米雇用統計、過熱感緩和か 就業者18万人増予想 S&P500は不安
アメリカの11月の雇用統計は就業者数の伸びが20万人を割り込む予想。ただしS&P500上昇につながるかは不透明だ。
8日に発表されるアメリカの11月の雇用統計は労働市場の過熱感が和らぐかどうかが焦点だ。非農業部門の就業者数は18万人増が予想され、大台の20万人を割り込む見通し。労働市場のひっ迫が緩和されていると受け止められれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が2024年3月にも利下げに向かうとの観測を強めそうだ。米国の労働市場をめぐっては5日発表の10月の求人件数が予想以上に減ったことで金利の先高観が緩み、長期金利(10年物米国債利回り)が約3か月ぶりの水準まで下がった。ただし金利低下にも関わらずS&P500種株価指数はわずかに値下がりしており、株式市場は活気づいていない。
アメリカの雇用統計は就業者数増加が大台割れ予想
米労働省は8日午前8時30分(日本時間8日午後10時30分)に11月雇用統計を発表する。ロイター通信のエコノミスト調査によると、非農業部門の就業者数は前月比18万人増の見通し。予想通りであれば、9月の15万人増からペースが加速するものの、2か月連続で20万人の大台を割り込む結果だ。また、失業率は10月と同じ3.9%、平均時給の前年同月比伸び率は4.0%の見込みで、10月(4.1%)から低下するとみられている。
1か月前に10月雇用統計が発表された際は、就業者数の増加幅が予想を下回ったことで物価上昇圧力が弱まったと受け止められ、金利の先高観が緩んだ。今回の11月雇用統計でも、就業者数の伸びが下振れるなどすれば、FRBの利下げ観測を裏付けることになりそうだ。CMEグループのデータによると、2024年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間6日午前11時現在で約56%となっており、金融市場では「3月利下げ」がメーンシナリオといえる。
10月雇用動態調査では求人件数が大幅に減少
米国の労働市場をめぐっては5日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)が過熱感緩和を示している。非農業部門の求人件数は873.3万人となり、9月の935.0万人や事前予想の930万人を大きく下回った。JOLTSの求人件数は10月に発表された8月の結果が予想を超える大きさだったことがサプライズとなって長期金利上昇や株安、ドル円相場での1ドル=150円突破につながったことがあったが、今回は逆方向でのサプライズとなっている。
求人件数の減少は長期金利低下につながった。LSEGのデータによると、ニューヨーク債券市場の長期金利の5日の終値は4.171%で、8月31日(4.091%)以来の低さだ。株式市場では値下がり傾向にあったハイテク株が買われ、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)は4営業日ぶりに反発した。
長期金利低下でもS&P500はわずかに値下がり
ただしS&P500(SPX)の終値は前日比0.06%安とわずかに値下がりしており、勢いは感じられない。情報技術セクターや、アマゾン・コム(AMZN)やテスラ(TSLA)が含まれる一般消費財セクターは上昇したものの、エネルギーセクターや素材セクターなどの大幅な下落をカバーできなかった。
このため11月の雇用統計の結果が弱く、金利の先高観が緩んだとしても、すんなりとS&P500の上昇につながるかには不透明感が残る。金融市場にとっては12日発表の11月の消費者物価指数(CPI)や13日までのFOMCに際してFRBが打ち出すメッセージの重要性も高いといえそうだ。
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