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焦点は米金利の上昇スピードと実質金利の影響

米金利の上昇幅が拡大している。焦点は利回りの水準よりも上昇のスピードにある。米実質金利のマイナス幅も急速に縮小中。株式市場の反応に要注意。外為市場の焦点は?ドル円のチャートポイントは?詳細はマーケットレポートをご覧ください。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

【サマリー】

・今の米債市場で注視すべきは金利の水準よりも上昇のスピード

・米実質金利のマイナス幅が急速に縮小している

・米実質金利の動きにリスク資産がどのような反応を示すか?に注目

・ドル円のチャートポイントについて


・今の米債市場で重要なことは金利の水準よりも上昇のスピード

タカ派の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受け、米債市場では利回りの上昇トレンドが鮮明となっている。

米金融政策の動向と連動する2年債利回りは0.8%台の水準を難なく突破し、上昇幅が拡大している。一方、多くの市場関係者が注目する長期金利(10年債利回り)は、昨年に何度か上昇を止めた1.7%の水準を完全に突破し、一時1.75%台まで上昇する局面が見られた。

米金利のチャート

米金利のチャート


・実質金利のマイナス幅縮小とその影響

現在、米金利の動きで最も注視すべきは、その水準よりも上昇のスピードである。

短期間で上昇幅が拡大する場合、実質金利のマイナス幅が急速に縮小するトレンドにあるからだ。事実、10年の米実質金利のマイナス幅は-0.78%レベルと、昨年6月下旬以来の水準まで一気にマイナス幅が縮小している。

実質金利のマイナス幅縮小が与える影響は、市場や銘柄によって異なるだろう。

外為市場では米ドル相場のサポート要因となる。一方、米国の株式市場では高PER(株価の割高感)に対する懸念が意識されグロース株の売り要因となる。事実、今の米実質金利の動きに対してグロース株ETFは下落で反応している。

また、「短期間で米金利の上昇幅がさらに拡大→実質金利のマイナス幅が急速に縮小」するトレンドが続く場合は、米国株全体のリスク要因となり得ることも意識しておきたい。

米実質金利とグロース株ETFのチャート

米実質金利とグロース株ETFのチャート

米債利回りの上昇と実質金利のマイナス幅縮小が今後も続くと想定する場合、外為市場のトレンドは株式市場の動きに左右されよう。

米金利の上昇と株高が同時に発生する局面では、株式と同じリスク資産である国際商品市況の価格も上昇する展開が予想される。このケースでの外為市場では、短期的な資源国通貨や新興国通貨の上昇を想定したい。

リスク選好相場(株高と米金利上昇の局面)で上昇幅が拡大しやすい通貨ペアは、やはりドル円(USDJPY)である。米金利の上昇による米ドル買いと、リスク選好による円安が同時に発生することが予想されるからだ。

一方、米金利の上昇が株安(リスク回避)の要因となるケースでは、米ドルの全面高を予想する。米金利の上昇による米ドル買いと、リスク回避による資源国通貨や新興国通貨(リスク性の高い通貨)の売りが同時に発生することが予想されるからだ。

このケースでのドル円は、米ドル買いと円買いの圧力がぶつかり合うことで、レンジ相場または若干の米ドル高優勢が予想される。

リスク回避の動きに米金利が低下で反応する場合は、日本円やスイスフランが最も選好される通貨になると予想する。


・ドル円 115.60レベルの攻防が焦点に

ドル円(USDJPY)には調整ムードが出始めている。だが、一気に115.00ブレイクを試す勢いはない。この要因は米金利の上昇にあるが、115.60レベルがサポートポイントとして意識され始めていることにも注目したい。6日のレポートでも指摘したとおり、115.60レベルは直近高安の半値戻しの水準にあたる。長い下ヒゲ(1時間足)が何度も示現し反発している状況は、この水準での米ドル買いの意欲の強さを示唆している。

株式市場(特に米国株)が続落する等の要因でドル円が115.60を下方ブレイクしても、115.40-50がサポートゾーンとなる可能性がある。今日現在、115.40レベルには10日SMAが上昇してきた。

また、115.47レベルはフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。すぐ上の水準が21年の最高値115.51レベルであることも考えるならば、115.50前後がレジスタンスからサポートラインへ転換する可能性も意識しておきたい。

ドル円のチャート

ドル円のチャート

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