米金融政策の焦点はペースから”期間”と”水準”へシフト/今日の注目材料は米雇用統計
11月のFOMCイベントを受け米金利の上昇幅が拡大している。一方、米国の株式市場は下落幅が拡大している。これらの動きは米ドル相場のサポート要因となる。今日の焦点は10月米雇用統計。米金融引き締め政策の長期化が意識されているタイミングで強い内容となれば、米ドル高トレンドの加速を予想する。ドル円とユーロドルの焦点は?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
米金融政策の焦点はペースから「期間と水準」へ
【サマリー】
・利上げペースはもはや米金融政策の焦点でなくなった
・米金融政策の新たな焦点は“期間”と“水準”
・10月米雇用統計とドル円の焦点について
・ユーロドルは下落幅の拡大を警戒する局面にある
・パウエル会見で浮上した米金融政策の新たな焦点
連邦準備理事会(FRB)は2日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、予想どおり0.75%の利上げを決定した。
FOMC声明やパウエルFRB議長の会見を受け12月FOMC以降、利上げペース減速の可能性が浮上している。
しかし、2日と3日の米国市場は「米金利の上昇→米株安」の展開となった。そして外為市場では、再び米ドル買いの圧力が高まっている。
FOMC後の各市場の反応は、利上げのペースがもはや米金融引き締め政策の焦点ではなくなったことを示している。
11月FOMC以降の各市場のパフォーマンス
利上げのペースに変わる米金融引き締め政策の新たな焦点は、“期間”と“水準”である。
パウエルFRB議長はFOMC後の会見で、次回会合以降の利上げペースの減速を示唆する一方、金融引き締め政策でより重要なことは「どの時期まで続けるのか」にあると指摘した。
そして最近のデータを考慮すれば、最終的な政策金利の水準は「従来の予想よりも高くなる」と述べ、利上げの停止については「かなり時期尚早」とし、利上げ停止の楽観論を打ち砕いた。
パウエル会見を受け金融引き締めの長期化観測が高まり、利上げ政策の最終地点(ターミナルレート)が5%台へ上昇している(11月3日時点)。9月FOMC(9月21日開催)を終えた時点では、4.6%前後だった。
米政策金利の予想推移
また、利上げのペース減速の可能性が浮上しても12月利上げ予想は50ベーシスポイント(bp)と75bpで割れている。
11月のFOMCであらためて確認されたパウエルFRBのインフレ抑制重視のスタンスと市場の反応(=米債市場と短期金融市場の反応)を考えるならば、米株(そして世界の株式)は、今年1年を通して下落リスクを警戒する状況が続く可能性がある。
そしてこの状況は、米ドル相場のサポート要因となろう。FOMC以降、外為市場では主要通貨で米ドルの上昇幅が拡大し、ドルインデックス(DXY)は昨日、113ポイントの水準を回復する局面が見られた。
12月の利上げ予想
米雇用統計とドル円の焦点
・149.00と149.50のトライおよびブレイク
11月FOMCイベントの内容を受けた各市場の反応、特に米金利が再び上昇基調にあることを考えるならば、ドル円(USDJPY)は上値トライを意識する局面にある。
通貨オプション市場のリスクリバーサル(1ヶ月)では、ドルプットのトレンドが急速に後退している。
そして日足チャートで直近の動きを確認すると、11月2日に急落する局面が見られたが、8月安値130.39レベルを起点とした短期サポートラインの維持に成功した。この時は、長い下ヒゲが示現した。先月27日に145.00の維持に成功したことも考えるならば(この時の安値は145.10レベル)、145円台での米ドル買いの需要は強い。なお現在は、21日MAの水準(147.82レベル)を突破している。
上で述べた状況を総合的に判断するならば、ドル円の焦点はこのレポートで指摘し続けている149.00および149.50のトライそしてブレイクが焦点となろう。
ドル円のチャート
・10月米雇用統計
ドル円(USDJPY)が149円台を目指すカタリストとして本日注目したいのが、10月米雇用統計である。
パウエル会見を受け、金融引き締め政策の長期化観測が強まっている。このタイミングで米雇用統計が強い内容となれば(特に非農業部門雇用者数変化と平均時給が予想以上となる場合)、米国市場では「米金利の上昇幅が拡大→米国株の下落幅が拡大」の展開が予想される。
米金利の上昇と米株安が同時に発生する場合、外為市場では米ドル高の圧力が最も高まるだろう。ドル円は米ドル高にサポートされ、上で述べた149.00および149.50を目指す展開が予想される。
一方、米雇用統計が総じて予想以下の内容となれば、米金利の上昇が一服することが予想される。このケースでは、「米ドル売り→ドル円の下落」を想定しておきたい。ドル円の変動幅が拡大傾向にあることを考えるならば、昨日の安値147.11レベルもしくは短期サポートラインが推移している146.45レベルまでの下落を想定しておきたい(上の日足チャートを参照)。
米国の非農業部門雇用者数変化と平均時給の推移
ユーロドルのチャートポイント
・短期サポートラインをブレイク 下落幅の拡大を警戒
対ユーロ(EURUSD)でも米ドル高の加速を意識する局面にある。
日足チャートで直近の動きを確認すると、半値戻し(6月27日高値-9月28日安値)で上昇が止められて以降、連日陰線引けとなっている。
今月2日の日足ローソク足では長い上ヒゲが示現し、パリティ水準(1.0)のトライに失敗。そして昨日は、21日MAで相場の反発が止められ、短期サポートラインを完全に下方ブレイクした。
これら一連のトレンドを考えるならば、ユーロドルは下落幅の拡大を警戒すべき局面にある。
ドル円(USDJPY)と同じく、目先のカタリストは10月米雇用統計となろう。強い内容ならば、0.9631レベル(10/13安値)を視野に下落幅の拡大を警戒したい。この水準のブレイクは、現時点での今年安値0.9535レベルをトライするシグナルとなろう。
一方、さえない米雇用統計で相場が反転しても、米金融引き締め政策の長期化と欧州経済の景気後退リスクが高まっている状況を考えるならば、ユーロドルの戻りは限定的と予想する。目先は、昨日の上値を止めた21日線(0.9826レベル)の突破が焦点となろう。
しかし、この移動平均線の突破に成功しても、0.99レベルで反落する展開を想定しておきたい。
ユーロドルのチャート
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