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米国株の分析レポート 第2回

米国株の分析レポート第2回。今回は、2022年の米国株を考える上で重要な「3つ」のキーワードについて解説します。キーワードから見えてくる注目セクターと銘柄は?詳細はマーケットレポートをご覧ください。※このレポートは2022年1月11日に配信されました。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

第2弾:2022年の米国株を読み解く「3つのキーワード」

アメリカ株式の分析レポート第2弾は、2022年の米国株を考える上で重要な3つのキーワードを紹介します。

米国株のトレンドを大きく左右するこれらキーワードから、今年の注目セクターと銘柄について考察していきます。


【サマリー】

1:2022年の米国株で注目すべき3つのキーワード
2:「アフターコロナ」の銘柄に注目
3:金利上昇の恩恵を受ける銘柄に注目
4:インフレの高止まりとエネルギー需要にサポートされる銘柄に注目


・キーワード1:アフターコロナ

最初のキーワードは、「アフターコロナ」です。

2020年に開発された新型コロナウイルスのワクチンは現在、世界中で供給されています。

今年から、経口薬(飲み薬)も本格的に供給されていくでしょう。こういった状況を考えるならば、2022年は本格的に「アフターコロナ」を意識する1年となるでしょう。

「アフターコロナ」を軸に考える場合、多くの投資家はコロナショックの影響で大打撃を受けたセクターやそれぞれのセクターを代表する銘柄に注目するでしょう。

例えば、以下で挙げる「アフターコロナ銘柄」は、これまで割安に放置されてきました。しかし、景気の持続的な拡大とコロナパンデミックの終息により業績の改善(良好な決算)が確認されれば、株価の上昇期待が高まることが予想されます。


【注目のセクターと銘柄】
・旅行:ブッキングHD(BKNG)、エクスペディア(EXPE)
・クルーズ:カーニバル・クルーズ(CCL)、ロイヤルカリビアン・クルーズ(RCL)
・ホテル:マリオット・インターナショナル(MAR)、ヒルトン・ワールドワイド(HLT)
・外食:チポートレ・メキシカン・グリル(CMG)、マクドナルド(MCD)
・航空:サウスウェスト・エアラインズ(LUV)、デルタ・エアラインズ(DAL)
※各セクターで時価総額の大きい銘柄を選定


すでにその兆候は見られます。

株価が反転し始めた2021年12月の4週目以降のパフォーマンスを確認すると、上で挙げた銘柄の中にはオミクロン株の感染拡大が報道される中、S&P500指数(SPX)のパフォーマンスを上回る株式が出始めています。

個別株パフォーマンス(2021年12月20日以降)

米国株の個別株パフォーマンス(2021年12月20日以降)

また、2021年の株価動向を確認すると、ホテル株と外食株でいち早く上昇の圧力が高まっていることがわかります。一方、旅行株はボックス相場で底堅いトレンドを維持しました。

これらの動きは、アフターコロナを意識した人々の消費行動が徐々に活発化していることを示唆しています。

この状況が続けば、今後はクルーズ株や航空株も上昇する可能性が出てくるでしょう。

2021年の株価推移

・ホテル株

米ホテル株のチャート

・外食株

米外食株のチャート

・旅行株

米旅行株のチャート

・クルーズ株

米クルーズ株のチャート

・航空株

米航空株のチャート

・キーワード2:金融政策の正常化

2つ目のキーワードは、「金融政策の正常化」です。

2022年、各国の中央銀行は景気の回復とインフレの高進に対応するため金融政策の正常化-つまり、これまでの金融緩和政策から金融引き締め政策への転換を加速させるでしょう。

特に注目されるのが、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)の動きです。

FRBを率いるパウエル議長は高インフレに対抗するため、金融政策の正常化に向けて突き進むスタンスをすでに表明しています。

今後、具体的に注目される政策としては、利上げの回数とバランスシート縮小の時期です。利上げの回数については、今年3回がベースシナリオです。しかし、今年に入り4回の利上げがあるのでは?との予測が出始めています。

また、国債等の購入で約8.7兆ドルにまで膨れ上がったバランスシートの縮小については、早ければ今年7月にも着手するという予測があります。


【FRBによる金融政策の正常化】
1:複数回の利上げ(3回以上)
2:バランスシート縮小のタイミング(7月開始の可能性、ペースは今後明らかに)


金融政策の正常化で重要なことは、そのペースにあります。

パウエルFRBの金融引き締め政策ペースが加速する場合、アメリカの金利には上昇圧力が高まることが予想されます。

現時点でアメリカ経済の拡大が続く可能性が高いことを考えるならば、利回り上昇の恩恵を受けるのが、利ザヤ収益の拡大が期待できる銀行株です。


【注目のセクター】
・銀行:JPモルガン(JPM)、バンクオブアメリカ(BAC)、ウェルズファーゴ(WFC)
・投資銀行:ゴールドマン・サックス(GS)、モルガンスタンレー(MS)
※各セクターで時価総額の大きい銘柄を選定


2021年の米債市場では、利回りに上昇の圧力が高まりました。

この動きに連動するように銀行セクターの株価も上昇し、JPモルガン以外はS&P500指数(SPX)をアウトパフォームしました。

2021年のパフォーマンス

2021年のパフォーマンス

2021年の株価推移

2021年の株価推移

・キーワード3:インフレ

3つ目のキーワードが、「インフレ」です。

2021年は世界各国でインフレが主要なテーマとなりました。

とりわけ米国では、約39年ぶりにインフレ率(消費者物価指数)が6.8%まで上昇し、バイデン米大統領の支持率が低下する一因となりました。

大規模な景気対策(コロナパンデミック対策)で世界経済が急速に回復する中、ロックダウンなどの行動規制で労働力や半導体などの供給不足が発生し、それが長引いたことは各国の政府と中央銀行にとっては誤算となりました。

アメリカのインフレ率

アメリカのインフレ率(消費者物価指数)

FRBや欧州中央銀行(ECB)は今年の後半にかけて、インフレ率が低下すると予想しています。

しかし、インフレの低下を阻む要因が2つあります。


【インフレの低下を阻む2つの要因】
1:賃金の上昇
2:急速な脱炭素(クリーンエネルギー)への転換


アメリカでは、コロナパンデミックにより人々の活動が制限されてきました。その影響により、労働市場では働き手が不足する状況が続いていることが、12月の雇用統計で確認されました。

一方、労働力が不足していることで賃金インフレが発生しています。今後も変異型のコロナウイルスが出現する場合、「労働力の供給不足→賃金の高止まり」という状況が続く可能性があります。

賃金インフレが長引けば、パウエルFRBが物価目標としている2%前後の水準までインフレ率が低下しない、という事態が考えられます。

また、エネルギー市場では欧米を中心に脱炭素(クリーンエネルギー)への転換が急速に進んでいます。その影響により、欧州では石油よりも二酸化炭素の発生量が少ない天然ガスの価格が高騰する事態となっています。原油価格(WTI)も100ドルまで上昇するという予測があります。

脱炭素は時代の流れです。しかしそれを急ぐあまり、逆に天然ガスや石油の需要が供給に追いつかない状況が来年も続く可能性があります。エネルギー価格が高止まりする場合、インフレの低下を阻む要因となるでしょう。

インフレがピークアウトしても順調に低下しないリスク、および景気の回復と世界的な脱炭素の流れによる影響でエネルギー需要が拡大することを想定する場合、エネルギーセクターに注目が集まるでしょう。

中でも、エクソン・モービル(XOM)やシェブロン(CVX)といった高配当銘柄が注目される可能性があります。


【注目のセクター】
石油&天然ガス:エクソン・モービル(XOM)、シェブロン(CVX)
※各セクターで時価総額の大きい銘柄を選定


2021年のパフォーマンスをみると、上記2社の株価はS&P500指数(SPX)をアウトパフォームしています。

2021年のパフォーマンス

2021年のパフォーマンス

一方、株価の方は、昨年10月後半から再び上昇圧力が高まっています。

高インフレとそれに対抗するためパウエルFRBが金融引き締め政策へ舵を切ったことで、投資家の資金がハイテクグロース株からバリュー株へシフトしていることをうかがわせる動きです。

2021年の株価推移

米エネルギー株のパフォーマンス

第2回の分析レポートでは、2022年の米国株のトレンドを考える上で重要な3つのキーワードについて解説しました。大3日のレポートでは、キーワード2「金融政策の正常化」がバリュー株とグロース株に与える影響について解説します。


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