2024年の米国株見通しは? S&P500上昇控えめ 下落予想も
S&P500の来年の終値は現状から5.4%高の見通し。上昇率予想は過去の平均を下回り、下落への不安はぬぐえない。
アメリカの2024年の株式相場は堅調な推移が予想されている。LSEGがまとめたS&P500種株価指数の来年末の終値の市場予想は現状から5.4%高の水準。米連邦準備制度理事会(FRB)のこれまでの利上げにも関わらず、大幅な景気後退や株価下落は回避されるとの見立てが優勢のようだ。ただし予想されている上昇率は2000年以降の騰落率の平均を下回る控えめな数字。一部では現状から8%の値下がりを予想する声も出ている。過去にはFRBの利下げ局面で株価が大きく下落したケースもあり、2024年の株式相場は気の抜けない値動きとなりそうだ。
2024年のS&P500は5.4%上昇の予想
市場関係者は2024年のS&P500(SPX)は上半期の間は横ばいが続き、下半期に上昇に転じるとみている。LSEGによる金融各社の市場予想のまとめによると、S&P500の6月末の終値予想の平均は4593で、12月末終値の予想の平均は4795。直近(12月6日)の終値である4549.34との比較では、6月末が1.0%高、12月末が5.4%高にあたる水準だ。
各社が想定するメーンシナリオから浮かぶのは、株式相場が2023年に急上昇した金利に苦しみながらも大幅な値下がりには至らず、下半期に活気を取り戻すという絵姿だ。投資銀行大手のゴールドマン・サックスは11月15日に公表したレポートで「米国経済が年間を通して緩やかに拡大し、景気後退を回避することを想定している」とし、S&P500の先行きについて6月末に4500、12月末に4700と予想している。
アメリカの物価上昇減速が好材料に
こうした筋書きの背景には、今年7月まで利上げを続けてきたFRBが来年は利下げに転じるとの見立てがある。FRBのこれまでの利上げの結果、長期金利(10年物米国債利回り)は10月下旬に16年3か月ぶりとなる5%台に到達。株式投資の魅力が相対的に薄らぎ、株価への下押し圧力を強めてきた。しかしこのところは物価上昇の減速が感じられた結果、FRBが来年3月にも利下げに転じるとの見方が拡大しており、S&P500は今月1日に年初来高値を更新している。来年になって実際にFRBが利下げに転じれば、年後半は株価上昇の勢いが増す可能性があるというわけだ。
ただ、予想されている5.4%という上昇率は、2000年以降の年間騰落率の平均値(6.4%)と比べれば控えめだ。また、2022年1月3日につけたS&P500の史上最高値(4796.56)にわずかに届かないという見通しの平均値は、金融市場で先行きに対する不安がくすぶっていることの現れにもみえる。
アメリカ大統領選も株式市場混乱の要因か
欧米メディアによると、JPモルガンのストラテジストは11月29日、S&P500が2024年末に4200まで値下がりするとの見通しを公表。現状からは7.7%安という水準で、2023年10月27日につけた直近の安値(4117.37)に近づく。世界経済の成長減速や家計貯蓄の減少、地政学リスクの高まり、米国の大統領選挙が政策転換をもたらす可能性などを不安要因として挙げているという。
過去にはFRBの利下げサイクルが株価の下落と重なったケースもある。FRBが2007年9月にそれまで5.25%だった政策金利を引き下げ始めた際は、S&P500が10月上旬につけた当時の史上最高値から約11か月で約20%下落。その後に起きたリーマン・ショックを経て、2009年3月には史上最高値からの下落率が56%に達した。金融システムの健全性をめぐる不安が欧米で深刻化し、大手金融機関が相次いで経営破綻や政府による救済に追い込まれた当時と現在とでは経済環境は大きく異なるが、現在の物価上昇は依然として異例の厳しさで、金利水準はリーマン・ショック前と同等といえるレベルだけに、正常化への道のりでは波乱が起きることも考えられそうだ。
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