中国が渡航規制を緩和する中、旅行関連株が上昇
中国の渡航規制緩和を受け、百貨店や航空会社株は10日に急伸した。しかし、中国への投資家は中国人観光客の購買力を過大評価しているかもしれない。
訪日外国人の大きな割合を占める中国が、新型コロナウイルス関連の渡航規制を緩和し、観光のリバウンドへの道筋が示されたことで、旅行株は10日に急伸した。
中国の観光当局は、これまで禁止していた米国、日本、韓国、オーストラリアなど向けの団体旅行を解禁することを発表した。これは「ゼロコロナ政策」を徹底してきた中国経済にとって、大きな転換点となる。
投資家の関心は、2019年に2550億ドルに上った中国人観光客の購買力がどこに注がれるのかに向いている。
回復傾向にある観光業
日本の観光業にとって、この数年間は厳しいものであった。新型コロナウイルス感染拡大前の訪日観光客数は、政府が主導した観光政策と相まり大幅な増加傾向にあった。
実際、訪日観光客数は2013年から2019年の間に3倍増となって3000万人を突破し、観光業は世界3位である日本のGDP(国内総生産)のうち3590億円を占めた。観光関連の出費のうち、約17%は海外からのものであった。
新型コロナウイルスは外出制限などを伴ったため、日本の観光業に大きな影響を与えた。2019年にGDPの11.2%を占めていた観光業は、2020年には4.4%まで下落した。
新型コロナウイルスは終息まで長引いたため、観光客による出費の大幅増が見込まれた2021年の東京オリンピックも、大きな機会損失となってしまった。
このような状況の中での中国による団体旅行解禁は、トレーダーや投資家にとっては安心材料となっている。
8月10日、ホテルチェーンや百貨店、空港管理会社などの旅行関連株が上昇した。特に中国人観光客を主な顧客層としている会社の株は大幅高となった。
中でも上昇が目立ったのは日本空港ビルデング(9706)で、10日に9.7%上昇した。同社は東京国際空港(羽田空港)を運営しており、直近では旅行客の増加に対応するため620億円をかけて拡張工事を行なった。
ホテルを運営する共立メンテナンス(9616)の株価も同日、同じ理由で11.3%上昇した。同社は中国人観光客の間での人気が高い。
また、中国人観光客のいわゆる「爆買い」利益を享受する百貨店株も大幅に上昇した。2つのブランド名を冠した百貨店を運営する三越伊勢丹ホールディングス(3099)は、10日に5%近く上昇した。同様に、主要な百貨店運営企業の一つである高島屋(8233)は3.7%上昇した。
先の読めない消費行動
中国人観光客が戻ってくることを期待する声は高いものの、これから訪日する観光客が2019年水準の購買意欲を持っているかを訝しむ人は多い。
中国経済はこの数年の間で最悪の水準にあり、8月第3週には物価水準が0.3%の下落を記録したことで再びデフレとなった。デフレになると、消費者は価格の下落を待ってから物品を購入するため、消費意欲を押し下げる要因となる。これが進むと経済成長を減速させるほか、不況の引き金ともなる。
同様に、中国人観光客の回帰に歓喜する投資家やトレーダーの喜びは、度を超えたものであるリスクがある。
旅行株の上昇は日経平均株価の大幅上昇には繋がらず、10日の日経平均株価は0.84%高の32,473円65銭で取引を終えた。
一方、米ドル/円相場では7月中ばから続いているドル高円安がさらに進み、中国元も対円で上昇した。
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