【新興国通貨】円安進行でトルコリラ円が強気相場を維持、しかしトレンドはドル円次第、目先の見通し
10月に入りトルコリラが対円で上昇している。しかし今の強気相場を維持できるかどうかは、ドル円次第となろう。そのドル円は目先、27日の衆院選と来週のアメリカ雇用関連の経済指標で上下に振れる展開が予想される。トルコリラ円、注目のチャートポイントは?
記事のポイント
・円安の進行でトルコリラ円の上昇幅が拡大している
・ドル円の動向次第でトルコリラ円は、100日線を突破する可能性がある
・そのドル円は目先、衆院選と米国の雇用関連指標で上下に振れるだろう
・トルコリラ円の調整局面では、10日線の維持が焦点となろう
円安進行、対トルコリラで5%下落
10月に入り、外為市場では円安が進行している。円安と同時に米ドル高が進行していることで、日本円は対米ドルでの下落幅が拡大している。
注目すべきは対トルコリラの騰落率である。ブルームバーグの為替データによれば、10月は5%超も対トルコリラで円安が進行している。
日本円の騰落率:10月以降
ブルームバーグの為替データで筆者が作成
ドル円にらみの状況が続くトルコリラ円
トルコリラ円(TRY/JPY)の上昇幅が拡大している主因は、ドル円(USD/JPY)にある。
10月の第1週目に発表された9月雇用統計などの重要指標、そして10月17日の9月小売売上高が予想を上回ったことで、各市場ではアメリカ経済のソフトランディング期待が意識されている。
米ドル相場のトレンドを左右する米債市場では、ソフトランディング期待に加えてトランプ再選の可能性も意識され、長期金利(10年債利回り)が4.2%台へ上昇している。
米金利の上昇は日米利回り格差の拡大を促している。この利回り格差の拡大はドル円の上昇圧力を高め、今週23日には153円台へ到達した。翌日の調整相場(反落)が200日線で止められた状況も考えるならば、ドル円はフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準153.29レベルの上方ブレイクとさらなる上値トライを意識する状況にある(下の日足チャート、黒矢印を参照)。
ドル円がこのテクニカルライン(61.8%の水準)をも完全に上方ブレイクすれば、155.00レベルを視野に上昇幅が拡大する可能性が高まろう(下の日足チャート、赤ラインを参照)。
ドル円のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
ドル円、目先は2つの変動要因に注目
変動要因1:衆議院議員選挙
来週もドル円(USD/JPY)が強気相場を維持できるのか?この点を考える上で注目すべきイベントが2つある。
一つは、 10月27日に行われる衆議院議員選挙である。先週以降、与党過半数割れの報道が多く見られる。
今年の7月から8月5日にかけて発生した日本株の下落に伴い、外為市場では円高が進行した。今回の衆院選で実際に与党が過半数割れとなれば、石破首相の求心力低下は必至となろう。政治の不透明感は投資家、特に海外の投資家が最も警戒するファクターである。ゆえに、与党大敗(過半数割れ)ならば、週明けの日本株は大幅下落で始まる可能性があり、かつ来週は株安の1週間となる可能性もある。
外為市場ではリスク回避の円高を警戒したい。しかし円相場が円高へ振れても、それは一時的な動きで終わることが予想される。政治の不透明感が意識され日本株は下落している。対照的に円相場は冒頭で述べたとおり、円安優勢の状況にある。ドル円は153円台まで上昇する局面が見られた。
実際に政治の不透明感が鮮明となれば、むしろさらなる円安要因となる可能性の方を警戒しておきたい。円安が続けば、ドル円は上で述べたレジスタンスポイントをトライすることが予想される。ドル円の上昇幅が拡大すれば、トルコリラ円(TRY/JPY)も追随しよう。
衆議院議員選挙の焦点は与党で過半数233議席の維持
変動要因2:米雇用統計など雇用関連指標
来週、ドル円(USD/JPY)を動かすもうひとつの要因が、米国の雇用関連指標である。
来月1日に10月の米雇用統計が発表される。その前には、9月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数(10月29日)、10月のADP雇用統計(10月30日)そして第3四半期の雇用コスト指数(10月31日)など、アメリカ労働市場の行方を考えるうえで重要な雇用関連指標が目白押しである。
雇用統計も含めて労働市場の堅調さが確認される場合は、ドル円とトルコリラ円(TRY/JPY)の押し上げ要因となろう。
米国の雇用統計 各項目の動向:2023年10月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
トルコリラ円の見通しとチャート分析
上値の焦点は100日線の攻防
上で述べたとおりトルコリラ円(TRY/JPY)は、ドル円(USD/JPY)のトレンドと連動している。特に今年の3月以降、その動きが鮮明となっていることが下のラインチャートから分かる。今日から来週にかけてドル円が強気相場を維持する場合、トルコリラ円も上昇幅が拡大するだろう。
ドル円とトルコリラ円のチャート:日足 年初来
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円の上昇幅が拡大すれば、トルコリラ円はフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準4.430レベルを完全に突破することが予想される。このケースでは、100日線のトライおよびブレイクアウトが焦点として浮上しよう。この移動平均線は今日現在、4.465レベルで推移している(下の日足チャート、青ラインを参照)。
トルコリラ円のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
下値の焦点は10日線の維持
一方、衆院選や米国の雇用関連指標がドル円(USD/JPY)の下落要因となれば、トルコリラ円(TRY/JPY)も調整の反落相場となろう。このケースでは、10日線の維持が焦点となろう。この移動平均線は今日現在、4.370レベルで推移している(上の日足チャート、緑ラインを参照)。
トルコリラ円が10日線を目指すサインとして、下の1時間足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。
38.2%戻しの水準4.413レベルは、レジスタンスラインからサポートラインへ転換している。半値戻しの水準4.397レベルは、今月22日の欧州タイムから23日の早朝にかけて相場をサポートした経緯がある。61.8%の水準は38.2%戻しと同じくサポート転換の可能性を意識する水準である。1時間足のRSIが売られ過ぎの水準へ到達する局面で、トルコリラ円が上で取り上げたサポートポイントをトライする場合は、反発相場を意識したい。
一方、トルコリラ円が61.8%戻しを下方ブレイクする場合は、10日線をトライするサインと捉えたい。
トルコリラ円のチャート:1時間足 10月18日以降
出所:IGチャート
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