米国株失速　S&P500連日急落　中東緊迫で半導体株など見通し悪化

アメリカの株式市場に急ブレーキがかかった。15日のS&P500種株価指数の終値は前週末比1.20％安。先週末12日の1.46％安に続く、大幅安となった。1.2％を超えるマイナスが連続するのは地銀の経営破綻を機に銀行システムへの不安が拡大した2023年3月以来だ。また投資家の不安度を示す「恐怖指数」も急上昇している。背景にあるのは物価上昇圧力の強さが招いた長期金利の上昇や中東情勢を踏まえたリスク回避姿勢。米国企業の決算発表シーズンを迎える中で、S&P500の見通しにとっては悪条件が重なっている。

S&P500は2023年3月以来の大幅な連続急落

S&P500（SPX）の15日の終値は5061.82。1.2％を超えるマイナスが続くのは、2023年3月9日に1.85％安、翌10日に1.45％安を記録して以来だ。2023年3月はシリコンバレーバンク（SVB）の巨額損失が8日に発表され、10日の経営破綻に至った時期で、株式市場で不安が急拡大していた。

同時に、ウォール街の恐怖指数と呼ばれるVIX指数（VIX）は急上昇している。VIXを算出しているシカゴ・オプション取引所（CBOE）によると、15日のVIXの終値は19.23で、10月13日（19.32）以来の高さ。当時は米連邦準備制度理事会（FRB）の利上げへの警戒が強まっていたほか、米国政治の混乱が米国債の信用を落とし、金利高を招くシナリオも意識されていた時期だった。VIX指数はS&P500のオプション取引の動向から算出される数値で、数字が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。

アメリカの3月小売売上高は強い結果　長期金利上昇

投資家心理悪化の背景にあるのは、米国経済の底堅さを受けて、FRBの利下げが遠のくとの観測だ。15日に発表された3月の小売売上高は前月比0.7％増となり、事前予想の0.3％増を超える結果。また、自動車と自動車部品を除いたベースでも1.1％増となり、事前予想（0.4％）を大きく上回った。LSEGによると、15日のニューヨーク債券市場での長期金利（10年物米国債利回り）の終値は4.628％で、11月13日（4.632％）以来の高さになっている。

また、中東情勢の緊迫化も投資家の不安をかきたてる一因だ。イスラム組織ハマスが拠点とするパレスチナのガザ地区への攻撃を続けるイスラエルに対して、イランが13日にドローンと弾道ミサイルで攻撃。地政学リスクの高まりは有事でも価値が落ちない安全資産とみなされている金の人気を高め、金価格（スポット金）は最高値更新を繰り返している。金の価格上昇にみられるリスク回避姿勢はS&P500の先行きを暗くする要因だ。

半導体株やハイテク株の見通しに不安広がる

こうした中、アメリカの半導体株やハイテク株は先行きが危ぶまれる。半導体大手のNVIDIA（エヌビディア、 NVDA）は15日まで2営業日連続で2.5％前後の下落を記録。ブロードコム（AVGO）やアドバンスド・マイクロ・デバイセズ（AMD）も大幅な下落に見舞われている。また、大手ハイテク株でも電気自動車（EV）のテスラ（TSLA）やSNS大手のメタ・プラットフォームズ（META）、マイクロソフト（MSFT）などが軒並み値を下げている。

TSMCの決算発表はS&P500の追い風になるか

今後のS&P500の先行きはこれらの企業の業績への期待に左右されそうだ。日本時間18日には、半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造（TSMC）が2024年1-3月期決算を発表。1-3月期の実績に加え、4-6月期の見通しで投資家の期待に応えられれば、TSMCの株価（TSM）にとっての好材料だけでなく、米国のハイテク企業の半導体投資継続を裏付ける好材料として受け止められる可能性がある。

S&P500は銀行不安が高まった3月やFRBの利上げが警戒された10月には一時的に値を下げたものの、その後は長期金利の低下を背景にして上昇基調に戻っていった。ただ、足元では物価上昇圧力の強さが注目されやすい状態が続いており、S&P500にとって厳しい局面が続く可能性もありそうだ。