ポンド円の展望とテクニカルポイントについて
4月の消費者物価指数(CPI)で英国の根強いインフレが確認された。短期金融市場では、イングランド銀行(BoE)が利上げ政策を維持せざるを得ない状況を織り込み始めている。ゆえに日英の金融政策スタンスの差が今後も意識される可能性が高いだろう。今週のポンド円の展望は?注目しておきたいテクニカルポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※今週の外為市場とドル円の分析記事についてはこちらのレポートをご覧ください
※次回のレポート配信は、6月2日(金)となります
ネットロングへ転じているポンド
こちらのレポートでは、円のネットショートが22年10月下旬以来となる8万枚まで積み上がっていることを指摘した。
円とは対照的にポンドは4月以降、ネットロングへと転じている。直近(5月23日終了週時点)は1万1,589枚と若干減少したものの、ネットロングの状況を維持している。
投機筋の円ポジション動向:英ポンド
※マイナス(黒):ネットショート / プラス(緑):ネットロング
対円でポンドの上昇幅が拡大
ドル円(USDJPY)と同じく、ポンド円(GBPJPY)でも上昇幅が拡大している。
ポンド円は5月11日、重要ポイントの168.00レベルを下方ブレイクする局面が見られた。しかし、168円台の維持に成功すると上昇幅が拡大し、5月に入り3%以上の上昇率となっている。他の主要な通貨ペアと比較しても、対円での上昇率が抜きん出ている(下のパフォーマンスチャートを参照)。
現在の上昇トレンドの土台となっているのが、リスク選好相場(日米の株高)と日英の金融政策スタンスの差である。
今月24日に英統計局が発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.7%の上昇と、予想の8.2%を上回った。同比のコア指数も6.8%と予想の6.2%を上回り、同国のインフレ圧力の根強さを示す内容となった。
4月CPIの結果を受け、短期金融市場では英国の中央銀行であるイングランド銀行(BoE)が5.5%台まで政策金利を引き上げることを予想し始めている。4月CPIが発表される23日時点での予想ターミナルレートは5.0%付近だった。つまり短期金融市場では、BoEが今年1年を通して利上げ政策を維持する状況(維持せざるを得ない状況)を織り込み始めている。
ポンド相場のパフォーマンス
英政策金利の予想推移
目先は175円トライが焦点に
BoEによる利上げ政策の長期化が意識される一方、植田日銀は金融緩和政策の維持を表明している。日米株式が高値圏での攻防を維持している状況も考えるならば、ポンド円(GBPJPY)は調整の反落を挟みながら、さらなる上値トライを想定する局面にある。
ポンド円のトレンドを月足チャートで確認すると、2020年3月の安値124.08レベルを起点としたサポートラインを形成しながら、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準(2015年6月の高値195.88レベルと2016年10月の安値123.04レベル)を難なく突破している。
10日MA(今日現在172.22レベル)が短期のサポートラインとして意識されている状況も考えるならば(一番下の日足チャートを参照)、2015年1月から4月にかけて相場をサポートし、かつ翌年の2月にレジスタンスへ転換した経緯のある175.00レベルをトライするかどうか?ポンド円の上昇局面では、この点を意識したい。
ポンド円が175.00レベルを上方ブレイクした後、反落の局面でこの水準(175円)の維持に成功する場合は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準178.69レベルを上限と想定し、新たなレジスタンスの水準を探る展開が続くと予想する。
ポンド円のチャート
反落局面での焦点は?
一方、ポンド円(GBPJPY)が反落する局面では168円レベル(フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準)を下限と想定し、まずは10日MAの維持に成功するかどうか?この点が焦点となろう。この移動平均線は今日現在、172.20台まで上昇している。
ポンド円が10日MAを下方ブレイクする場合、次の焦点は171.20レベルの維持となろう。この水準では、レジスタンスからサポートへの転換が確認されている。
今日現在、21日MAが171.00付近まで上昇している。ポンド円の上昇トレンドが続けば、21日MAは171.20レベルへ近づくだろう。相場をサポートした経緯のあるこの移動平均線の上昇基調も考えるならば、171.20レベルを重要なサポートポイントとして意識しておきたい。
ポンド円の下落幅が拡大し170円台の攻防へシフトする場合は、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準170.26レベルまで下落幅が拡大する展開を警戒したい。この水準(170.26レベル)をトライする場合は、170円台を維持できるかどうか?を見極める攻防となろう。
ポンド円が170円割れとなれば、下限の168.00レベルを視野に下落幅の拡大を警戒したい。
ポンド円のチャート
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