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【米国株 ウィークリーレポート】 選好されるのはディフェンシブかつバリュー株 / ハイテク株の下落を警戒

米国の1月物価指標は、いずれも根強いインフレ圧力を示唆する内容となった。短期金融市場では、 “甘い見通し” が急速に修正されている。米債市場では利回りの反発基調が続いている。FRB高官らはインフレ抑制重視の姿勢を維持している。これらの状況を総合的に考えるならば、今の米国株はディフェンシブかつバリュー株が選好されやすい状況にある。一方、ハイテク株は下落リスクを警戒する1週間となろう。詳細はウィークリーレポートをご覧ください。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

※お知らせ:次回の配信は3月6日(月)となります。


【サマリー】
・アメリカの1月物価指標は、いずれもインフレ圧力の根強さを示唆した
・インフレリスクの再燃を受け、急速に修正される市場の “甘い” 政策見通し
・景気リスクの高まりを受け、ディフェンシブかつバリュー株優位の展開を予想する
・米ハイテク株は下落リスクを警戒する1週間となろう
・ナスダック100指数のチャートポイントについて


アメリカのインフレは鈍化傾向にあるが

1月の米消費者物価指数(CPI)は、前月比が予想どおりの結果となった。しかし、前年同月比では市場の予想を上回った。一方、同月の生産者物価指数(PPI)は、前月比と前年同月比でともに市場予想を上回った。

CPIとPPIの推移(前年同月比の推移)を確認すると、アメリカのインフレは鈍化の傾向を辿っている(前年同月比チャートの矢印を参照)。しかし、労働市場の引き締まり状態が1月の “強すぎる” 雇用統計で確認されたこと、そして2月のミシガン大学期待インフレ率(1年先)が、前月の3.9%から4.2%へ上昇したことも考えるならば、今回のインフレ指標は米国のインフレ圧力の根強さも同時に示唆する内容となった(前月比チャートの矢印を参照)。

アメリカのインフレ指標の推移:前年同月比

アメリカのインフレ指標の推移:前年同月比 データとチャート:米労働省, Bloomberg / 月次(2020年~)


アメリカのインフレ指標の推移:前月比

アメリカのインフレ指標の推移:前月比 データとチャート:米労働省, Bloomberg / 月次(2020年~)

急速に修正される市場の “甘い見通し”

23年のインフレのテーマは、「インフレが順調に低下するかどうか」にある。そして米国の株式市場では「インフレは低下していく」という期待が先行した。そしてこの期待は、連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ停止を市場参加者に想起させた。結果、23年に入ってから期待先行の上昇相場が形成された。

しかし、インフレが低下するという甘い見通しは、冒頭で述べたインフレ指標と1月雇用統計の結果を受けて急速に修正されている。短期金融市場(OIS市場)では、予想されるターミナルレートが5.2%台後半まで切り上がってきた。2月の連邦公開市場委員会(FOMC)直後の予想レートは、4.9%前後だった。たった2週間あまりで、30ベーシスポイントも上昇したことになる。

アメリカ政策金利の予想推移

アメリカ政策金利の予想推移 データとチャート:OIS市場, Bloomberg / 赤ライン:2023年2月17日時点


一方、米債市場でも「インフレリスクの後退→利上げの早期停止」、という甘い見通しをベースに発生した金利の低下トレンドが急速に修正されている。

FRBの金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは先週、昨年11月上旬以来となる4.7%台まで反発する局面が見られた(チャート上のライン)。一方、インフレを含めた景気の先行きを反映して動く10年債利回り(長期金利)も17日、昨年12月10日以来となる3.925%まで反発する局面が見られた(チャート下のライン)。

下のチャートを見ると、米金利が上昇するきっかけとなったのはいずれも強い経済指標だったことが分かる。

米金利の推移

米金利の推移 チャート:Bloomberg / 30分足(今年2月~)

※上のライン:米国2年債利回り
※下のライン:米国10年債利回り


バリュー株優位を予想

インフレリスクが再び市場のテーマに浮上してきたこと、FRBによる利上げ長期化の懸念が高まっていること、そして米金利に再び上昇の圧力が高まっている状況を総合的に考えるならば、今週の米国株はバリュー株優位の展開を予想する。

この点にてつて、グロース株とバリュー株のトレンド(標準化したパフォーマンス)と相対的な倍率(グロース株÷バリュー株)で確認すると、今月の中旬以降、グロース株優位の勢いに陰りが見られる。また、米国株の上昇トレンドが止まった昨年8月以降からのトレンドを確認すると、依然としてバリュー株優位のトレンドが続いていることが分かる。

これらの動向は、今年1月に発生したグロース株の上昇は、売られ過ぎた後に見られる典型的な「調整の反発」であることを示唆している。そしてこの調整の反発は、短期オプション市場の投機的な取引がけん引した面がある。このため、ファンダメンタルズ(インフレリスクや景気リスク)が再び市場のテーマとなる場合は、期待先行の上昇相場が一気に崩れるリスクがある。

グロース株とバリュー株のトレンド:年初来

グロース株とバリュー株のトレンド:年初来 チャート:Bloomberg / 日足(年初来)/ 基準日:22年12月31日


グロース株とバリュー株のトレンド:22年8月以降

グロース株とバリュー株のトレンド:22年8月以降 チャート:Bloomberg / 日足(22年8月~) / 基準日:22年7月29日

※バリュー株:S&P500バリュー株指数
※グロース株:S&P500グロース株指数


ディフェンシブかつバリュー銘柄に注目

今週の米国株がバリュー株優位の展開となる場合は、"ディフェンシブかつバリュー株"が選好されると予想する。

この点についてセクターパフォーマンスで確認すると、過去1ヶ月は「今後アメリカのインフレは低下する→米利上げが3月の会合で停止する」という期待先行を土台にハイテク株(Information Tech)と景気敏感株(Consumer Discretionary)が買われてきた。

しかし、直近1週間のセクターパフォーマンスではディフェンシブセクター、景気に左右されにくい生活必需品(Consumer Staples)や公共(Utilities)の株価がジワリと上昇していることがわかる。一方、ハイテク株は一転してマイナスとなっている。

そして、先週17日の相場では公共や生活必需品の他、ヘルスケア(Health Care)も買われ相場をサポートした。対照的にハイテク株だけが、1%超下落する展開となった。

パフォーマンスの推移を見ると、投資家のリスク選好姿勢が徐々に後退していることが分かる。

S&P500種株価指数のセクターパフォーマンス

S&P500種株価指数のセクターパフォーマンス


一方、米債市場では長短金利差の逆転現象、いわゆる「逆イールド」が常態化している。逆イールドは、将来の景気後退を示唆する重要な指標である。ゆえに逆イールドの常態化は、株式市場の参加者に景気の先行きリスクを意識させる要因となる。

上述したとおり、FRBの利上げ政策に対する市場の “甘い見通し” が急速に修正されている状況も考えるならば、今週は景気の先行きリスクが意識されることで、"ディフェンシブかつバリュー株"が米国株をサポートする展開が予想される。

アメリカの長短金利差の推移

アメリカの長短金利差の推移 チャート:Bloomberg / 日足(2021年~)

※上のラインチャート:10年債利回りと2年債利回りの長短金利差
※下のラインチャート:10年債利回りと3ヶ月物利回り(Tビル)の長短金利差


ナスダック100指数の下落を警戒

一方、ハイテク株は下落リスクを警戒しておきたい。ハイテク株のトレンドを示すナスダック100指数(NDX)の動向を確認すると、高値圏での攻防は維持している。しかし、17日の市場では20日MA(12,323レベル)を下方ブレイクする局面が見られた。そして上値の水準が徐々に切り下がっていることがわかる。

さらにトレンドの強さを示すADライン(Advance/Decline Line)の推移を確認すると、上昇トレンドが止まっている。

これらの動向は、昨年11月から12月に見られた状況であり、上昇相場の勢いが後退していることを示唆する動きと捉えたい。

予想どおり、今週の米株式市場でハイテク株が下落する場合、ナスダック100指数の焦点は、昨年12月の戻り高値12,170レベルの攻防となろう。この水準がサポートへ転換する場合は、高値圏でのレンジ相場が続く可能性が出てくる。

一方、12,170レベルが “サポート転換” に失敗する場合は、50日MA(11,678レベル)を視野にナスダック100指数の下落幅が拡大する展開を想定しておきたい。

ナスダック100指数のチャート

ナスダック100指数のチャート チャート:Bloomberg / 日足(22年8月以降)

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