パウエル講演を“ハト派”と受け止めた市場
パウエル講演で米金利が低下。米金利の低下は株高と米ドル安要因となった。ドル円は新たなサポートポイントを探る展開が続いている。一方、ユーロ円はドル円の下落に影響される状況にある。ドル円とユーロ円の焦点と注目のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートにて。
パウエル講演を“ハト派”と受け止めた市場
【サマリー】
・パウエルFRB議長は12月FOMCでの利上げペース減速を示唆
・パウエル講演に目新しい材料はなかったが米金利が低下し米国株は大幅上昇の展開に
・米金利の低下と米株高が同時に発生したことで外為市場では米ドル相場が下落した
・新たなサポートポイントを探る状況が続くドル円
・ドル円の動きに影響を受けるユーロ円も下値トライを意識する局面にある
パウエル講演と各市場の反応
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11月30日、米ワシントンのブルッキングス研究所で講演を行った。
市場の関心が高い利上げペースの減速については、「早ければ12月の連邦公開市場委員会(FOMC)になる」と指摘した。
また、金融政策の効果が実体経済や物価に影響を及ぼすには時間差があること、最終的な利上げの到達点(ターミナルレート)については上方修正の必要があると述べた。
先月23日に公表されたFOMC議事要旨で、多くのメンバーが利上げペースの減速について主張していたことが判明しており、今回のパウエル講演では目新しい材料は見られなかった。
しかし米債市場では利回りが低下し、米金利の低下は米国株の上昇要因となった。特にナスダック総合指数と100指数(NDX)はともに4%超の大幅上昇となった。
米金利の低下と米国株の上昇が同時に発生したことで、外為市場では米ドル売りの圧力が高まった。
今日は幾人かのFEDスピーカー達の講演-ダラス地区連銀のローガン総裁、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁、ボウマンFRB理事そしてバーFRB副議長らの講演などが予定されている。
金融政策についての発言を禁じるブラックアウト期間に入る前の彼らの発言内容が、今日の米金利と米ドル相場の変動要因となる可能性がある。
11月30日の米国市場と米ドル相場の動向
200日線ブレイクの可能性が高まるドルインデックス
パウエル講演では特に目新しい材料は見られなかった。それにもかかわらず、外為市場では米ドル相場の下落圧力が再び高まっている。
米ドル相場の大まかなトレンドを示すドルインデックス(DXY)の動きを確認すると、昨日は日足ローソク足で陰線引けとなり、200日線(MA)をトライするムードにある。
昨年の6月下旬以降、ドルインデックスはこの移動平均線(200日線)を一度もブレイクすることがなかった。しかし「インフレ懸念の後退→米利上げペース減速の観測→米金利のトレンド転換(上昇→低下)」が市場で強く意識されている状況を考えるならば、ドルインデックスの200日線ブレイクの可能性が高まっている。
ドルインデックスは、すでに今年の米ドル高トレンドを象徴するサポートラインを下方ブレイクしている。一気に200日線をも下抜ける展開となれば、米ドル高のトレンド転換(米ドル安への転換)シグナルがテクニカルの面でまたひとつ点灯することになろう。
ドルインデックスのチャート
ドル円とユーロ円の焦点とチャートポイント
ドル円(USDJPY)
現在のドル円(USDJPY)は、株式動向よりも米金利の動向にトレンドが左右されている。事実、昨日のドル円は株高よりも米金利の低下に反応し、陰線引けとなった(日足のローソク足)。10日線(MA/139.45レベル)すら突破できない状況を考えるならば、ドル円の地合いは弱い。ゆえに今日のドル円も下値トライを意識したい。
ドル円が下落する場合、目先の焦点は137円ミドルの攻防となろう。先月28日の安値137.49レベルを完全に下方ブレイクする場合は、ドル円の下落幅がさらに拡大するシグナルと想定しておきたい。
実際にドル円が137円ミドル以下の攻防へシフトする場合は、このレポートで何度か取り上げているフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準135.48レベルを視野に下落幅の拡大を想定しておきたい。
一方、ドル円が反発する局面では、上で述べた10日線の突破が目先の焦点となろう。この移動平均線の突破は、140.00レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円の反発要因として本日注目すべき材料は、10月PCEデフレーターである。インフレリスクの根強さを示唆する内容となれば、「米金利の反発→米ドルのショートカバー(買戻し)→ドル円の反発」が予想される。
だが、上で述べたとおり米金利のトレンド転換に連動し、米ドル相場(ドルインデックス)もさらなる下落を意識する局面に差し掛かっている。
昨日のドル円の日足ローソク足のかたちを確認すると、140.00トライに失敗し(10日線で上昇が止められ)長い上ヒゲが示現した。
さらに142.00レベルでの “レジスタンス転換” の可能性も考えるならば、ドル円はやはり新たなサポートポイントを探る展開が続くと予想する。
ドル円のチャート
ユーロ円(EURJPY)
一方、クロス円の動向を確認すると、ユーロ円(EURJPY)がドル円の動きに強く影響を受けている。
この点について円安が加速した今年3月以降の相関関係(相関係数)を確認すると、ユーロ円とドル円のそれが0.6となっており高い相関関係にあることがわかる(ユーロ円とユーロドルの相関係数は0.46)。
ユーロ円、ドル円、ユーロドルの相関関係
昨日は、パウエル講演を受けてユーロドル(EURUSD)が1.04台へ再上昇する展開となった(米ドル安がユーロドルのサポート要因となった)。
しかしユーロ円はドル円の下落に影響され、21日線(MA/144.85レベル)で反発が止められる展開が続いている。この状況は、ユーロ円に及ぼすドル円の影響力が強いことを示唆している。
そのドル円は現在、新たなサポートポイントを探る展開となっている。このためユーロ円も、下値トライを意識すべき局面にある。
ユーロ円が下値トライとなる場合、まずはこのレポートで何度か言及してきたフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準142.67レベルの攻防に注目したい。11月11日の下落局面では、このテクニカルポイントでサポートされた経緯がある。また現在は、89日線(EMA/142.80レベル)が38.2%のすぐ上で推移している。
ユーロ円がこれらテクニカルポイントの水準で2度サポートされる場合は、短期的な反発相場-21日線や短期レジスタンスライン(トライアングル上限)のトライを予想する。
一方、ドル円の下落幅が拡大する場合、ユーロ円は89日線や38.2%の水準を一気に下方ブレイクする展開が予想される。このケースでは、半値戻しの水準140.90レベルを視野に下落幅の拡大を警戒したい。
ユーロ円のチャート
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