外国為替取引(FX)における通貨ペアの相関関係を解説
外国為替市場は通貨と通貨を交換する市場です。代表的な通貨ペアとして、ドル円やユーロドルなどがあります。そして通貨ペアの中には、ある通貨ペアと別の通貨ペアが同じ方向、または逆の方向に動く関係-いわゆる相関関係があります。 また、商品(コモディティ)の価格に連動する「資源国通貨」と呼ばれる通貨もあります。 ここでは、通貨ペアの相関とは何か?そして相関関係を用いた外国為替(FX)の取引方法について解説いたします。
外国為替市場の相関関係とは?
そもそも相関関係とは何でしょうか?これは、ある一方の変化が、もう一方に影響を与える関係にあることを言います。両方が同じ方向に変化する関係を「正の相関」と言います。一方、両方が逆の方向に変化する関係を「負の相関」と言います。
外為市場では、色々な通貨ペアが取引されています。その中には正の相関関係にある通貨ペアもあれば、負の相関関係にある通貨ペアもあります。
通貨ペアの相関関係を理解できれば、外国為替(FX)の保有ポジションや変動リスクをヘッジしたりすることができます。
例えば、同じ方向に動くAとBという通貨ペアを同時に買うとします。思惑どおりに相場が動けば、利益を最大化することができます。
逆に為替の変動リスクをヘッジしたい場合は、負の相関関係にある通貨ペアをそれぞれ買い(売り)のポジションで保有することで、どちらか一方が思惑と外れても、損失を限定することができます。
通貨ペアの相関関係の強さは、取引の時間帯と量(流動性)に左右されます。外為市場の取引量が増えるのは、欧州タイムと米国タイムが重なる日本時間午後9時30分頃から翌0時までの時間帯です(冬時間は午後10時30分頃~翌1時)。
なお、外為市場は1日24時間、常に変動しています。このため相関関係も突然変化する場合があります。この変化を的確に捉えることができないと、相関関係を利用した取引で損失を被ってしまう可能性があります。
「相関係数」で通貨ペアの相関をチェック
相関係数を用いる取引のなかに「ペア取引」があります。この取引では、まず異なる資産(ここでは通貨ペア)間の相関関係の値である「ピアソンの相関係数」を測定します。この値は、異なる通貨ペアにおける線形関係の強さを測定します。係数の値は1から-1の範囲で示されます。1は完全な正の相関関係を表します。一方、-1は完全な負の相関関係を表します。係数0は、異なる通貨ペアとの間に直線的な関係がないことを意味します。
ピアソンの相関係数は、外国為替市場で最もよく使用される相関関係の尺度です。他には、級内相関や順位相関などがあります。
ピアソンの相関係数は計算が複雑なため、多くのトレーダーはコンピュータープログラムなどを使って計算します。
経済の結び付きと相関関係
通貨ペア同士にどのような相関関係があるのか?この点を考える上で重要となるのが、その通貨を発行する国や地域との経済的なつながりです。
例えば、ユーロドル(EUR/USD)とポンドドル(GBP/USD)との間には正の相関関係がみられます。ユーロ圏と英国との間には、密接な経済のつながりがあるからです。
以下の表で、通貨ペアの相関関係の一例を見てみましょう。
EUR/USD | GBP/USD | USD/CHF | USD/JPY | EUR/JPY | USD/CAD | AUD/USD | |
EUR/USD | 1 | 0.81 | - 0.54 | 0.51 | 0.87 | - 0.72 | 0.79 |
GBP/USD | 0.81 | 1 | - 0.35 | 0.83 | 0.94 | - 0.56 | 0.76 |
USD/CHF | - 0.54 | -0.35 | 1 | -0.08 | -0.32 | 0.37 | - 0.48 |
USD/JPY | 0.51 | 0.83 | - 0.08 | 1 | 0.86 | - 0.52 | 0.64 |
EUR/JPY | 0.87 | 0.94 | - 0.32 | 0.86 | 1 | - 0.71 | 0.82 |
USD/CAD | - 0.72 | - 0.56 | 0.37 | - 0.52 | - 0.71 | 1 | - 0.67 |
AUD/USD | 0.79 | 0.76 | - 0.48 | 0.64 | 0.82 | - 0.67 | 1 |
※相関係数:ピアソンの相関係数
※計測日:2019年11月26日の1日間
相関関係を用いた外国為替(FX)取引
外国為替市場(FX)の取引で相関関係を用いる場合、まずは取引する通貨ペアが正の相関関係(同じ方向に動く関係)にあるのか?負の相関関係(逆の方向に動く関係)にあるのか?をチェックします。次にどのようなポジションを保有するのかを決めます。
取引の一例を見てみましょう。
ユーロドル(EUR/USD)とドルスイス(USD/CHF)の間には、負の相関関係があると想定します。このケースでは、お互いの通貨ペアが反対方向に動くことになります。仮にEUR/USDが1ポイント動くと100円の損益が発生するとします。
一方、USD/CHFが1ポイント動くと85円の損益が発生するとします。EUR/USDのロング(買い)ポジションを1ロット保有した後、思惑が外れ相場が10ポイント下落したとします。一方、USD/CHFのロング(買い)ポジションを1ロット保有した後、相場が10ポイント上昇したとします。この取引の場合、EUR/USDの下落でマイナス1,000円(1ロット×10ポイント×100円)の損失が発生します。しかし、USD/CHFの上昇でプラス850円(1ロット×10ポイント×85円)の利益が得られます。両者の取引はトータルでマイナス150円となります。
もし、ユーロドルの下落リスクをヘッジするためのUSD/CHFのロング(買い)ポジションがなければ、マイナス1,000円の損失(ユーロドルロングの損失のみ)が発生することになります。
ユーロドルとドルスイス 実際の相関係数を見てみよう
実際、ユーロドル(EUR/USD)とドルスイス(USD/CHF)の間には、負の相関関係(逆方向に動く関係)が多く見られます。通常、両通貨ペアの相関係数は-0.70未満です。しかし、マーケットの状況によっては-0.97まで高まることが過去にありました。
以下の表は、2019年11月25日(月曜日)の午前8時から午後9時(英国時間)の間のEUR/USDとUSD/CHF相関係数です。
時間 (英国時間) | 通貨ペア(EUR/USD と USD/CHF)の相関係数 |
8am | - 0.967 |
9am | - 0.968 |
10am | - 0.970 |
11am | - 0.969 |
正午 | - 0.969 |
1pm | - 0.970 |
2pm | - 0.969 |
3pm | - 0.965 |
4pm | - 0.962 |
5pm | - 0.950 |
6pm | - 0.942 |
7pm | - 0.936 |
8pm | - 0.935 |
9pm | - 0.933 |
上のデータが示すように、EUR/USDとUSD/CHFは、強い負の相関関係にあったことがわかります。この関係を取引に用いることができれば、為替の変動リスクをヘッジすることができます。
ユーロドルとドルスイスのチャート
もうひとつ取引の一例をみてみましょう。
ユーロドル(EUR/USD)とポンドドル(GBP/USD)の間には、正の相関関係がよく見られます(下のチャートを参照)。つまりこれらの通貨ペアは、同じ方向に動く特性があります。
ユーロドル(EUR/USD)とポンドドル(GBP/USD)のチャート
このケースで両方の通貨ペアをロング(買い)のポジションで保有し、相場が思惑どおりに上昇する場合(両方の通貨ペアが米ドル安に振れる場合)、ひとつの通貨ペアで取引するよりも利益が増えることになります。しかし相場が予想とは反対の方向に動く(両方の通貨ペアが米ドル高に振れる)場合は、ひとつの通貨ペアで取引するよりも損失が大きくなります。
正の相関関係にある通貨ペアでも、一時的にその関係を崩す個別の要因―ユーロとポンド特有の要因が発生する場合は、ロングとショートを組合わせて取引すると良いでしょう。
例えば、イングランド銀行(BoE)が利上げを決定すると、ポンドドル(GBP/USD)が上昇します。一方、ユーロポンド(EUR/GBP)は下落します。そして対ポンドでのユーロ売りがユーロドル(EUR/USD)に波及することでEUR/USDも下落し、GBP/USDとEUR/USDが一時的な負の相関関係に陥ることがあります。
このように、一時的に正の相関関係が崩れると予想される局面ではGBP/USDでロング(買い)のポジションを保有し、EUR/USDでショート(売り)のポジションを保有すれば、どちらか一方の通貨ペアを取引するよりも、多くの利益を得ることができます。
通貨と商品(コモディティ)の相関関係
外国為替市場では日々、様々な通貨が取引されています。その中には、国際商品市況(コモディティ)の価格と強い正の相関関係にある通貨があります。
このような通貨を「資源国通貨」と言います。
カナダドル(CAD)と原油価格
カナダは産油国です。このためカナダドル(CAD)は、原油価格の動きに連動する特性があります。つまり、原油価格が上昇(下落)するとカナダドルも上昇(下落)する傾向があります。
一方、米ドルは商品(コモディティ)価格とは負の相関関係にあります。これは米ドルが上昇すると、米ドル建てで取引されている商品(コモディティ)価格の割高感が意識されるためです。よって、米ドルが上昇(下落)する局面では、原油価格をはじめとした商品(コモディティ)価格は下落(上昇)する傾向にあります。
上で述べた相関関係を知っていれば、原油価格が上昇トレンドにある時にはカナダドル(CAD)を買い、米ドル(USD)を売る取引をすることで利益を得る確率が高まります。
一方、原油価格が下落トレンドにある時にはカナダドル(CAD)を売り、米ドル(USD)を買う取引をすれば、利益を得る確率が高まります。
カナダドル/日本円(CAD/JPY)と原油先物価格のチャート
豪ドル(AUD)と金
豪ドル(AUD)も資源国通貨の特性を持っています。特に金の価格との間に正の相関関係が見られます。
なぜ、豪ドル(AUD)と金の価格は同じ方向に動くのか?それは、オーストラリアが金の純輸出国であるためです。つまり、オーストラリアの経済と金は密接に結びついているというわけです。
また、オーストラリアの2大輸出品目である石炭や鉄鉱石といった鉱物資源の価格も豪ドル(AUD)のトレンドに影響を与えることがあります。
豪ドル(AUD)と資源価格の相関関係を知っていれば、資源価格の上昇局面で豪ドル/米ドル(AUD/USD)のロング(買い)ポジションを保有することで、利益を得る確率が高まります。
逆に景気が後退する局面で資源価格が下落のトレンドにある場合は、豪ドル/米ドル(AUD/USD)のショート(売り)のポジションを保有することで、利益を得る確率が高まります。
豪ドル/米ドル(AUD/USD)と金のチャート
まとめ
- 相関関係を用いて外国為替(FX)取引ができます
- 正の相関関係は、2つの通貨ペアが同じ方向に動く関係にあることをいいます
- 負の相関関係は、2つの通貨ペアが逆の方向に動く関係にあることをいいます
- 相関関係を知りそれを取引に用いることで、より大きな利益を得る可能性が高まります
- 相関関係を知りそれを取引に用いることで、為替の変動リスクをヘッジすることができます
- カナダドル(CAD)や豪ドル(AUD)など、国際商品市況(コモディティ)価格と正の相関関係にある通貨があります。これを「資源国通貨」といいます
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