失速ムードのエヌビディア、マイクロンの決算とアメリカPCE価格指数に注目、S&P500の見通し
米株高のけん引役であるエヌビディア(NVDA)が失速ムードにある。この動きに連動し、S&P500種株価指数(SPX)も5,500ポイントがレジスタンスの水準として意識された。今週26日に米半導体大手のマイクロン(MU)が第3四半期の決算を発表する。28日には米連邦準備制度理事会(FRB)が注目する5月のPCE価格指数が発表される。今週のS&P500指数は見通しは?
この記事のポイント
・不穏なシグナルが点灯しているエヌビディア
・今週の注目材料は、マイクロンの3Q決算と5月PCE価格指数となろう
・S&P500指数は、短期的な調整の反落相場を警戒する局面にある
・上値の焦点は5,500と5,580レベルの突破となろう
エヌビディアに不穏なシグナル
米株高をけん引している半導体大手エヌビディア(NVDA)の株価は、先週20日と21日に2日連続で下落した。
日足ローソク足のパターンを確認すると、20日は「陰の包み足」となった。そして21日は十字線に近い「陰のコマ」となった。高値圏でこれらのパターンが確認される場合は、相場の反落を警戒する必要がある。
一方、MACDでもエヌビディアの勢いが後退している状況を示唆している(下のチャート、赤矢印を参照)。
エヌビディアの株価は現在、125ドル付近がサポートの水準として意識されている。テクニカルの面では、2つのフィボナッチ・リトレースメント23.6%(125.38レベル)と38.2%(125.77)の水準が相場を下支えしている。
今週、これらのテクニカルポイントを完全に下方ブレイクする場合は、21日線を視野に下落幅の拡大を想定しておきたい(21日時点119.20レベル、緑ラインを参照)。
21日線をも下方ブレイクする場合は、4月19日の安値を起点としたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準100.50を下限に、調整の反落相場が進行する展開を警戒したい(下のチャート、赤ラインを参照)。
エヌビディアのチャート:日足 今年4月以降
出所:TradingViewのチャート
マイクロン・テクノロジーの決算
今週、エヌビディア(NVDA)の調整相場(反落)を促す要因として注目したいのが、アメリカ半導体大手マイクロン・テクノロジー(MU、以下ではマイクロン)の第3四半期決算である。
23年にマイクロンは設備投資を削減した。加えて生産能力を最先端のノードへシフトしていることでDRAMの供給が逼迫している。ゆえに、当面のDRAM価格は良好に推移するとの見方がある。さらに、マイクロンが先行する高速DRAM「HBM(High-bandwidth memory)」の収益は、生成AIの台頭で今後の増加が見込まれている。
こうした状況を踏まえ、マイクロンに対する市場の期待は高い。3Q決算の一株利益(EPS)は0.50ドル、売上高は66.6億ドルと前四半期から増加する見通しである(下のチャート、赤棒グラフを参照)。
アナリストコンセンサス:EPSと売上高
注目はガイダンス(業績の見通し)となろう。あらためて上のチャートを確認すると、3Q以降もマイクロンの業績に対するアナリストの見方は強気である。
今回の決算でアナリストの予想を上回るガイダンスが示される場合は、半導体セクターの下支え要因となろう。エヌビディアの株価も下支えされる展開が予想される。
問題は、ガイダンスがアナリストの予想を下回る場合である。このケースでは、マイクロンの株価が下落しよう。エヌビディアを含めた半導体株セクターも調整売りに直面する展開を想定しておきたい。
現在、マイクロンの株価は21日線でサポートされる状況にある(21日時点134.63レベル、緑ラインを参照)。3Q決算が投資家の期待を下回る場合は21日線を下方ブレイクし、フィボナッチ・リトレースメントの攻防を確認しながら新たな下値の水準を探ることになろう。
一方、3Q決算が投資家の期待を上回る場合は、レジスタンスの水準へ転換する可能性のある142.40ドルを突破し、再び150円台の攻防となることが予想される。
マイクロンのチャート:日足 今年4月以降
出所:TradingViewのチャート
アメリカの個人消費支出(PCE)価格指数
28日に5月のアメリカ個人消費支出(PCE)価格指数(以下ではPCEデフレーター)が発表される。
現時点での市場予想は、総合とコア指数でともにインフレが鈍化の傾向を維持する見通しとなっている(下のチャートを参照)。
PCEデフレーターは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策に大きな影響を与える物価指数である。ゆえにインフレの懸念を後退させる内容となれば、「米金利の低下→半導体株の買い」が予想される。
問題は、予想外にPCEデフレーターが上昇し、インフレの粘着性が確認される場合である。
短期金融市場では現在、9月の利下げを60%の確率で織り込んでいる。米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの予想と比べると「タカ派」の見通しとなっている。このため強いPCEデフレーター、特にコア指数が予想外に伸びる場合は、9月利下げの期待が後退しよう。このケースでは、「米金利の上昇→半導体株の売り」が予想される。
高値警戒感が意識されているエヌビディア(NVDA)は、上で述べたサポート水準での攻防を想定しておきたい。アナリストの予想を下回るマイクロンの決算が重なる場合は、下落の幅が拡大しよう。
アメリカ 個人消費支出(PCE)価格指数の動向:23年5月以降
S&P500、今週の見通しとチャート分析
下落の局面では10日線と5,400の攻防が焦点に
先週21日の米国株レポートでは、S&P500種株価指数(SPX)が短期的に株高を調整する相場へ転じる可能性について述べた。
今週のS&P500もその可能性を意識したい。調整相場のきっかけとなり得るのが、上で述べたマイクロン(MU)の3Q決算と5月のPCEデフレーターとなろう。
S&P500が下値を試す局面では、10日線(21日時点5,426レベル)と5,400ポイントの維持が焦点となろう(日足チャートを参照)。
10日線をトライするサインとして、5,450ポイントの攻防に注目したい(1時間足チャートを参照)。10日線の下方ブレイクは、5,400ポイントをトライするシグナルとなろう。
S&P500が5,400ポイントをも下方ブレイクする場合は、「窓開け」前の高値水準5,375レベルまでの下落を警戒したい(1時間足チャートを参照)。
反発の局面では5,580のトライが焦点に
VIX指数(VIX)は現在、13ポイント台と低い水準で推移している。米長期金利の上昇も抑制されている。
この状況でマイクロンの3Q決算と5月PCEデフレーターが半導体株の買い、そして米長期金利の低下要因となれば、S&P500種株価指数(SPX)は上で述べたサポート水準を維持し、5,500レベルをブレイクアウトするだろう。
このケースでは、フィボナッチ・エクステンション100%の水準5,580レベルのトライ&ブレイクが焦点として浮上しよう。
S&P500が5,580レベルをも難なく上方ブレイクする場合は、5,600ポイント台の攻防へシフトするだろう。
1時間足のストキャスティクスは売られ過ぎの水準付近まで低下している。上で述べたサポート水準をトライする局面でゴールデンクロスが確認される場合は、相場の反発と短期の買いを意識したい。
S&P500種株価指数のチャート:日足 今年4月以降
出所:TradingViewのチャート
S&P500種株価指数のチャート:1時間足 6月以降
出所:TradingViewのチャート
今週のS&P500、注目のチャート水準
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