標の内容次第では142円のブレイクも
ドル円(USD/JPY)は、4日のIG為替レポート「不意打ちの円高、米経済指標にらみのドル円、ドル円にらみのポンド円」で取り上げたトライアングルの下限を完全に下方ブレイクしている。昨日は143円台へ下落した。
RSIとMACDがデッドクロスへ転じている状況も考えるならば、IG為替レポートで取り上げたサポート水準143.45レベルの下方ブレイクを想定しておきたい(下の4時間足チャート、緑矢印を参照)。
ドル円:4時間足 7月以降
出所:TradingView
フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準143.58レベルの下方ブレイクは、ドル円が143.45レベルをトライするシグナルとなろう(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。
ドル円が143.45レベルをも難なく下に抜ける場合は、143.00の下方ブレイクと142円台への下落を想定したい。テクニカルの面で注目したいのが、フィボナッチ・エクステンション76.4%の水準142.72レベルである。このテクニカルラインをも下方ブレイクする場合は、142.00のトライおよびブレイクアウトを警戒したい。
上で取り上げた2つの米経済指標がいずれも景気懸念を高める内容となれば、ドル円は142円を下方ブレイクする可能性が高まろう。このケースでは、8月上旬のリスク回避局面で付けた安値141.69レベルが視野に入ろう。
ドル円:1時間足 8月中旬以降
出所:TradingView
反発局面での注目ポイントは?
一方、今日のアメリカ経済指標が米金利の反発と米ドル買いの要因となれば、ドル円(USD/JPY)の反発を想定しておきたい。このケースでは、144円台への上昇とこの水準を維持できるかどうか?に注目したい。
ドル円が144円台を維持する場合は、10日線のトライが焦点となろう。この移動平均線は今日現在、144.80レベルで推移している(上の1時間足チャート、緑ラインを参照)。
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