8月米雇用統計の影響について / ドル円とユーロドルの焦点

8月米雇用統計の影響について

9月3日に発表された8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比で23.5万人と、市場予想の72.8万人を大幅に下回る内容となった。レジャー、レストランそして宿泊業の雇用が抑制された状況は、デルタ株の感染拡大の影響が雇用の増加を抑制した一因であることを示唆している。

一方、失業率は7月の5.4％から5.2％へ低下した。しかし、黒人の失業率は8.2％から8.8％へ悪化した。雇用の増加が抑制されたこと、人種間での失業率に未だ格差があることを考えるならば、9月21-22日のFOMCでパウエルFRBが資産購入の縮小（テーパリング）を発表する可能性は著しく後退した。

しかし、今回の雇用統計にテーパリングそのものの流れを変えるインパクトはないだろう。平均賃金は前年同月比で4.3％と、市場予想の4.0％を上回った。この結果は、企業が賃金を引き上げて労働力を確保しようとする動きが続いていることを示唆している。
賃金の上昇は個人消費の拡大を促し、個人消費の拡大は米国経済の持続的な回復に貢献しよう。この点を意識してか、3日の米長期金利（以下では米金利）は1.33%台まで上昇する局面が見られた。

9月雇用統計の内容次第という条件付きではあるが、11月のFOMCでパウエルFRBはテーパリングを正式に発表する可能性がある。

米長期金利のチャート

ドル円の焦点

8月雇用統計の結果を受け、9月のFOMCでパウエルFRBがテーパリングを発表する可能性は後退した。

対主要通貨で米ドル安の動きが続いていることも考えるならば、今週のドル円（USDJPY）は、上値の重い展開を予想する。市場の短期的な予測を反映するリスクリバーサルは1週間、1ヶ月ともに低下基調へ転じつつある。

先週3日のドル円は、下ヒゲで短期サポートラインをブレイクした。しかし、89日EMA（今日現在109.59レベル）が相場をサポートした。8月の下旬以降、89日線でドル円は反発している。すぐ下の水準で推移している100EMA（今日現在109.47レベル）も同じく相場をサポートした経緯がある。短期サポートラインを完全に下方ブレイクする場合、これらEMAの維持が下値の焦点となろう。

上2つのEMAをも下方ブレイクする場合は、109円台の維持が焦点として浮上しよう。先月17日の安値109.11レベルのブレイクは、109.00トライのシグナルと想定しておきたい。

一方、米金利の反発基調が続くことでドル円の下落圧力が相殺される局面では、先週に続き短期レジスタンスラインのトライおよびブレイクが焦点となろう。このラインは今週、110.24→110.12の水準で推移する。

ドル円のチャート

ユーロドルの焦点

ユーロドル（EURUSD）は、米ドル安にサポートされる状況が続いている。50日EMA（今日現在1.1831レベル）をブレイクし、89日EMA（今日現在1.1878レベル）の攻防となっている状況やMACDのトレンドも考えるならば、相場の地合いは強い。

今週の焦点は、フィボナッチ・リトレースメント38.2％の水準1.1893レベルの突破となろう。3日はこの水準で上昇が止められた。

この水準をしっかりとブレイクする場合は、1.19台の攻防へシフトする展開を想定しておきたい。先週3日および7月30日に1.1910レベルがレジスタンスとして意識された。この水準をも突破する場合は、半値戻し1.1964レベルを視野に上昇幅の拡大を予想する。

だが、ストキャスティクス（スロー）は警戒水準にある。不意の反落を常に警戒しておきたい。ユーロドルが反落する場合、50日線がレジスタンスからサポートへ転換するかどうか？この点を確認したい。

なお、今週9日にECB理事会が予定されている。域内のインフレ率は8月に前年比で3％まで上昇した。ワイトマン独連銀総裁はインフレの上昇を意識し、PEPPの縮小と終了の準備に言及した。また、PEPPに関する直近のキーマン達（ビルロワドガロー仏中銀総裁、ホルツマン・オーストリア中銀総裁、クノット・オランダ中銀総裁）の言動も考えるならば、今回の理事会でパンデミック緊急購入プログラム（PEPP）の縮小が決定される可能性がある。

金利の動きを意識し、EUの主要国金利は上昇基調にある。米ドル安に加えて欧州金利の動きもユーロドル上昇の一因となっている。だが、これらが先取りしての動きであることを考えるならば、ECB理事会後は欧州金利の低下とユーロドルの反落を警戒しておきたい。

ユーロドルのチャート