【ドル円 (USD/JPY)】今週の注目材料、見通しそして注目のチャートポイント
今週のドル円(USDJPY)は、2月雇用統計などの米経済指標で上下に振れる展開が予想される。内容次第では、パウエル議長らFRB高官の発言も材料視される可能性があろう。今週のドル円の見通しは?注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・今週の米ドル相場も重要な米経済指標で上下に振れる展開が予想される
・7日のECBイベントでは、ラガルド総裁の会見で金融政策の方向性を見極めることになろう
・今週のドル円は下値トライを警戒しておきたい
・注目しておきたいドル円のチャートポイントについて
今週の注目材料1:米国の経済指標
先週1日の外為市場は、日本円以外の主要通貨で米ドル安優勢の展開となった(下のパフォーマンスチャートを参照)。
この日発表された2月のISM製造業景気指数は47.8と、市場予想の49.5を下回った。さえない経済指標を受けた米金利の低下が米ドル安の要因となった。
米ドル相場の動向:3月1日
米ドル相場のトレンドを左右する米債市場は現在、経済指標の内容で上下に振れる展開となっている。ゆえに今週も、経済指標が米ドル相場の方向性に影響を与えるだろう。
今週もいくつかの重要な米経済指標が発表される。なかでも注目したいのが、5日に発表される2月ISM非製造業景気指数と8日の同月雇用統計である。
ISM非製造業景気指数
ISM非製造業景気指数はサービス業の景況感を示す重要な指標である。現時点での市場予想は53.0と、前月の53.4から低下する見通しとなっている。
総合の内容も重要だが、雇用指数にも注目したい。2月のISM製造業景気指数の雇用は45.9と、昨年7月以来の低水準となった。製造業と同じくサービス業でも雇用の縮小が確認される場合は、2月の雇用統計に対するネガティブな見方が高まる要因になり得る。
ISM非製造業景気指数でサービス業の先行き不透明感が意識される場合は、米金利の低下要因となろう。米金利の低下幅が拡大する場合、外為市場では米ドル安の展開が予想される。
一方、サービス業の堅調さが確認される場合は、「米金利の上昇→米ドル高」を想定しておきたい。強い雇用に裏打ちされたサービス業の堅調さが確認される場合は、米ドル高がより進行することが予想される。
米国 ISM非製造業景気指数の動向:月次23年以降
雇用統計
2月の米雇用統計も今週の米金利と米ドル相場の変動要因となろう。
現時点での市場予想は以下の通りである(下のチャート、赤の棒グラフとドットを参照)。
非農業部門雇用者数変化は1月の35.3万人と比べ縮小することが予想されるが、それでも20万人増と、労働市場は底堅さを維持する見通しである。この点については、3.7%で横ばい予想の失業率も示唆している。
労働市場の堅調さが確認される場合は、「米金利の上昇→米ドル高」を想定しておきたい。
賃金が予想外に上昇する場合は雇用と景気の堅調さに加えて、インフレリスクの根強さも外為市場で意識されよう。ゆえにこのケースでは、米ドル高がより進行する展開を想定しておきたい。
逆に雇用統計で労働市場の軟化が確認される場合は、「米金利の低下→米ドル安」の展開が予想される。しかし、2月の雇用統計が米ドル安の要因となっても、その下落幅は通貨によってまちまちとなることが予想される。
米国 雇用統計の動向:月次23年以降
注目材料2:ブラックアウト期間前のFRB高官の発言
今週9日より、連邦準備制度理事会(FRB)の高官らが金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間に入る。ゆえに今週は、FRB高官らの発言内容も外為市場で材料視される可能性がある。
より注目すべきは、パウエルFRB議長の議会証言である。同氏は6日に下院金融委員会、7日に上院銀行委員会で議会証言に臨む。
米国の経済指標では、労働市場と個人消費の堅調さを示唆する内容が続いている。インフレは鈍化の傾向にあるが、FRBの期待どおりに低下しなリスクがくすぶる。
ゆえにパウエルFRB議長が今後の金融政策について言及する場合は、「データ次第で慎重に判断する」という従来の姿勢を維持するだろう。
講演などのイベントに参加する他のFRB高官らが金融政策(利下げ)について言及する場合も、同様の姿勢(データ次第の姿勢)を踏襲すると思われる。
FRB高官らの発言内容に目新しい材料がなければ、外為市場を大きく動かす可能性は低い。
一方、FRB高官から利下げ政策への転換について予想外に前向きな発言が聞かれる場合、外為市場は米ドル安で反応しよう。しかしこのような展開となっても、米ドル安の持続性は、上で述べた経済指標の内容次第と予想する。
注目材料3:欧州中央銀行(ECB)理事会
今週7日に欧州中央銀行(ECB)は理事会を開く。4会合連続で主要な政策金利を据え置くことが予想される。ゆえに今回の理事会の焦点は、今後の政策動向にあろう。
この点を見極めるうえで市場参加者は、最新の物価見通しとラガルド総裁の会見に注目するだろう。23年12月時点の物価見通しは25年が2.1%、26年が1.9%だった。
2月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は前年同月比で2.6%まで低下した。一方、ECBが注視するコア指数は同比3.1%と、7か月連続で鈍化した。しかし、コア指数は未だに物価目標の2%を大きく上回る状況にある。そして賃金の動向と中東情勢次第では、インフレが鈍化しないリスクにECBが直面する可能性がくすぶる状況にある。
インフレ鈍化の傾向を踏まえ、ラガルドECBが最新の物価見通しを小幅に下方修正する可能性がある。しかしインフレ再燃のリスクを重視し、ラガルド総裁は定例会見で早期の利下げについて否定的な見解を示すことが予想される。
ラガルドECBは今夏以降の利下げを想定しているが、短期金融市場では6月理事会での利下げを想定する状況にある。タカ派のECB理事会となれば市場が抱く早期の利下げ観測がさらに後退することで、外為市場はユーロ買いで反応することが予想される。
欧州中央銀行 政策金利の予想推移
ドル円、今週の見通しとチャートポイント
下値トライを意識する状況に
今週のドル円(USD/JPY)は、上で述べた米国の経済指標で上下に振れる展開が予想される。
通貨オプション市場のリスクリバーサルの動向を確認すると、急速にドル・プットへ傾く状況にある。
下で述べる日足ローソク足のかたちとオシレーター系指標のトレンドも考えるならば、今週は下値のトライを警戒しておきたい。
ドル円とリスクリバーサルのチャート:日足23年7月以降
下落の局面で注目したいチャートポイント
ドル円(USD/JPY)の日足チャートをみると、先週1日は上影陽線となった。高値圏での上影陽線は下落を暗示する。
また、ストキャスティクスとRSIではデッドクロスの状況にある(下の日足チャート、赤矢印を参照)。このタイミングで今週の米経済指標、特に上で述べた2月ISM非製造業景気指数と同月雇用統計が市場予想を下回る場合、ドル円は下値をトライする展開が予想される。
今週、ドル円の下落局面で注目したいのが、IG為替レポートで何度か取り上げてきた149.50レベルと149.00レベルの攻防である。これらチャートポイントは、サポートの水準へ転換する可能性がある。
21日線(今日現在149.87レベル)の下方ブレイクは、149.50以下をトライするシグナルとして注目したい。
ドル円のチャート:日足 23年11月以降
ドル円が149.00レベルを完全に下方ブレイクする場合は、新たなサポート水準の見極めが焦点として浮上しよう。
このケースでは昨年の11月下旬以降、レジスタンスのラインとして意識された経緯のある50日線のトライを想定したい(上の日足チャート、緑ラインを参照)。実際にドル円がこの移動平均線をトライする場合は、レジスタンスからサポートのラインへ転換するかどうか?この点に注目したい。
今日現在147.34レベルで推移している50日線を下方ブレイクする場合は、サポート転換が確認された146.00レベルを視野に下落幅が拡大する可能性が出てくる。
ドル円が50日線をトライするシグナルとして、下の1時間足チャートにプロットした各フィボナッチ・リトレースメントでの攻防に注目したい。
特に相場をサポートし経緯のある38.2%の水準148.97レベルと61.8%の水準147.80レベルの攻防に注目したい。
ドル円のチャート:1時間足 2月以降
反発の局面で注目したいチャートポイント
一方、ドル円(USD/JPY)の反発局面で注目したい水準は、引き続き150.80レベルと151.00レベルである(上の1時間足チャートを参照)。
ドル円がこれらレジスタンスの水準をトライする材料として今週注目したいのが、上で述べた2つの米経済指標である。
ドル円を動かす国内の材料
一方、国内では植田日銀総裁や中川日銀審議委員らの発言で円相場が動く可能性がある。植田日銀総裁は5日、金融庁・日経共催国際シンポジウムで挨拶をする。中川日銀審議委員は7日、金融経済懇談会に出席する。
植田総裁は先月29日、ブラジル・サンパウロで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の会見で、2%の物価目標の持続的・安定的実現について、「私の考えでは今のところまだそこまでには至っていない」と述べた。マイナス金利の解除や金融政策の正常化について言及する場合は、慎重な姿勢をあらためて示すと思われる。植田総裁の慎重姿勢は、円安の要因になり得る。
また、今週7日に1月の毎月勤労統計調査が発表される。実質賃金は21ヵ月連続でマイナスの状況にある。現時点での市場予想は1.5減(前年同月比)。賃金の緩慢な伸びが確認される場合は円安の要因になり得る。
国内 実質賃金の動向:23年2月以降
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