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米経済過熱で株価大揺れ S&P500大幅安 下院議長解任も不安増幅へ

アメリカの8月の雇用動態調査は強い結果で、S&P500が6月1日以来の安値に。政治の混乱も市場の不安要素だ。

出所:ブルームバーグ

アメリカ経済の過熱感が改めて株式市場を揺らした。3日に発表された米国の8月の雇用動態調査(JOLTS)は市場予想を超える強い数字。この結果が長期金利(10年物米国債利回り)の上昇を招き、3日のS&P500種株価指数は大幅に下落した。一方、2024年会計年度予算をめぐる混乱が続く米国議会では3日、下院の最有力者である議長が解任される異常事態に進展。つなぎ予算が期限切れとなる11月中旬に向けて、市場の不安定さが増すおそれが強まっている。

アメリカの8月の求人件数は予想以上の強さ

米労働省が3日に発表した8月の雇用動態調査(JOLTS)は米国経済の強さが改めて確認される内容だった。非農業部門の求人件数は961万人で、7月(892万人)を超える結果。事前の市場予想の880万人も大きく上回っており、5月以降続いてきた減少傾向が一転したと受け止められた。一方、自発的な離職率は2.3%で、7月から低水準での横ばいとなっている。自発的な離職率の低さは、労働者が次の仕事を見つけられる自信の少なさを示すとされ、こちらは雇用環境の落ち着きを示す形となった。

アメリカの雇用動態調査(JOLTS、求人件数、離職率)のグラフ

S&P500は6月1日以来の低水準まで下落

金融市場では求人件数の強さが経済の活性化や物価上昇につながる内容とみられ、長期金利が上昇した。ニューヨーク債券市場の3日の終値は4.802%で、2007年8月10日以来約16年2か月ぶりの4.8%台を記録。こうした中で、米国の株式相場も大きく下落し、S&P500(SPX)の3日の終値は前日比1.37%安の4229.45となり、6月1日以来の安値水準となっている。

S&P500種株価指数とアメリカの長期金利のグラフ

下院議長解任に至った政治混乱も金融市場の不安に

投資家にとっての不安材料は政治面でも拡大した。10月からの2023会計年度予算をめぐる混乱は3日、ケビン・マッカーシー下院議長(共和党)が解任される米国史上初の事態に至った。マッカーシー氏は予算切れに伴う政府機関閉鎖を回避するため、11月中旬までのつなぎ予算の審議を主導。つなぎ予算は多数派である共和党議員の6割程度とほぼ全員の民主党議員の賛成で可決され、上院での審議などを経て成立していた。しかしつなぎ予算の歳出削減が不十分だなどと主張する共和党の反対派議員はマッカーシー氏の解任動議を提出し、3日に216対210の賛成多数で可決された。共和党議員8人と民主党議員のほぼ全員が賛成に回った。

下院議長が空席となる中、つなぎ予算が期限切れとなる11月17日に向けて、政治的な混乱が深まることは必至だ。下院共和党のトップであるマッカーシー氏の後任が決まらないままでは、つなぎ予算期限切れ後の2024会計年度をカバーする予算をめぐる審議が進まず、改めて政府機関閉鎖の可能性が高まることになる。また、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスはこうした政治の混乱が米国の財政政策の決定を困難にしていることが米国の信用にマイナスに作用するとみており、米国債の最上位からの格下げをめぐる思惑が金融市場の混乱要因となることも想定される。

強い米国経済と混乱極まる米国政治がますます金融市場の先行きを不透明にしているといえそうだ。


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