マーケットリスクとヘッジ方法
市場取引には、時には予測不可能なリスクが伴います。ここでは、マーケットリスクとは何かについて、またマーケットリスクの測定およびヘッジ方法について説明します。
マーケットリスクとは
マーケットリスクは、マーケット全体に影響を及ぼす不利な価格変動による損失に関わるリスクです。これらのマーケットは商品から暗号通貨にまで及び、どのマーケットもリスクを負っています。マーケットリスクは特定の資産ではなくマーケット全体に影響を与えるため、ポートフォリオの多様化によって回避することはできません。
マーケットリスクの種類
マーケットリスクは、取引されている証券の種類、および取引の地理的境界によって異なります。
金利の変動リスク
金利に突然の増減があった場合、マーケットのボラティリティが高まる可能性があります。金利の増減に応じて経済全体にわたる支出や投資の水準が増減するため、資産価格に影響を与えます。金利が上昇すると、一般的に消費者の支出は減少し節約する人が増えますが、一方で金利が下がると、支出が若干増加し節約する人が減少する傾向が見られます。金利の変動リスクは、株式、商品および債券を含むあらゆるマーケットに影響を及ぼします。
たとえば、連邦準備(Fed)基金金利が上がると、米国の企業は銀行から借りるお金を少なくしたいと考えるようになり、その支出や投資を減らします。同時に、金利が高くなるとより多くの外資を米国にもたらす可能性があり、ドルの価値を上昇させます。これは言い換えれば、企業の輸出品の国際競争力を低下させる可能性があります。したがって、両方の要素が企業の成長、利益、株価に悪影響を及ぼす可能性があります。
株価の変動リスク
株価は非常に不安定であり、その他の資産クラスに比べてもより変動が大きいと考えられています。証券の価格は急速に変動する可能性があり、多くの場合は価値が低下する動きです。これは株価の変動リスクとして知られています。株価に影響を与える要因はいくつかありますが、株式リスクにはシステマティック・リスクとアンシステマティック・リスクの2種類しかありません。システマティック・リスクは一般産業に関連するリスクですが、アンシステマティック・リスクは特定の企業に関連したものです。
たとえば、株式をより高い価格で売却する目的で、1株あたり20ドルでABC社の株を500株購入したとします。しかしその後、最高経営責任者(CEO)の予想外の辞任により株価は14ドルまで低下します。その時点で株式を売却した場合、7,000ドルの損失を被ると考えられます。それがあなたが負わなければならない株価の変動リスクです。
為替レートの変動リスク
為替レートの変動リスクは、通貨リスクまたは為替リスクとも呼ばれ、通貨価格の変動に関連するリスクです。通貨価格が変動したとき、その変動方向に応じて、外国資産の購入価格はより少なくまたはより高くなります。投資家は、多くの対外貿易を行っている企業の株式を所有したり、または外貨で価格設定された商品を取引したりすることによって、間接的にさらされる可能性があります。しかし、投資家が国際外国為替市場にさらされていると、為替レートの変動リスクが高まります。さらに、借金が多い国ほど通貨リスクが高くなります。
たとえば、ブラジルレアルが英国ポンドに対して5レアルで取引されているとします。英国の小売業者A社が、1杯あたり20レアルの焙煎コーヒーを1万パック購入する、総取引額が20万レアル(4万ポンド)の取引をブラジルのコーヒー製造業者と締結しました。ところが、A社が商品を受け取る前に突然の政治危機によりポンドが弱体化したため、1ポンドが4レアルに変動。A社は1パックあたりの合意額(20レアル)を支払う必要があるため、総取引額が5万ポンドに増えてしまいました。これが為替レートの変動リスクです。
商品価格の変動リスク
原油、金、トウモロコシなどの商品は、政治的、規制上、または季節的な変化により急激な価格変動が見られる可能性があります。これは商品価格の変動リスクとして知られています。商品価格が変動すると、投資家、消費者、生産者に影響がおよびます。
たとえば、干ばつはトウモロコシの生産に影響を与え、それにより価格の上昇を引き起こす可能性があります。トウモロコシのポジションを保有している場合、保有者は商品価格リスクにさらされていることになります。
ただし、商品価格の変動リスクは、商品自体の価格変動リスクを超越します。それらはほとんどの商品の構成単位であり、そのため価格の変動は企業や消費者に広範囲におよぶ結果をもたらす可能性があります。価格変動はサプライチェーン全体に負担をかけ、最終的には景気に影響を与えます。
マーケットリスクの測定方法
マーケットリスクを測定する際には、バリュー・アット・リスク(VaR)およびベータという2つの主要な方法を使用します。
- バリュー・アット・リスクは、特定の時間枠に適用される統計的手法であり、リスクの程度(潜在的な損失)、および損失が発生する可能性(発生率)を測定できます。
- ベータは、過去の実績に基づき、マーケット全体と比較した株式のボラティリティを測定します。言い換えれば、株式がマーケットと同じ方向に動くかどうかを決定します。
しかし、マーケットリスクを測定するために合意された方法は、これらの方法のどちらでもなく、非常に単純なものもあれば複雑なものもあります。
マーケットリスクのヘッジ方法
ヘッジとは、あるポジションによりもたらされる損失を別のポジションから得られる利益で相殺する目的で、同時に2つ以上のポジションを保有することと定義されます。マーケットリスクのヘッジは、取引リスクを管理する一つの方法です。多くの投資家は特定のリスクが必要であることを認識し、自身の望む長期的リターンを得ることができますが、ヘッジは投資家が望むエクスポージャーを与える一方で、ある程度のリスク保護を提供します。
ヘッジ戦略は取引をしているマーケットにより異なります。
オプション取引
オプションとは、保有者に対して一定の期間内に一定の価格で資産を売買する義務ではなく権利を与える金融商品です。オプション取引は、デルタヘッジやリスクリバーサルによって、保有するポジションをヘッジする機会を与えます。
デルタヘッジ
株式市場で取引を行っている場合、デルタヘッジを使用することで原市場における負の価格変動リスクを軽減できます。「デルタ」とは、原資産価格が1ポイント変動した際にオプションの価格が変動する金額です。
オプションポジションは、反対のデルタを持つ別のオプションポジションでヘッジすることができます。たとえば、株式のプットオプションのデルタが-0.10の場合、株価が1ドル下がると、オプション価格は0.10ドル上昇します。これはデルタが+0.10で、株価が1ドル上昇すると0.10ドル上昇するコールオプションでヘッジできます。
あるいは、CFDなどのデリバティブを使用してポジションを建てることでデルタヘッジを作成することもできます。これらのデリバティブは、原市場で一対一で移動するため、デルタは1となります。たとえば、デルタが0.55で100株のコールオプションを購入した場合、CFD取引を介して55株の株式を売却することで、このデルタエクスポージャーをヘッジすることができます。
リスクリバーサル
リスクリバーサルは、プットオプションやコールオプションを通じて投資家の買いポジションまたは売りポジションを保護することができます。たとえば、あなたが商品取引者で、200単位の大豆に売りポジションを建てた場合、プットオプションおよびコールオプションを購入することで、どちらも200単位の大豆でヘッジすることができます。大豆の価格が上昇した場合、コールオプションはより価値のあるものになり、売りポジションへの損失を相殺します。代わりに大豆の価格が下落した場合、売りポジションから利益を得られる一方で、プットオプションは行使価格のみになります。
先物契約
先物は、将来の決められた日に決められた価格で金融市場を取引する契約です。先物契約では、商品、株式、債券などに対する自分のポジションをヘッジすることができます。先物契約では、将来購入または売却したい価格に固定することができるため、将来の証券価格の不確実性を解消することができます。そうすることで、価格変動リスクを相殺することができます。
マーケットリスクのまとめ
マーケットリスクについて留意すべき重要なポイントは、次の通りです。
- マーケットリスクはマーケット全体に影響を与え、ポートフォリオの多様化によって回避することはできません
- マーケットリスクには、金利の変動リスク、株価の変動リスク、為替レートの変動リスク、商品価格の変動リスクなど、主に4つの種類があります
- バリュー・アット・リスクやベータなど、マーケットリスクを測定するために用いられる方法があります
- オプション取引や先物契約でマーケットリスクをヘッジすることができます
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