経済指標にらみの米国株、目先の焦点は7月CPI 下落リスクがくすぶるナスダック、今週の見通しは?
良好な経済指標で過度の景気不安がひとまず後退し、米国株は反発ムードにある。しかし、良好な経済指標が株価反発の要因となった状況は、景気の先行きに対する投資家の懸念がくすぶり始めていることを示唆している。今週は7月の物価指数をはじめ重要な米経済指標が発表される。先週最も上昇したナスダック100は経済指標にらみの1週間となろう。今週の見通しは?注目のチャート水準は?
記事のポイント
・良好な米経済指標での株高は、景気懸念がテーマであることを示唆
・弱気地合いのラッセル2000が示唆すること
・今週の米国株も経済指標にらみの展開に、目先の焦点は7月CPI
・ナスダック100、今週の見通しとチャート分析について
米国テク株100のチャートポイント
下で述べる原市場の動向とテクニカルの攻防を踏まえ、IG証券が提供している株価指数CFD米国テク株100(NDX / 原資産ナスダック100)のチャートポイントを以下にまとめた。
上値の水準(レジスタンス)
・19,416:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・19,001:半値戻し
・18,778:20週線(8/12時点)
・18,568:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
下値の水準(サポート)
・18,122:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・17,954:半値戻し
・17,787:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・17,287:52週線(8/12日時点)
米国500のチャート:週足 年初来
出所:IGチャート
水面下でくすぶる景気懸念
8月9日のIG米国株レポートで述べたとおり良好な経済指標を受け、先週米国株のボラティリティ指数が急低下した(下のチャート、黒矢印を参照)。この動きに連動し、景気不安を意識した米株安もひとまず一服した。
インフレのリスクが意識されていた局面では、強い経済指標が「悪いニュース」と受け止められ、米株安の要因となってきた。
しかし、強い経済指標が「良いニュース」として受け止められている今の状況は、景気の先行きがアメリカ株式市場の新たなメインテーマとして浮上していることを示唆している。別の見方をすれば、「景気懸念」が水面下でくすぶり始めた状況にあると言える。
今週は、7月の物価指数と小売売上高、そして8月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)に期待インフレ率など、アメリカ経済の先行きを考えるうえで重要な経済指標が多く発表される。今週の米国株は、これら経済指標の内容でトレンドが左右されるだろう。
米国株のボラティリティ指数:24年6月以降
ラッセル2000が示唆すること
米国株は、ひとまず落ち着きを取り戻しつつある。しかし、8月5日~9日の週間騰落率を確認すると、上昇したのはナスダック100(NDX)のみで、他の株価指数は下落した。
アメリカの主要株価指数 週間騰落率:8月5日~9日の週
注視すべきは、週間騰落率で1.35%安となったラッセル2000(RUT)である。
下の日足チャートで直近のトレンドを確認すると、節目の2,000ポイントの維持には成功した。しかし50日線を下回る今の状況は、弱気地合いが続いていることを示唆している。
しかもその50日線は、サポートラインからレジスタンスのラインへ転換する可能性がある(下のチャート、青矢印を参照)。また、日足のMACDとRSIも弱気地合いにあることを示唆している。
ラッセル2000は中小型株で構成されている。ゆえに、市場の変調(先行きリスク)を先取りする特性がある。そのラッセル2000が50日線すら突破できない状況は、米国株の反発局面では常に「ブルトラップ(強気の罠)」を警戒すべき状況にあることを示唆している。
ラッセル2000:日足 今年6月以降
出所:TradingView
7月消費者物価指数(CPI)
今週13日に7月の生産者物価指数(PPI)が発表される。そして14日には同月の消費者物価指数(CPI)が発表される。いずれもアメリカのインフレ動向を考えるうえで重要な物価指数だが、市場参加者の関心が高いのが後者のCPIである。
ブルームバーグは12日、シティグループの試算として、アット・ザ・マネーのプットとコールのオプション・コストに基づけば、7月CPIが発表される14日にS&P500種株価指数(SPX)がいずれかの方向に1.2%動くことが予想されるとの記事を掲載した(記事タイトル:今週発表のCPI、米国株の試練に-トレーダーは変動性拡大を予想)。
現状、短期金融市場では9月以降の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、パウエルFRBが連続利下げに踏み切る可能性を強く意識する動きが見られる。これは、インフレリスクがもはやアメリカ株式市場のメインテーマから外れつつあることを示唆している。
ゆえに、7月CPIのリスク要因として注目したいのが、インフレの粘着性を示す場合である。市場予想を確認すると、前月比でインフレの粘着性が示唆される可能性がある(下のチャートを参照)。
景気後退の懸念がくすぶり始めるなかで7月CPIがインフレ懸念を高める場合は、米国株の下落要因となろう。
米国 消費者物価指数(CPI)の動向:23年7月以降
ナスダック100、注目のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・19,402:50日線
・19,067:半値戻し
・18,743:100日線
・18,684: フィボナッチ・リトレースメント38.2%
下値の水準(サポート)
・17,881:フィボナッチ・エクステンション38.2%
・17,639:半値戻し
・17,397:フィボナッチ・エクステンション61.8%
・17,097フィボナッチ・エクステンション76.4%
ナスダック100の見通しとチャート分析
100日線の「レジスタンス転換」
ナスダック100(NDX)は現在、反発基調にある。しかし、このまま上昇トレンドへ回帰すると判断するのは早計だろう。
上で述べたとおり、今週14日に7月CPIが控えている。翌15日には、同月の小売売上高も発表される。これら経済指標の内容次第でナスダック100は、再び下落相場へ転じる可能性がある。
テクニカルの面でも、ナスダック100の下落を警戒する状況にある。日足のRSIではゴールデンクロスが確認されたが、強気相場の勢いが増しているモメンタムは見られない。MACDは低下基調が一服している。しかし、ゼロライン以下の水準でゴールデンクロスすら確認できない状況にある。
最も注目したいのが、100日線とフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準「18,684」の攻防である。
100日線は7月中旬以降の株安を止めた経緯がある。しかし今は、相場の反発を止めるムードにある(下のチャート、緑ラインを参照)。しかも、すぐ下の水準はフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しである。昨日の日足ローソク足が市場の気迷いを暗示する「十字線」となったことも考えるならば、100日線の「レジスタンス転換」を意識する状況にある。
実際に100日線がサポートラインからレジスタンスのラインへ転換する場合は、地合いの弱さを市場参加者に印象付けよう。
50日線の「レジスタンス転換」
今週の米経済指標が株高の要因となる場合、ナスダック100(NDX)は100日線を突破する展開が予想される。それでも、反落リスクを警戒する状況が続こう。
そう考える理由は、7月下旬の50日線の攻防にある。この移動平均線は7月24日以降、明確にレジスタンスラインとして意識された経緯がある。現在は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準「19,450」と交錯しながら19,400台で推移している。重要なテクニカルラインが重なる状況を考えるならば、「100日線+38.2%戻し」以上に50日線前後の水準は、レジスタンスラインとして意識される可能性があろう。
ナスダック100:日足 今年4月以降
出所:TradingView
下落局面での焦点は?
100日線の「レジスタンス転換」が意識されている状況で、今週の米経済指標が株安の要因となれば、ナスダック100(NDX)は再び下値をトライするだろう。
ナスダック100の下落局面で注目したいのが、17,000ポイントの維持である。7月のCPIでインフレの粘着性、同月の小売売上高で個人消費の落ち込みがそれぞれ確認される場合は、景気不安が再び高まる展開が予想される。ボラティリティの拡大しやすいナスダック100は、他の指数と比べて下落幅が拡大しよう。
ナスダック100が17,000ポイントを目指すシグナルとして、フィボナッチ・エクステンションの各水準の攻防に注目したい。特に38.2%戻しの水準「17,881」は、先週後半の反落を止めた経緯がある(下のチャート、緑矢印を参照)。短期のレンドチャネルの下方ブレイクは、17,881レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
分足のストキャスティクスとRSIで相場の動向を追い、これらが売られ過ぎの水準でゴールデンクロスへ転じるタイミングとナスダック100が上記のサポート水準をトライするタイミングが一致する場合は、短期的な反発相場を想定しておきたい。
なお、直近の高安から算出されるフィボナッチ・エクステンション76.4%戻しの水準が17,000ポイント付近にあたる。テクニカル分析の観点からも17,000ポイントを重要なサポート水準と意識しておきたい。
ナスダック100:30分足 8月以降
出所:TradingView
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