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【IG米国株レポート】 上値をトライするムードにあるもトレンドは長期金利次第

米国の主要な株価指数は現在、テクニカルの面で上昇ムードにある。しかし9月の米国株(アメリカ株)は、パフォーマンスが低迷しやすい傾向がある。8月雇用統計の内容に長期金利が上昇で反応したことも考えるならば、米長期金利の動向次第で今週の米国株は調整の反落相場を警戒しておきたい。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

サマリー

・米国の主要な株価指数は現在、テクニカルの面で上昇シグナルが点灯している
・だが9月の米国株は、パフォーマンスが低迷しやすい傾向が見られる
・米長期金利の高止まりも考えるならば、調整相場を警戒する必要があろう
・今週は2つの経済指標とFRB高官の言動が相場の変動要因となろう


テクニカルの面では上昇相場を意識する状況にあるが

米国の主要な株価指数は、いずれも20日線や50日線を上回る状況にある。

多くの機関投資家が運用のベンチマークとする「S&P500種株価指数(SPX)」のトレンドを日足チャートで確認すると、20日線と50日線でデッドクロスが示現したにもかかわらず、短期サポートラインの維持に成功した。そして先月29日には、大陽線でこれら移動平均線を一気に突破する状況にある。

また、MACDではゴールデンクロスが示現し、MACDラインはゼロラインの水準を上回る状況へ転じている。テクニカルの面では、さらなる上昇のシグナルが点灯している。

しかし、直近2日間の日足ローソク足がいずれも陰線引けとなった点は気がかりだ。なぜなら、9月の米国株はパフォーマンスが低迷しやすい傾向があるからだ。

下で詳述するが、先週1日に発表された8月の米雇用統計は、労働市場が軟化の傾向にあることを示唆する内容となった。しかし、米長期金利は上昇で反応した。この動向も考えるならば、米経済指標の内容と連邦準備制度理事会(FRB)の高官らの言動次第で、今週の米長期金利は上下に振れる展開が予想される。

そして米国株のトレンドは、長期金利の動きに左右されると予想する。

S&P500種株価指数のチャート:日足 23年3月以降

S&P500種株価指数のチャート:日足 23年3月以降 TradingView提供のチャートで作成

長期金利の上昇要因となった8月の雇用統計

米労働省が1日に発表した8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数変化が18.7万人と、市場予想の17.0万人を上回った。しかし、6月の伸びは10万5000人に、7月の伸びは15万7000人にそれぞれ下方修正された。

平均時給は前月比で0.2%増、前年比で4.3%増と総じて前月から低下し、賃金インフレの抑制傾向が確認された。

今回注目されたのは失業率だった。8月は3.8%と、市場予想の3.5%を上回った。しかし、失業率が上昇した要因のひとつに、2020年2月以来の水準まで上昇した労働参加率の影響(62.6%から62.8%へ上昇)が挙げられる。ゆえに、失業率については単月ではなく、数か月間の推移を確認する必要がある。

だが、失業率の上昇それ自体も米国の労働市場が軟化の傾向にあることを示唆している。

米雇用統計の推移:月次 22年8月以降

米雇用統計の推移:月次 22年8月以降 米労働省とブルームバーグのデータをもとに作成


注目すべきは米債市場の反応である。特に重要なのが、米国株(アメリカ株)のトレンドに大きな影響を与える長期金利(10年債利回り)の動向である。

労働市場の軟化傾向を示唆する8月雇用統計を受けてもなお、米長期金利は上昇で反応した。一時は4.2%付近まで上昇する局面が見られた。

米長期金利のチャート:5分足 米雇用統計発表後の動向

米長期金利のチャート:5分足 米雇用統計発表後の動向 TradingView提供のチャートで作成


非農業部門雇用者数変化が市場の予想を上回ったとはいえ、3ヶ月平均の動向を確認すると、雇用者数の伸びが抑制傾向を辿っていることが分かる(直近の3ヶ月平均は約150万人)。

非農業部門雇用者数変化の3ヶ月平均:2022年以降

非農業部門雇用者数変化の3ヶ月平均:2022年以降 米労働省とブルームバーグのデータをもとに作成


また、上で述べたとおり賃金インフレも抑制の傾向にある。

それでも米長期金利は今回の結果に対して上昇で反応した。この動きは、連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換を促すほど労働市場は軟化しておらず(この点を示唆しているのが予想以上の雇用の増加と労働参加率の上昇)、その状況が今後も景気を下支えする可能性を米債市場の参加者が意識していることを示唆している。

ゆえに重要性が増しているのが、米経済指標の内容である。今週も様々な経済指標が発表される。景気の底堅さを示唆する内容が続けば、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め政策の長期化観測が高まろう。この観測の高まりは、米長期金利の押し上げ要因となろう。


今週、注目しておきたい2つの米経済指標

注目の経済指標 その1:8月の購買担当者景気指数(PMI)
今週も様々な米経済指標が発表される。なかでも注目は、今週6日に発表される8月の購買担当者景気指数(PMI)改定値と同月のISM非製造業景気指数である。

購買担当者景気指数(PMI)の動向を確認すると、今年の5月を境に回復基調にあったサービス業PMIが急速に低下していることが分かる。これに連動し総合指数も景気判断の分かれ目となる「50」が目前に迫っている(直近は50.4)。

これら指数の改定値が製造業と同じく50を下回る結果となれば、経済の先行き懸念が意識され、米長期金利には低下の圧力が高まることが予想される。

一方、購買担当者景気指数(PMI)が速報値から上方修正される場合は、景気の底堅さと長期に渡り政策金利(FFレート)が高水準で維持されるとの思惑が高まり、米長期金利は上昇することが予想される。

購買担当者景気指数(PMI)の推移:月次 22年以降

購買担当者景気指数(PMI)の推移:月次 22年以降 S&Pグローバルとブルームバーグのデータをもとに作成


注目の経済指標 その2:8月のISM非製造業景気指数
8月の購買担当者景気指数(PMI)は、市場参加者の注目度が高い経済指標である。しかし、改定値であることを考えるならば、より注目すべきは8月のISM非製造業景気指数となろう。

8月の市場予想は総合で52.5と、前月の52.7から低下する見通しとなっている。サービス業の動向を示すISM非製造業景気指数が予想以上となる場合は、将来の景気減速を想起させ米長期金利の低下要因となろう。

一方、8月のISM非製造業景気指数が予想外に上昇する場合は、景気の底堅さと金融引き締めの長期化が意識されることで、米長期金利は上昇で反応することが予想される。

ISM非製造業景気指数の推移:月次 22年以降

ISM非製造業景気指数の推移:月次 22年以降 米供給管理協会(ISM)とブルームバーグのデータをもとに作成

米国株の展望

今回のレポートで取り上げた購買担当者景気指数(PMI)やISM非製造業景気指数が総じて予想以上となる場合、それは景気の底堅さを示すことになる。

また、週間の新規失業保険申請件数が労働市場の堅調さを示唆する場合も同様に、景気の底堅さを米国市場の参加者に意識させよう。

本来であれば、米国経済の堅調さを示す強い経済指標は株高の要因である。しかし、現在の株式市場のテーマは「金融引き締め政策の長期化」にある。

この状況で強い経済指標が確認される場合は、根強いインフレを抑制するために連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が金融引き締め政策の長期化で対応する、との思惑が米債市場で意識されよう。そして長期金利には上昇の圧力が高まろう。

ゆえに、今の状況で強い経済指標の内容が続く場合は、米国株の下落要因として警戒しておきたい。

一方、さえない経済指標が続く場合は、金融引き締め政策の長期化に対する懸念が後退しよう。このケースでは、米長期金利の低下と米株高の展開を想定しておきたい。


ナスダック100指数に注目

米長期金利の動向に大きく影響される株価指数が、ハイテク株(高PER株)比率の高いナスダック100指数(NDX)である。

直近のトレンドを日足チャートで確認すると、短期レジスタンスラインの突破に成功し、上値をトライするムードにある。

しかし、先週1日の市場ではフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準15,607レベルで上昇が止められ、陰線引けとなった。

今週の米経済指標で景気の底堅さを示唆する内容が続く場合は、反落リスクを警戒しておきたい。

逆に、ナスダック100指数が15,607レベルをも完全にブレイクアウトする場合は、7月の下旬に相場の上昇を止めたレジスタンスの水準「15,975」を視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい。

ナスダック100指数のチャート:日足 23年7月以降

ナスダック100指数のチャート:日足 23年7月以降 TradingView提供のチャートで作成

FRB高官の言動も変動要因に

今週、経済指標以外で注目すべきは、連邦準備制度理事会(FRB)の高官らの言動である。9日より、連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間に入るからだ。

米国市場の参加者は、FRB高官らの言動から今後の金融政策政の方向性についてのヒントを探ろうとするだろう。

クリーブランド地区連銀のメスター総裁は1日、米国の労働市場について均衡化の兆候が出ているが、依然として力強いと指摘した。インフレ率については上昇圧力の軽減が見られるが、依然として高すぎるとの認識を示した。同総裁の発言が、1日の米長期金利の押し上げ要因になったとの見方がある。

今週は6日にボストン地区連銀のコリンズ総裁が、経済と政策についての講演を行う。

7日にはニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁がブルームバーグ主催の市場フォーラムに参加する(質疑応答あり)。また、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が経済見通しについての討論会に参加する。

そして8日には、ダラス地区連銀のローガン総裁が金融政策についての講演を行う。

8月の雇用統計の内容(労働市場の軟化傾向を示唆する内容)を受けてなお、FRBの高官らがインフレリスクの根強さや雇用および経済の堅調さに言及する場合は、長期金利の上昇と株安の要因となろう。

一方、FRBの高官達からインフレリスクの後退や利上げの停止に含みを持たせるハト派よりの発言が多く聞かれる場合は、長期金利の低下と株高の要因となることが予想される。


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