【ドル円の週間見通し】今週も米経済指標にらみ まずはCPIが焦点に、米ドル安主導の下落を警戒
先週のドル円の下落は米ドル安が主導した。その米ドルは今週も経済指標にらみの状況が続こう。ドル円の週間見通しについて。

記事の概要
ドル円の下落を受け円高に注目が集まっている。しかし、現在の外為市場で注目すべきは米ドル安である。今週の米ドル相場は、引き続き経済指標にらみの状況が続こう。注目は2月の消費者物価指数(CPI)と3月のミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率である。
今週の経済指標が米ドル安の要因となれば、ドル円は146円台への下落を警戒したい。145円をトライする可能性もある。上値の焦点は149円台への上昇となろう。週間の予想レンジは145.70~149.60。
注目すべきは米ドル安
ドル円の下落は米ドル安が主導
ドル円(USD/JPY)の下落幅が拡大していることで、円高への関心が高まっている。しかし、今の外為市場で真に注目すべきは米ドル安である。この点を対G10通貨の週間騰落率で確認すると、先週の円相場は米ドルやカナダドルを除き主要通貨、特に欧州通貨で円安優勢の展開となった。
円相場の動向:3月3日~7日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
一方、米ドル相場の週間騰落率を確認すると、先週はすべてのG10通貨で米ドルが下落した。先週のドル円の下落は、米ドル安が主導したことが分かる。
米ドル相場の動向:3月3日~7日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
パウエルFRB議長の発言で米ドル反発
米労働省が7日発表した2月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数変化が15.1万人増と、ブルームバーグの市場予想16万人を下回った。失業率は4.1%と、1月から0.1ポイント上昇した。米ドル相場は当初下落で反応した。しかし、この日の講演でパウエルFRB議長が経済は底堅いペースで成長し、労働市場も賃金の上昇が続く見通しあると述べた。「利下げ急がず」の姿勢も示したことで米金利が反発。この動きに追随しNY市場では米ドルを買い戻す動きが見られた。
米国の労働市場は堅調さを維持しているが
2月の非農業部門雇用者数変化は市場予想を下回ったが、1月の12.5万人増を上回る堅調さを見せた。直近3ヶ月平均は20万人前後と高い水準を維持している。失業率は1月から0.1ポイント上昇したが、2022年以降の低水準(4%前後)を維持している。平均時給の前年同月比は4.0%増と1月から賃金インフレが抑制される結果となったが、依然として高い水準にある。パウエルFRB議長が指摘するとおり、労働市場は堅調さを維持していると言える。
米雇用統計 失業率と失業率理由:2022年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 失業者数の単位:1000人
また、複数の雇用先がある労働者の数も増加の傾向にある。特に、第1の雇用先が正規でそれ以外の雇用先が非正規の数が伸びている状況は、本業だけでは生活が苦しい労働者が増加していることを示唆している。
2月の雇用統計は無難な内容となった。しかし、二転三転するトランプ関税政策の影響で今後企業の収益懸念が高まれば、労働市場にも悪影響を与えるだろう。それが数字に表れてくれば、米国経済を支えている個人消費の先行き懸念をさらに高める要因となろう。トランプ関税が米ドル安の要因となるシナリオも想定しておく必要がある。
米雇用統計 複数の雇用先がある労働者の数:2022年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 労働者数の単位:1000人
今週も米経済指標にらみの1週間
今週の米ドル相場は、引き続き経済指標にらみの1週間となろう。特に注目すべきは、12日の2月消費者物価指数(CPI)と14日の3月ミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率となろう。
ブルームバーグがまとめた市場予想によれば、2月CPIは前月比と前年同月比でともに1月から鈍化の見通しにある。ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率も2月から総じて鈍化の見込みにある。
インフレ(期待)の鈍化が確認される場合は、米金利の低下要因となろう。消費者マインドの低下も米国経済を支える個人消費の先行き懸念を高めることから、米金利の低下要因となろう。これら経済指標が総じて予想を下回る場合、外為市場では米ドル安優勢の展開が続くことが予想される。
一方、これら重要指標で景気不安が後退する場合は、米ドルの反発が予想される。
注目の米経済指標

市場予想:ブルームバーグ
上昇余地を探る国内金利、賃金統計に注目
今週の米ドル相場は経済指標にらみの1週間となろう。一方、円相場は米経済指標だけでなく、国内の経済指標も変動要因となろう。
年初に1.12%台で始まった国内の10年債利回り(長期金利)は、先週1.5%台へ到達した。2009年6月以来15年9カ月ぶりの高水準まで一気に駆け上がってきたことで、金利の上昇余地が意識されやすい状況にある。しかし、日銀の追加利上げ期待をさらに高める経済指標が確認される場合は、長期金利の上昇圧力を高める要因となろう。今週そのきっかけとなり得るのが、10日の1月毎月勤労統計調査である。
労働団体の連合は、今年の春闘で労働組合が要求した賃上げ率が平均で6.09%と発表した。賃上げ要求が6%を超えるのは32年ぶりである。1月の毎月勤労統計調査ではボーナスの影響が剥落し、現金給与総額は前年同月比で3.0%の上昇と、昨年12月の4.4%から低下する見通しにある。一方、実質賃金の総額はインフレが影響し、同比で昨年12月の0.3%増から1.6%減が見込まれている。
名目賃金の伸び率は2024年以降、再び上昇基調にある。この動きに連動し実質賃金もプラスへ転じる状況が見られた。1月も名目賃金の伸びが予想以上の強さを見せれば、植田和男日銀総裁が重視する賃金と物価の好循環の確度が高まっているとの印象を市場参加者に与えるだろう。強い賃金統計は円高の要因として警戒したい。
国内の持続的な賃金上昇が確認されると同時に、上述の米経済指標が総じて予想以下となれば、日米利回り格差の縮小トレンドが続くだろう。ドル円(USD/JPY)は、以下にまとめたサポートラインの攻防を意識したい。
毎月勤労統計調査:2020年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円 今週の見通しとテクニカルライン
新たな下値の水準を探る状況が続く
ドル円(USD/JPY)の1週間と1ヶ月のリスクリバーサルはともにドル・プットへ傾いている。一方、予想変動率は1週間のそれが先週13%台まで上昇した。通貨オプション市場では、ドル円の下値トライを意識する状況にある。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年12月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成
今週のサポートライン、予想レンジの下限は145.70レベル
リスクリバーサルがドル・プットへ傾く一方、日足のMACDはゼロラインを下回る状況にある。ドル円(USD/JPY)の下落リスクがくすぶるなか、今週も下値トライが続く場合は、以下にまとめた4つの水準の攻防に注目したい。週間の予想レンジ下限は145.70レベル。
まずは、先週7日の下落を止めたフィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの水準146.95レベルである。この水準のトライは、147円の維持を見極める攻防でもある。
ドル円が146円台へ下落する場合は、146円半ばの攻防に注目したい。この水準をも下方ブレイクすれば、146.00のトライを想定したい。
上で述べた日米の経済指次第では、米ドル安と円高が同時に発生する可能性がある。このケースでは、瞬間的に予想レンジの下限145.70レベルをトライする展開を想定したい。このラインは、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準145.71にあたる。
サポートライン:日足
・146.95:61.8%戻し
・146.50:サポートライン
・146.00:サポートライン
・145.71:予想レンジの下限、76.4%戻し
今週のレジスタンスライン、予想レンジの上限は149.60レベル
一方、ドル円(USD/JPY)の上昇局面では、149円台への再上昇が焦点となろう。週間の予想レンジ上限は149.60レベル。この水準を目指すサインとして、まずはレジスタンスラインへ転換する兆しが見られる148.20レベルの攻防に注目したい(1時間足チャート、黒矢印を参照)。
1時間足にプロットしたフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準148.60レベルの突破は、149.00をトライするサインとなろう。テクニカルの面では、半値戻しの水準149.12レベルの攻防に注目したい。現在、このテクニカルラインのすぐ下には10日線(149.00レベル)も推移している。149.00-10をレジスタンスゾーンと想定したい。
ドル円が上述のレジスタンスゾーンをも完全に突破する場合は、予想レンジの上限149.60レベルのトライを想定したい。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準149.63レベルにあたる。
レジスタンスライン:1時間足
・149.63:予想レンジの上限、61.8%戻し
・149.12:半値戻し
・149.00:レジスタンスライン
・148.60:38.2%戻し
・148.20:レジスタンスライン
ドル円のチャート
日足:2024年9月以降

出所:TradingView
1時間足:3月以降

出所:TradingView
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